診療所マニュアル 第2版
[ハイブリッドCD-ROM付]

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単なる医学的知識だけでは,診療所医師はやっていけない。患者さん一人ひとりとの長いかかわりや巧みな診療連携,健康予防教育にとどまらない地域での活動ができてはじめて,優れた診療所医師といえる。本書にはその秘訣が溢れている。ひとり勤務の診療所医師のために,先輩診療所医師が贈る,プライマリケアの指南書。
編集 社団法人地域医療振興協会
発行 2004年03月判型:A5頁:356
ISBN 978-4-260-12715-8
定価 4,400円 (本体4,000円+税)
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  • 目次
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I. いろいろな患者さん
 A. 診療所でみられる症候
 B. 患者さんと長くつきあう-慢性疾患
 C. 患者さんを中心に考える
 D. 保健予防
 E. 専門領域
II. 診療所ならではの問題
 A. 救急
 B. 在宅医療
 C. そのほか
III. よい診療所にするために
 A. 診療所のマネジメント
 B. 診察の実際
 C. 診療機器など
IV. 診療所から地域へ
V. 自己学習,生涯学習
索引

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EBMの実践と診療所医師としての生き方を示した指南書
書評者: 川井 啓市 (湯川胃腸病院院長)
 専門志向,大病院志向の時代にあって,医療過疎の地域が少なくありません。本書は近隣に病院がない僻地で孤軍奮闘する医師のために自治医大の卒業生よりなる地域医療振興協会が編集した本ですが,骨格である目的の取り扱い方に医学教育の本来の姿がみられます。

 私事で恐縮ですが,昭和33年に京都府立医科大学を卒業後,第三内科を経て,昭和48年に新設された公衆衛生学教室の教授に就任しました。疫学,基礎研究から臨床まで広く人材を集め,マクロの目から医学を見直そうという趣旨のもとに発足した教室でした。しかし,当時,大学は研究至上主義で,医療の現場でも稀な病気,新しい検査法や治療技術に関心が集まり,救急医学やcommon diseaseに対する関心は低かったと思います。現状でもこの傾向は残っていると言えるでしょう。毎年8000人の若い医師が巣立って行きますが,彼らに望まれていることは社会のニーズを理解して医療にあたることです。私が本書に関心をもったのは,地域医療を充実させようという自治医大創設の目的と私達の教室が目指したものがだぶって見えるからです。

 それぞれのページには蘊蓄がぎっしりと詰まっており,執筆者の「伝えたい」という情熱がみて取れます。「診療所でみられる症候」の章では12の症候が取り上げられます。症候のうちのごく一部に過ぎませんが,疾患の羅列ではなく,仮想症例に基づいて若手医師とベテラン医師の会話が展開していきます。診察所見や検査データの感度,特異度,尤度比を交えつつ,診断と治療をいかに論理的に進めていくべきかを浮かび上がらせます。文章は軽妙で,寝転がってでも読める気楽さを持ちながらも,内容は実に奥深いものです。一方で,massに基づく判断があやふやな領域を有していることにも注意を喚起し,本当にこれでよいのだろうかという自問も随所にみられます。ここからは紹介するという基準やタイミングも示されています。「患者さんを中心に考える」の章では患者の視点が示されます。「診療所ならではの問題」の章のコラムには「離島搬送」が取り上げられています。輸送手段,自然環境の影響など,都会での医療環境しか体験していないものでは計り知れない事柄でしょう。さらに「診療所から地域へ」の章では介護,検診,疾病予防などの観点から,システム構築の必要性とそのプロセスが述べられます。他にも,患者に対する説明の際の勘所や間の取り方,保険審査という現実的な問題にも触れられており,きわめて実際的な記述がなされています。最後の章である「自己学習・生涯学習」では地域医療の現場であるからこそできる研究があると語りかけています。

 マニュアルといえば一般的には必要最低限の知識と手順を集約したものと受け取られがちですが,本書はむしろEBMの実践と診療所医師としての生き方を示した指南書であるといえます。本書にみられるような卒後研修を進めることが,医学の本当の理解に近づくと思います。臨床疫学を介して個の医学と集団の医学がアカデミックに結合することが本書に対する期待です。病診連携が重要視される今日,診療所医師のみならず病院勤務医にもぜひ手に取って欲しい一冊です。

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