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脳波判読 step by step 症例編 第4版

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姉妹書の〔入門編〕と併せて、臨床脳波判読の総合的な学習を目指す。〔症例編〕は一通り脳波判読の基本をマスターした方へ、てんかん、脳腫瘍、意識障害、頭部外傷、薬物服用時などの症例を経験することで、より実践的な知識、技術の獲得を目的としている。精神科専門医を目指す方、より高水準の診断能力を身につけたい方に最適。
大熊 輝雄 / 松岡 洋夫 / 上埜 高志
執筆協力 齋藤 秀光 / 三浦 伸義
発行 2006年12月判型:B5頁:404
ISBN 978-4-260-00298-1
定価 9,900円 (本体9,000円+税)

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  • 目次
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序章 脳波でわかること
step1 てんかんの脳波の読み方
step2 意識障害時の脳波の読み方
step3 睡眠・覚醒障害時の脳波の読み方
step4 薬物服用時の脳波の読み方
step5 脳腫瘍の脳波の読み方
step6 脳血管障害の脳波の読み方
step7 炎症性脳疾患の脳波の読み方
step8 頭部外傷の脳波の読み方
step9 その他の慢性脳器質疾患の脳波の読み方
step10 内分泌・代謝障害時の脳波の読み方
step11 精神疾患時の脳波の読み方
step12 練習問題
付 用語集(国際臨床神経生理学会用語集[1999年]から)
索引

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臨床脳波判読医養成に効果的な標準テキスト
書評者: 松浦 雅人 (東医歯大大学院教授・生命機能情報解析学)
 脳波は波形が複雑に変動するだけでなく,頭蓋上の多くの部位から長時間にわたって記録するため,全体を総合的に把握しなければならない。初学者にとってはどこから手をつけてよいかわからず,取りつきにくいとの印象を持つのも頷ける。本書はこれから脳波判読を習得しようとする人のために書かれたもので,初版が1986年なので20年の歴史を持つことになる。前回の第3版の改定から7年を経過し,今回さらに加筆・増補が行われた。

 「入門編」ではステップ1からステップ14まで,段階を追ってていねいに脳波判読の手ほどきをしてくれている。各ステップにはたくさんの練習問題がついており,例えば1週間に1ステップの練習問題をクリアすることを目標にすれば,3-4か月で脳波判読の基本を修得できる。脳波図版は原寸大であり,計測用の脳波スケールがついているのも親切である。手を使って脳波波形にスケールを当てて,実際に計測することではじめて波形の観察力が深まる。ステップ1では周波数や振幅の計測の仕方を体験し,次いでステップ2からステップ3にかけて位相や左右差,分布や局在など,次第に複雑な波形の計測法を学ぶ。さらに,脳波記録法,アーチファクト鑑別法,賦活法,成人脳波,睡眠脳波,異常脳波とステップアップしてゆく。ステップ11からは小児脳波の分野に入り,ステップ14の老年者の脳波判読を終えると,すべての年代の脳波判読をカバーしたことになる。

 「症例編」ではステップ1のてんかんから,ステップ11の精神疾患まで,脳波判読にとって重要となる疾患が網羅されている。今回の改訂では,レビー小体病や白質脳症など最近注目されている疾患の脳波や,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)や非定型抗精神病薬による脳波変化が追加されている。最後のステップ12には33個の練習問題がついており,これにチャレンジすることで自らの臨床脳波判読の実力を確認できるように工夫されている。

 「入門編」「症例編」に共通する特筆すべき点は,個々の脳波図版の説明として記載されている「脳波所見」が,そのまま脳波記載法の範例となっていることである。脳波判読ができるようになれば,その所見を的確に記載する技術が必要となるが,本書は豊富な記載例を提供してくれていることになる。このような脳波図版が,「入門編」では103枚,「症例編」では178枚もある。長年にわたって貴重な臨床資料を蓄積し,さらに新しい情報を追加しつつある東北大学脳波グループの努力に敬意を表したい。

