標準整形外科学 第10版

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医学生に最も支持されている整形外科教科書の改訂第10版。豊富な写真・図と簡潔な説明により、生理学・生化学的領域から整形外科で扱う個々の疾患まで平易に、かつ詳細に理解できる。診察や診断の進め方、さらにリハビリテーションにも重点を置いており、患者とのかかわり方を意識した幅広い思考力と鋭い判断力を養える。運動器疾患とかかわるすべての人に最適なスタンダードテキスト。
シリーズ 標準医学
監修 国分 正一 / 鳥巣 岳彦
編集 中村 利孝 / 松野 丈夫 / 内田 淳正
発行 2008年04月判型:B5頁:956
ISBN 978-4-260-00453-4
定価 10,120円 (本体9,200円+税)
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序章 整形外科とは
第1編 整形外科の基礎科学
第2編 整形外科診断総論
第3編 整形外科治療総論
第4編 疾患総論
第5編 疾患各論
第6編 外傷学
第7編 スポーツと整形外科
第8編 リハビリテーション

付録
 資料1 関節可動域表示ならびに測定法
 資料2 主な徒手筋力テスト
 資料3 治療成績判定基準
 資料4 その他
本書で用いた略語一覧
索引

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わが国における「standard textbook標準整形外科学」
書評者: 高橋 和久 (千葉大大学院教授・整形外科学)
 新しい『標準整形外科学 第10版』を手にとった。この本には安心感がある。これは,本書が長年にわたり版を重ね,整形外科を学ぶ多くの人々に広く受け入れられ,高い評価を受けてきたためであろう。本書は昭和54年,当時の井上駿一千葉大学教授,広畑和志神戸大学教授,寺山和雄信州大学助教授の編集により,本格的な整形外科学の教科書として初めて執筆された。私事ではあるが,この年は私が井上教授の千葉大学整形外科に入局した3年目であり,本書から多くの知識を学ぶことができた。

 初版の刊行以来,本書は医学部の学生から整形外科研修医,さらに理学療法士や作業療法士など,整形外科疾患の研修や診療に携わる多くの人々に名実ともに「標準的な教科書」として使われてきた。近年,医学特に整形外科学の知識・技術は,量的にも質的にも増え続けている。本書にも数多くの改訂が行われ,第10版が刊行されることとなった。今回はその完成度をさらに高めるため,重複記載を省き,参照頁を適宜示し,用語表記を統一し,略語一覧や索引の充実化を図り,別冊付録をイラスト中心にまとめ直すなどの改訂が行われた。

 21世紀を迎え,コンピューターの進歩は著しく,インターネットなどにより,即座に大量の情報に接することが可能となった。しかし,このようにして提供される大量の情報には十分な吟味を受けずに流布されるものもある。もし,誤った情報が含まれていれば,医療においては重大な結果につながりかねない。教科書の内容はフィクションではない。執筆に当たっては,急速に進歩し,増え続ける情報を精密に吟味し,整理し,記載する必要がある。この作業には多くの時間と労力を必要とする。極端にいえば,一行を記載するにも,何編もの参考文献を調べねばならないこともある。もちろん,各項目に関する,深く広い知識がなければ,このような作業を始めることすらできない。

 本書には安心感があると述べた。この安心感は,すみずみまで内容が吟味され,必要な知識が秩序正しく整理され,網羅されているためである。監修に当たられた,国分正一先生の理路整然とした思考過程にはいつも感銘を受けている。また,鳥巣岳彦先生には日本整形外科学会学術用語委員会にてご一緒させていただき,概念や用語に対する精緻なお考えをご教示いただいた。今回の第10版は,中村利孝産業医科大学教授,松野丈夫旭川医科大学教授,内田淳正三重大学大学院教授が編集に当たられ,29名のわが国屈指の専門家が執筆に携わった。まさにわが国における「standard textbook標準整形外科学」である。医学部の学生諸子には,多少内容が詳細にわたる感があるかも知れない。しかし,本書を読み進めるうちに整形外科学の面白さに引き込まれるに違いない。本書には整形外科研修医あるいは専門医にも必要な内容が記載されている。本書を是非座右に置き,皆様の日常診療に役立てていただきたい。
ほどよく熟成された美酒
書評者: 山内 裕雄 (順大名誉教授・整形外科学)
 1979年に上梓された本書もなんと30年目を迎え,第10版となった。書評を依頼され,第9版も横に置きながら一覧し,まさに熟成された美酒だなとの観を深くした。どんな酒でも年を経さえすれば良くなるわけではない。最初に良質な酒があり,それを優れた環境下で手間暇かけて育まなくてはならない。本書は幸いにもそのような条件に恵まれてきたようだ。

 初版はよくできてはいたが,分担執筆にありがちなレベル設定の不均衡や項目の重複・脱落などがあり,横文字のミススペルも気になった。3年後に出た第2版の書評を書く機会があったが,これらの欠点は見事に改善され,薦められる教科書に変貌したと記した。そのころ,私は他社からの整形外科学教科書に分担執筆しており,学生に推薦してはいたが,本書第2版を見て一本取られたなと思い,潔くそれを学生への推薦図書としたものである。それは後任にも引き継がれ,現在に到っているようだ。

