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臨床医が知っておきたい 女性の診かたのエッセンス

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女性によく起こる身体の症状や心の問題、どこに行ったらいいのかわからない体調不良、女性患者の抱える不安や疑問に答える相談の窓口として、昨今,病院・クリニックに設けられるようになった女性外来は,今,非常にニーズが高まっている。女性外来の担当医はもちろん、一般臨床医にとっても女性を診るときに知っておきたい月経、更年期の知識や、男性と女性の違いをふまえた症状へのアプローチ法、そしてメンタルな問題まで,多岐にわたる領域を簡潔にまとめた1冊。
シリーズ 総合診療ブックス
編集 荒木 葉子
編集協力 久慈 直昭 / 高松 潔 / 宮尾 益理子 / 柴田 美奈子
発行 2007年08月判型:A5頁:344
ISBN 978-4-260-00428-2
定価 4,180円 (本体3,800円+税)
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はじめに
荒木葉子

 平成14(2002)年の患者調査によれば,入院患者数は男性67万人,女性78万人,外来患者数は男性273万人,女性374万人と圧倒的に女性が多くなっています。小児科,老年科のように年齢別の診療科がある一方で,性別に関しては,女性は産婦人科があるだけで,年齢を縦断した診療科,あるいは考え方は今までなかったように思います。
 女性のライフスタイルはここ数年で大きく変化しました。
 初経は早まり,性行為開始年齢は早くなり,就業率が高まり,未婚率が上昇し,妊娠・出産率は低下し,そして寿命は延びています。外食が増え,運動が減り,タバコやアルコール摂取率が高くなり,家庭や仕事でのストレスの内容も変化がみられます。
 「女性を診たら妊娠を疑え」といわれてきましたが,昨今では,妊娠よりも,むしろ月経障害,加齢に伴う問題,精神的な疾患が増加している傾向があります。
 男性と女性の症状や疾患の差に着目した「性差医学・医療」が1990年後半から着目されるようになりました。性染色体や性ホルモンに伴う生物学的な性差に加え,社会文化的な性差により,疾患の種類,時期,症状,診断,治療,予後が異なってきます。
 本書では,女性ホルモンの基礎知識,女性のがん・検診,セクシュアリティ,外来でよく診る身体症状,精神症状に加え,診断の決め手となる画像,月経や妊娠に影響を及ぼす薬剤,漢方薬,サプリメントなどの付録をつけました。
 性差の視点を入れながら,総合的に女性を診るためのガイドブックとしてお使いいただければ幸いです。
 2007年 6月

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第1章 女性のライフサイクルと健康
第2章 月経・女性ホルモンに関する基礎知識
 1. 月経について(総論)
 2. 月経周期の異常
 3. 月経困難症
 4. 更年期障害
第3章 女性のがん・検診に関する問題
 1. 不正性器出血
 2. 乳房の異常
第4章 女性のセクシュアリティに関する問題
 1. 帯下と性感染症(STD)
 2. 性機能に関する問題
 3. 不妊相談-一般臨床の場へ患者が来たときのアドバイス
第5章 女性にこんな症状がみられたら? 役立つ診療のエッセンス
 1. 出産後のケア
 2. 女性に特有の肥満と多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
 3. 色素・発毛の異常
 4. むくみと冷え
 5. 甲状腺の診かた
 6. 頭痛
 7. ドライマウス
 8. めまい,耳鳴
 9. 胸痛
 10. 肝機能障害
 11. 急性腹症
 12. 便秘と下痢
 13. 肛門のトラブル-肛門疾患の診断のコツ
 14. 広範囲疼痛
 15. 腰痛,関節痛
 16. 頻尿と尿失禁
第6章 メンタルな問題
 1. 食行動の異常
 2. うつ症状,うつ病
 3. 不安,不安障害
 4. ドメスティック・バイオレンス(DV)
 5. レイプ
 6. 女性への禁煙指導

付録
 1. 女性の画像診断
 2. 女性の超音波診断
 3. 妊娠・授乳期の薬物療法
 4. 月経に影響する薬剤・経口避妊薬に影響する薬剤
 5. 女性ホルモン関連製剤が影響する薬剤
 6. 女性の症状に効く漢方
 7. サプリメント
 8. 問診票

索引

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折に触れて読んでほしい女性診療の珠玉のエッセンス
書評者: 岸 玲子 (北海道大学教授・医学研究科予防医学講座公衆衛生学)
 今日ほど女性のライフサイクルが劇的に変化している時代はかつてなかった。編者の荒木葉子先生が第1章で詳しくまとめておられるように,長寿,性行動や初潮の低年齢化,晩婚化と未婚率の上昇,晩産化と生涯未産率の上昇,高学歴化,就業率の上昇と多様な働き方である。「性差医学gender specific medicine)」もこの10年間,日本でも大きな関心を集めている。同じ病気でも男女で自覚症状や医薬品への反応,予後も異なることがある。性差を意識した保健医療のニーズが非常に高まっているからである。

