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分子生物学・免疫学キーワード辞典 第2版

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ヒトゲノム時代に入った今世紀に必要なキーワード約2200語を,各領域の気鋭の専門家約300名が解説。新たに加えられた約600語はもちろん,初版の掲載項目も全面的に書き直し,ほぼ倍増した圧倒的なボリュームで,初学者から研究者までのニーズに応えた。和英,英和の他,略語や人名での索引も可能にした充実した索引も魅力的な辞典。
編集 永田 和宏 / 宮坂 昌之 / 宮坂 信之 / 山本 一彦
発行 2003年05月判型:A5頁:1056
ISBN 978-4-260-13653-2
定価 10,780円 (本体9,800円+税)

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2,200語のキーワードを第一線の研究者たちが解説
書評者: 清水 信義 (慶應大教授・分子生物学)
 分子生物学と免疫学に登場する重要なキーワード2,200語を4名の編者が選抜し,200余名の執筆者が解説した近年にない労作である。1994年の第一版より600語も増え内容は飛躍的に充実した。あくまでも免疫学を中心としたキーワード辞典であるが,その発展を支えるために用いられた分子生物学・細胞生物学・遺伝学・生化学・免疫学などの技術や方法論に関するキーワードが体系的に取り上げられている。奇しくもDNA二重ラセン発見50周年とヒトゲノム解読完了を祝う記念すべき本年にこの辞典が改訂されたことは意義深い。ご同慶の至りである。

◆散見されたいくつかの課題

 早速,いくつかのキーワードを検索してみた。免疫グロブリンに付随するキーワードはさすがにすべて適切な記載があり十分な情報が得られた。しかし,「IgG」に関して言えば免疫学やタンパク質に関する解説は優れているが,ヒトゲノム中に3つの大きな遺伝子クラスターがありいずれも日本チームがゲノム構造を解析したことが記されていない。さらに,自己免疫疾患の原因遺伝子であり転写因子をつくる重要な新規遺伝子[AIRE]がキーワードとして採用されていない。一方,モノクローナル抗体の産生に関連して,「ハイブリドーマ」や「HATセレクション」などのキーワードがあり,それぞれ単独には丁寧に解説されていて良いが,細胞遺伝学におけるTKやHPRTの役割が記されていないので読者は融合細胞が選択されるメカニズムを理解できない。また,これら2つのキーワードが索引で連携していないのは残念である。

 一方,免疫とは直接関係のないキーワード「パーキン」を引いてみたが,家族性パーキンソン病の原因遺伝子として最新の知見まで述べられていて満足できる。さらに,「ゲノム」も検索したが,長文の解説の割にはその語源がGene+Chromosomeである旨の重要なポイントが解説されていないし,「ゲノムプロジェクト」の解説も一部に偏重していてその画期的な成果や21世紀医療へのインパクトが述べられておらず,全体像がつかみにくい解説になっている。「染色体地図」と「遺伝子地図」に多くのスペースを割いているが,重複するし内容も一部適切でない。辞典の宿命とは言え2,3の重要な最新キーワードが欠落していたり一部で解説が偏重して全体を鳥瞰していない場合があることは残念である。

◆重要キーワードが網羅されていることに間違いはない

 しかし,近年の生命科学の目覚ましい進歩とともに続々登場する多彩なキーワードをフォローしすべてを搭載した辞典などはそもそも存在するはずもないし,厳選された2200語が免疫学・分子生物学の基本キーワードであることには間違いない。本辞典は医学部・理学部・薬学部・農学部などの研究室で活躍する学生や若い研究者,さらには臨床の現場で活躍する学究的な医師や医療関係者に日常的に役立つことは必至である。それこそ編者らが意図した本辞典の使命であろうから,坐右の辞典として活用されることを強く推奨したい。
現代生命科学のキーワードが集積した読書感覚で読める辞典
書評者: 阿部 達生 (京都府立医大名誉教授/京北病院長)
◆読書を有頂天にさせるような辞典

 『分子生物学・免疫学キーワード辞典第2版』が発刊されたこの6月のある日,数回の測定でも血小板数が“0”という重症患者が緊急入院した。ITPを疑って骨髄を調べたが,高齢のためか所見は教科書どおりでなかった。外注しておいたPAIgGが1000倍を超える数値で返ってきて,机上にあった本書の解説を読んだ。説明は簡明であるがゆきとどいていて,免疫学にうとい私を勇気づけてくれる内容だった。ステロイドで血小板数を増やしてから摘脾を行なった。血小板数は数日後32万に増加,術前検査でみつかった早期胃癌もいっしょに切除できるおまけがついた。

 辞典の顔であるキーワードの選定には編集者の経験や先見性が求められる。また,与えられた紙面のなかでそれぞれの用語をどのように解説するかは執筆者の自由度に依存するようであって,けっしてそうではない。長からず短からず,古すぎても新しすぎてもいけないし,我田引水はもってのほか。要するに天秤の両端に十分な目配りのされていることがよい辞典の条件でなかろうか。その上IT時代においては,用語間のネットワークへの配慮も必要である。

 逆に,もしそのような辞典が存在すれば,その購買者は知識を吸収する上で大きな利便を受けることになろう。そんなものがあるわけがないという人がいても不思議ではない。しかし,辞書辞典類に特別な関心をもっておれば,英和辞典や独話辞典,あるいは漢和辞典においても自信を有頂天にさせてくれるような辞書に遭遇することはけっしてまれでない。而して今回刊行された『分子生物学・免疫学キーワード辞典第2版』も読者を虜にする可能性がある辞典といえそうである。

◆先端研究理解への助けに

 いま私は思いつくままにページめくり,自身の専門領域の用語が本書でどう解説されているか,また,最近注目されている言葉の解説や採択の状況に注目している。第2版では紙数が大幅に増え,項目が増えたのは当然として,解説が実にわかりやすく,包括的によく整理された図表を多用して内容の理解に一層の配慮がなされている。便利性という点では,原著論文を読むとき,実験方法や考察に出てくる不慣れな用語をこの辞典で確認できる。もちろん,自分で論文を書くときもお世話になれるが,なによりも,先端研究理解への糸口を本書で見出すことが可能なところに本書の真骨頂が見出される。その意味では読書感覚で読める辞典ということもでき,医師や自然科学領域の研究者はいうにおよばず,情報科学や人文科学領域の研究者にとっても歓迎される辞典でないかと思う。

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