慢性頭痛の診療ガイドライン

もっと見る

一般外来を受診する神経疾患のトップは頭痛であるが、頭痛治療は近年、劇的に進歩している。本ガイドラインは、国内外の科学的根拠に基づいて作成され、すべての医師が標準的治療を行うために必須である。頭痛診療への一般的アプローチから、各種一次性頭痛の診断・治療、薬物乱用頭痛、小児頭痛の要点、遺伝までを網羅。
編集 日本頭痛学会
発行 2006年02月判型:B5頁:240
ISBN 978-4-260-00249-3
定価 4,400円 (本体4,000円+税)
  • 販売終了

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 目次
  • 書評

開く

 慢性頭痛の診療ガイドラインについて--序にかえて
 執筆者一覧
I. 頭痛一般
II. 片頭痛
III. 緊張型頭痛
IV. 群発頭痛
V. その他の一次性頭痛
VI. 薬物乱用頭痛
VII. 小児の頭痛-小児の一次性頭痛の頻度と診断
VIII. 遺伝子
付録:国際頭痛分類第2版とWHO ICD10 NAコード
索引

開く

慢性頭痛のすべてを網羅した診療に必須のガイドライン
書評者: 片山 宗一 (総合南東北病院神経疾患研究所長/獨協医大名誉教授)
 器質的脳障害のない,いわゆる慢性頭痛は日常臨床の場でもっとも多くみられる症状の一つであり,数多くの論文(PubMedではheadache約38,000編,migraineに限ると約18,000編)が発表されている。また頭痛に関する教科書も毎年多数出版されている割には診療指針となる情報は多くない。2004年,15年ぶりに改訂された「国際頭痛分類 第2版」は系統的,合理的な分類と同時に詳細な解説を加えた188頁(日本語版)の大著であり,それ自体がガイドラインを構成しているが,厳密さを求めるあまり,説明が煩瑣,冗長であり,専門医は別として,一般医には読みにくいと批判されている。

 「慢性頭痛の診療ガイドライン」は他疾患のそれとは異なり,「国際頭痛分類 第2版」に準拠し,日常の臨床で取り上げるべきテーマについて,専門医のほか一般医をも対象として慢性頭痛の問題点をすべて抽出し,また患者団体の協力をも得て,臨床的課題を明確にした。すなわち,91の設問に分けてエビデンスをもとに解説が加えられている。まず,頭痛の一般的解説として,診断,治療のほか,病診連携,職場・学校での頭痛対策,OTCや漢方薬による対応法,その他,医療経済の記載もみられる。さらに,一次性頭痛(片頭痛,緊張性頭痛,群発頭痛),小児の片頭痛,薬物乱用頭痛,遺伝などのほか,「その他の一次性頭痛」についても多くの頁をさいている。この分類はいわばwaste basketの様相を呈しており,思いつくまま咳嗽,労作,性行為,睡眠時などに伴う雑多な頭痛が取り入れられており,その他,雷鳴頭痛(thunderclap headache),持続性片側頭痛(hemicrania continua),いわゆる慢性連日性頭痛(chronic daily headache)の分類上の問題など,第一版刊行後,厳しい検証を受けたがまだ議論の余地のある疾患もいくつか含まれている。

 本ガイドラインではエビデンスとして選りすぐりの文献が多数引用されている。そのうち国内文献は国際分類の翻訳,その他を除いても約10%を占めており,1973年に発足し,3分の1世紀の歴史を有するわが国の頭痛学研究の実績が反映されているといってよい。しかし,トリプタンなど,画期的な治療薬に関する重要な論文は皆無に近い。この事実は他の神経治療薬と同様,新薬導入が海外より10年遅れた事情によるもので,「トリプタンの失われた10年」により我が国の優れた臨床神経学者が海外の学者と互角に競い合える機会を奪われたものと考えられ,大変残念でならない。

 慢性頭痛は十人十色で,“There are no diseases,only patients”といわれるように,各症例にはおのおの特徴があり,それぞれにsubdiagnosisを必要とすることも少なくない。本書は日本頭痛学会の総力をあげて編集され,慢性頭痛のすべてを網羅した,大変読みやすい画期的なガイドラインであり,日常の臨床で国際頭痛分類に基づいて正しく診療する際に欠かすことのできない座右の書である。

エビデンスに基づく頭痛治療を行うための必読書
書評者: 高倉 公朋 (東女医大学長)
 頭痛は脳神経疾患を診断・治療している医師にとって,もっとも普遍的な症状であるが,その原因と病態がさまざまであるため,診断と治療法が医師により異なっていたり,時に治療上不適切な投薬が行われていることも少なくない。しかし,最近頭痛の分類と診断が国際頭痛学会が定めた分類に従って行われるようになり,わが国の臨床現場でも,頭痛の診断と治療が標準化されつつある。頭痛の分類は国際頭痛学会が1988年に提案した国際頭痛学会分類初版が基本になっているが,その改定が2004年に行われたので,頭痛の分類は,今後,国際頭痛学会分類第2版(2004)に準じて行われることになった。

 本書は慢性頭痛の診断と治療のガイドラインをまとめた書で,日本頭痛学会の主な会員の方々によって執筆され,頭痛に関して本邦の権威である坂井文彦先生と間中信也先生が中心となって編集されている。わが国の慢性頭痛治療レベルの向上と標準化に貢献するところが大きい。

 頭痛は一次性と二次性頭痛に大別されるが,本書は一次性頭痛の分類,診断と治療法の解説に重点が置かれている。一次性頭痛の中では片頭痛が臨床的には,もっとも多いので,本書では片頭痛を中心に解説している。片頭痛とともに緊張性頭痛,群発頭痛およびその他の一次性頭痛については,従来よりも明確な診断基準が示されている。

 片頭痛の薬物治療は最近,著しく進歩しており,トリプタン系薬剤の有効性が広く認められるようになっている。片頭痛急性期治療には,アセトアミノフェン,非ステロイド系抗炎症薬,エルゴタミン製剤,トリプタン系薬剤,制吐剤などが用いられているが,本書では,それぞれの系の薬剤の特徴,使用法と有効性が詳細に解説されており,実地臨床での医師の薬剤選択に適切な指針を与えている。

 二次性頭痛について,その原因はさまざまであるが,「誤診すると死につながる頭痛」を見落とさないことに重点を置いて解説されている。くも膜下出血が重要な疾患であるが,髄膜炎,片頭痛,脳梗塞,高血圧症頭痛,緊張性頭痛などとの鑑別の要点や,救命・救急室での頭痛の診断・治療法,頭痛の簡易診断の手順,さらに病診連携で患者の経過を追うことの重要性など臨床に直接役立つ内容が要領よくまとめられている。

 本書には,小児の一次性頭痛の疫学・診断と治療法,ならびに頭痛の遺伝子解析についても最近の知見が紹介されている。

 本書は頭痛の診断と治療に関する現在の国際的な基準をまとめており,エビデンスに基づく頭痛の治療を行うためには必読の書である。

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。