 本書はそこに着目し時機を得て出版された。第一戦の臨床医が誰でも知っておくとよい女性の診かたについて,広い範囲をカバーし,かつていねいに書きまとめられた本である。38人の専門家が担当されている章は全部で6章31項目にのぼる。第1章ライフサイクルと健康に続き,第2章の女性特有の月経やホルモンに関する基礎知識,第3章:女性のがん・検診に関する問題,第4章:女性のセクシュアリテイに関する問題(性感染症や性機能,不妊相談など),第5章:役立つ診断のエッセンス(女性にこんな症状が見られたら?むくみ,ドライマウス,広汎性頭痛,頻尿など16項目),第6章:メンタルな問題(食行動,うつ病,不安障害,DV,レイプ,女性への禁煙指導)である。

 いずれも,それぞれの章の項目の内容に応じて「男性と女性で異なる点」,「女性患者への説明で注意すべきこと」はもちろんのこと,加えて「プライマリケア医としての治療」,「専門医からのアドバイス」,「専門医の治療」,あるいは「こんな時は専門医へ」といった臨床医が知るべきことが書かれており,編集者らの細やかな気配りとそれに呼応して書かれた執筆者の工夫が随所に見られる。

 たとえば不妊相談の章の最後にいみじくも書かれてあるように,医師の一言が「女性患者さんの人生を決める一言になるかも知れない」といった診療へのアドバイスには感心させられた。著者らが日常診療の中で,じっくり一人の女性患者に向き合う姿勢が言葉に表れているからである。

 「Note」は36項目にのぼる。「(女性患者の場合の)紹介状の効用」,「月経周期の移動」など独立して読んでもなるほどと思う内容である。付録としてつけられた女性の画像診断,超音波診断,妊娠授乳期の薬物療法,月経に影響する薬剤,経口避妊薬に影響する薬剤,漢方,サプリメント,あるいは問診票,減量指導ダイアリーなど付録も活用しやすく親切である。

 このようにすばらしい本であるが,1点可能なら内容に付け加えることを希望することとしては,疾病の予防法についてである。環境やライフスタイルが疾病の原因になることが多い時代に予防につながる患者へのアドバイスも適宜加えていただければ,かかりつけ医師への信頼が増し,また患者にとっては福音となるであろう。

 以上まとめると,本書は女性を診療する多くの医師の座右にあって折りに触れて読んでいただきたい本,まさに珠玉のエッセンスとも言うべき1冊である。多くの医師に手にとって参考にしていただきたいと思う。
女性の健康問題の本質を理解し症例を通じて診療の質を高める
書評者: 麻生 武志 (東京医科歯科大学名誉教授)
 女性の精神・身体機能が男性と異なる特徴を有していることは広く認識されているが,その多くは概念的・表層的であり,また時には両者の機能の優劣を推し量る尺度として語られることも少なくない。医学・医療の分野においても,一部の専門領域では性差に関する科学的な解明がなされ,エビデンスに基づく医療が展開されているが,女性の心身にわたる特殊性を包括的に捉えた医療の実践に関しては多くの課題が残されているのが現状である。

 このような現状の一因として,これまでの医学教育と臨床研修の内容とあり方が指摘されており,一人の女性において密接に関連しあって生じる変化を総合的な観点から理解するための学習は限られた範囲に留まっている。また学問体系の細分化の流れは,専門家による先端医療の進歩をもたらした反面,境界領域の問題に悩む女性の要求に十分に応えることができていない。

 一方,社会・生活環境の急速な変化は,これまでに増して複合的な健康問題を拡大させ,複雑な病態を持つ新たな疾患や症候群を生じさせている。この現状に対応する医療が近年普及してきているが,診療を担当するほとんどの医師は,系統的な女性医療についての医学教育や医療研修を受けた経験がなく,「女性の診かた」に必要な態度・技能・知識を自分自身で修得し,高めていくことが求められているのが実情である。

 今般刊行された『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』においては,基礎知識と身体症状,メンタルな問題についての要点がまとめられており,また「プライマリーケアとしての対応」や「専門医からのアドバイスと紹介のポイント」など実践に有用な情報が明示されている。女性の健康問題の本質を理解し,症例を通じて診療の質を高め,さらに幅を広げたいとの臨床の現場のニーズに応える総合診療ブックスの1冊として本書の活用が期待される。

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