 最近は,臨床脳波を正確に判読できる医師がどんどん減っているように思われる。不正確な脳波判読は誤診の原因となるため,脳波判読医がいない施設は脳波検査をしないほうがよいとの極論もある。脳波指導医は臨床脳波が判読できる若手医師の養成に苦慮していると思われるが,本書を利用することによって判読医養成がより効果的になると思われる。脳波専門医にも目を通してほしい臨床脳波判読のための標準的テキストである。
臨床脳波判読の手順・知識が自然と身につく良書
書評者: 飛松 省三 (九大大学院教授・臨床神経生理学)
 脳機能イメージングの進歩により,脳の形態異常を画像として捉えることは容易になってきた。しかし,画像として捉えにくい機能的神経疾患群,特にてんかんの診断と治療には脳波は欠かせない補助診断法であり,代謝性脳症,脳死の診断にも有用な検査法である。コンピュータの進歩により,心電図の自動判読は可能となったが,脳波はまだ実用化にいたっていない。この理由は比較的単純な波形が反復する心電図に比べると,脳波を構成する波の周波数,振幅,波形などが意識レベルの変動や病態により複雑に変化すること,さらに頭皮上の多くの部位からの長時間にわたる記録を総合的に把握しなければならないためであると考えられる。その意味で,脳波判読法の学習は,一朝一夕では成しえず初学者にとっては厄介な存在である。

 著者らは「脳波の判読も基本的な事柄を一つずつ順序を踏んで学んで行けば,決して難しいものではない」という考えのもとに「脳波判読step by step入門編」を20年前に世に送り出した。本書の姉妹書である「脳波判読step by step 症例編」は,この入門編で得た判読のための基礎知識を応用して,一歩進んだ臨床脳波判読の学習をするために,代表的な脳波アトラスを集め,その読み方を解説したものである。1986年の初版以来,「入門編」「症例編」はともに好評であり,改訂第4版が2006年暮れに出版されるにいたった。

 「入門編」は「脳波の基本の理解」に焦点をあてたテキストである。これから脳波の読み方を勉強しようとする学生,医師,技師のために,脳波の構成要素,記録法,アーチファクト,脳波の賦活法,正常(小児,成人,老年者)脳波,異常脳波を網羅し,判読の第一歩から手ほどきをしている。脳波を基礎から,しかし必要以上に生理学的な事柄には触れず,大変実用的な内容になっており,脳波判読の基本を短期間である程度身につけられるように配慮されている。第3版から第4版への主な改訂点は,

 1)冒頭に「脳波を学ぶ」の章を新設し,その中で脳波とはなにか,学習の手引き,脳波判読の手順を解説している,

 2)正常か異常かの区別,臨床的意義に議論が多く,初学者には分かりにくい「特殊な脳波パターン」について章を独立させている,

 3)ほとんどすべての脳波に導出法を図示し,判読の際に必要な脳波の頭皮上分布を視覚的に理解し易くしている,

 4)用語は日本脳波・筋電図学会(現・日本臨床神経生理学会)の用語集(1991年)および国際臨床神経生理学連合(IFCN)の用語集(1999年)を原則としている。

 これらの改訂により基本的な知識と技術を獲得できる1冊となった。

 「症例編」は,姉妹書の「入門編」を読み終えた読者が,その基礎知識を応用して臨床脳波判読の訓練をすることに焦点をあてたテキストである。しかし,一通り脳波判読の基本をマスターした方が,てんかん,脳腫瘍,意識障害,頭部外傷,精神科・内科的疾患,薬物服用時などの症例を経験することで,より実践的な知識,技術を獲得できる高度な内容となっている。第3版から第4版への主な改訂点は,

 1)冒頭に「脳波でわかること」の章を新設し,脳波の臨床的意義について解説している,

 2)近年,注目されている疾患(レビー小体型認知症,白質脳症)の脳波を追加している,

 3)薬物の脳波への影響は判読の上で,重要であるので,新しい薬物(SSRI,第二世代抗精神病薬)に関する脳波を追加している,

 4)入門編と同様,脳波の導出法を図示し,判読の際に頭皮上分布が視覚的に理解できるようにしている。

 これらの改訂により,精神科,神経内科,脳外科,小児神経専門医を目指す方,あるいは認定医,認定技師を目指す読者の試験対策にも最適な一冊となった。

 以上,書名のstep by stepが示すように,「入門編」と「症例編」を読破することにより,読者が脳波判読の階段を一段ずつ上ってゆけば,自然と臨床脳波判読の総合的な手順と知識が身につくように配慮されている。脳波に興味ある方はぜひ手元に2冊おき,相互に参照しながら利用していただきたい。最後に,著者らの「脳波判読」普及に対する情熱と深い造詣に敬意を表したい。

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