医薬情報評価学

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薬剤師が医薬情報を活用する際に必要な「評価の理論」「編集の技術」「適用の実際」がこの1冊に。基礎編では、医薬品情報の種類、作られ方、読み方について系統的に解説し、SOAP形式による患者情報の評価について解説。応用編では、臨床で薬剤師が医薬情報を効果的に活用した具体例を収載し、薬学生の実習準備の教材としても使うことができる。
*「標準医療薬学」は株式会社医学書院の登録商標です。
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シリーズ 標準医療薬学
編集 山田 安彦
編集協力 土橋 朗
発行 2009年08月判型:B5頁:296
ISBN 978-4-260-00705-4
定価 4,950円 (本体4,500円+税)

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 医療の質の改善が一層求められている中で,薬学部,薬科大学には医療人としての質の高い薬剤師を養成する強い期待が寄せられ,薬学の教育年限が6年に延長された.それに伴い,医薬品情報学に関する教育も重要視され,薬学教育モデル・コアカリキュラムにおいて,「薬物治療に役立つ情報」として「医薬品情報」および「患者情報」が明記された.編者は,これらの教育内容を網羅した教科書の必要性を感じ,本書の作成に取り組んだ.
 本書では,医薬品情報と患者情報を合わせて「医薬情報」とし,薬剤師が自らの専門性を生かして薬物療法の質的向上に貢献するために欠くことのできない重要な情報として位置づけている.医薬情報は,今や多様な手段を通じて比較的容易に入手することができる.しかし,いくら情報が新しくても,それ自身は断片的であるため,目的に合致する例には役立つが,合致しない例に応用するには情報を入手しただけでは困難である.このことは,医薬情報を最大限に利用するには,利用者側に適切な評価能力と,目的に合致するように再構築できる能力が備わっていなくてはならないことを意味している.
 この評価および再構築は,単なる思考ではなく,薬学に基づいて求める結論を導き出すための学問でなくてはならない.本書は特にこの評価および再構築に重きをおき,「薬剤評価学」および「薬剤疫学」などの評価手法を充実して解説することにより,タイトルを「医薬情報評価学」とした.本書の前半部分は,医薬情報に関する知識を系統的に学べるように構成し,後半部分は,実例に基づく演習を通じて生きた知識として活用できるように構成している.このため,薬学生にとって学びやすいばかりでなく,臨床および医薬品開発に従事している薬剤師の先生方にも参考になるものと考えている.
 医薬情報のようにきわめて広い分野の教科書を作成することは,編者のみの力量では難しいものであったが,幸いにも素晴らしい執筆者の方々に専門分野の執筆をお引き受けいただき,ようやく本書の発刊にたどりつくことができた.執筆者の方々および医学書院の編集・制作担当者の方々に,改めてお礼を申し上げたい.

 2009年6月
 山田安彦

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I 基礎編
 第1章 医薬情報概論
 第2章 医薬品情報の収集
 第3章 臨床研究とEBM
 第4章 医薬情報評価学
 第5章 患者情報の収集と評価
 第6章 臨床の現場と医薬情報活動
 第7章 医療情報の管理

II 応用編
 第8章 基本的医薬品情報の収集・評価・提供の例
 第9章 医薬品情報の評価・構築の例
 第10章 臨床症例による患者情報の把握と個別医薬品情報の評価・構築
 第11章 医薬品情報データベースの活用

索引

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膨大な情報の大海の中で,いかに情報を調理するか
書評者: 入江 徹美 (熊本大薬学部教授・薬剤情報分析学)
 「臨床にかかわる実践的な能力を培うこと」を主たる目的とする6年制薬学教育が2006(平成18)年度からスタートした。新しい薬学教育では,国民の医療に対する安心と信頼を確保するため,医薬品を取り巻く環境の変化に柔軟に対応し,目の前で苦しんでいる患者に対する理解と優しさに裏打ちされた責任ある行動力を持つ薬剤師の養成が求められている。

 本書は,薬剤師が自らの専門性を生かして薬物療法の質的向上に貢献するために必要不可欠な「医薬品情報」および「患者情報」を合わせた「医薬情報」に関する基礎から応用に至る広範な内容を,系統的に平易に解説した良書である。

 ユビキタスな情報社会において,「医薬情報」へのアクセスは比較的容易であるが,膨大な情報の大海から真に必要な情報を選択し,評価・再構築し,意味のある情報として適切に提供することは,それほど容易ではない。本書は,情報の大海の中から,良い「食材」を選び,どのように上手に「調理」し,「ご馳走」に仕上げるかを記載した最高のレシピを提供している。

 世の中に類書は少なくないが,本書は章・項目立てに格段の工夫が凝らされた,実践的かつ格調の高い内容を含んでいる。これは,編者である東京薬科大学の山田安彦先生のリーダーシップはさることながら,本書を分担執筆された各分野のエキスパートの先生方が,日ごろから顔を合わせ,記載内容について入念に構想を練り,きめ細やかな協働作業が行われたことを想像させる。

 基礎編では,従来のテキストでは難解であった薬剤疫学的手法を,わかりやすく解説してある。特に,結論を導き出すまでの計算のプロセスや計算結果も記載されていることは,大変ありがたい。一方,応用編は,かなり深い内容も含まれており,学習者のレベルに応じて,さまざまな使い方ができるように工夫されている。さらに,オリジナルの図表はシンプルであるが,非常にわかりやすく,学習者の理解を深める上で効果的に使用されている。

 本書は,初心者でも自力で読み進めることが可能であり,上級者や経験者にとっては,常に手元に置いて自分自身の知識を整理するのに役立つ。「医薬情報」に関する「痒いところに手が届く」良書として,薬学生だけでなく,医療関係者にもぜひお薦めしたい。

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