 その後,編集者は移り変わり,特に監修者が交代するたびにかなりの改変が行われ,めまぐるしい学問の進歩によく順応してきた。その間に医学教育にも大幅な変革が実施され,講義よりもbedside learningに重点が置かれるようになった。いわば覚えるよりも考えることが重視された。本書はそれに対応し,第8版からは疾患総論以下の各項目に「診療の手順」が設けられ,それをまとめたポケット版の小冊子が付録として添付された。これはその後も第9版では「整形外科臨床実習の手引き」,第10版では図を主とした「運動器疾患の診察のポイント」となって継続されている。これは監修者の一人として中心的な役割を演じられた寺山和雄信州大学名誉教授のアイデアによるもので,彼の熱意がいまだにこういう形で受け継がれ,本書の特色の一つとなっているのは喜ばしい。

 もう少し詳細に第10版を見てみよう。本文頁數は第9版とほぼ同じで807頁という大冊である。第7編として「スポーツと整形外科」が新設され,前にもあったスポーツ障害がここに移され,新たに障害者スポーツが加えられた。執筆者が交代となった項目がいくつかあり,そこでは以前からの図・写真がほぼ踏襲され,minor revisionのようにも見えるが,よく読むと新執筆者の特色が出ているところもあって面白い。こうして次々と新しい血が加えられているところに,単なる「寝かし」ではないエイジングの魅力がある。第10版では文献が最初に日本語,次いで外国語(すべて英語)のものに二分され見やすくなった。しかしその選択にはいささかムラがあり,対象読者層と用いられる状況とを頭に描き,監修者が統一を図られるといいなと思う。

 外国人名のカタカナ表記は,「ギョエテとは俺のことかとゲーテいい」といわれるように至難である。第9版の序によるとこれには畏友小林晶氏らの助言を得たとのことであるが,Phalenがフェイルン・ファーレン,Collesがコレス・コリーズと併記されているのは学生には紛らわしく,どちらかに統一されたい。前版ではKlippel―Feilがクリッペルーフェイユとなっていたが,今回は一般的なクリッペルーファイルとされているところに苦心のほどがうかがえる。なお,私の師匠の一人であるBlount先生がブラントとなっているが,ブラウントの方が近いと思う。

 最後にレベル設定の問題がある。本書は学生・研修医・コメディカルを対象としているようだが,学生には情報量が多すぎる。最適なのは初期研修医レベルではなかろうか。せっかく全頁カラー印刷なので,医学生にはこれは必修,これは参考という「重み付け」を,色を変えるなり,なんらかの方法で指示できないものか。

 とにかく歴史の重みに耐えて成長した,ほどよく熟成された整形外科学教科書として推薦するのにやぶさかでない美酒,いや好著である。
待望の改訂 成熟した『考える整形外科学』
書評者: 吉川 秀樹 (阪大大学院教授・整形外科学)
 『標準整形外科学』の初版が出版されたのは,昭和54年である。同年,医学部を卒業し,整形外科に入局した当時,医学部学生,研修医向けの詳細かつ明解な整形外科テキストブックは,ほとんど出版されていなかった。同期で入局した整形外科研修医が全員,本書を携帯していたのを記憶している。以後,医学部学生,整形外科研修医,理学療法士など運動器にかかわる多くの方に読み継がれてきている。この間,整形外学は急速な進歩を遂げ,それに伴い,本書も改訂を重ね,このたび,待望の改訂第10版が出版された。主な改訂は,重複記載の削除,参照頁の添付,用語の統一,略語一覧や索引の充実がなされたことである。具体的には,「診療の手引き」「疾患一覧表」「各論各章の機能解剖」「Side Memo」「参照頁・関連頁」「別冊付録」「カラー写真・着色図」の各項目の見直し,補充がなされ,最新の知見を盛り込み,かつ,初心者にも見やすい教科書に成熟している。第1版からの本書のキャッチフレーズである『考える整形外科学』をベースに,現代的にビジュアル感覚を重視し,カラー図,カラー写真をふんだんに盛り込んだ内容になっている。中でも,「別冊付録:運動器疾患の診察のポイント(OSCE対応)」は,特筆すべき内容になっている。第9版では,「別冊付録:整形外科,臨床実習の手引き」が添付されていたが,図・写真がなく,細かい文字の文章が箇条書きに列記されている内容であったため,実用的ではない印象があった。今回の第10版では,1.運動器診察の実際,2.主訴,主症状から想定すべき疾患一覧表,3.局所診察,4.身体計測,5.関節炎の診察,6.皮膚感覚帯,7.歩容の観察,8.皮膚の観察,9.関節弛緩,10.関節運動の表現,11.筋力の判定基準,12.総合機能のチェック,13.救急,外傷診療のキーワードの13項目からなっており,いずれもカラー図表,カラー写真を多く取り入れた内容で,本別冊のみを白衣のポケットに入れていても,日常の外来診察,ベッドサイドでの整形外科臨床に大変有用である。医学部学生,整形外科研修医に広く活用されるものと思う。一方,『標準整形外科学』は,日本整形外科学会専門医試験の受験者のためには必読の書である。実際には,専門医試験委員会での問題作成に当たり,本書を参照し,語彙の確認や問題の妥当性を確認している。また,多くの日本整形外科学会代議員が本書を参考に,新規問題を作成しており,今後もこの傾向は継続するものと考える。本書は,専門医として備えるべき知識と考え方を示しているとともに,専門医有資格者の知識の整理やさらなる研鑽にも有用であると考える。近年,日進月歩に変化する整形外科学の情報収集に効果的かつ効率的な教科書であり,全国の整形外科教室,整形外科研修施設の収蔵図書として薦めたい。

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