MIS人工関節置換術

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最小侵襲手術(MIS)という新しい方法がさまざまな領域で試行、実践されているなか、整形外科でも人工関節置換術にこの方法を応用できないかという流れが生まれている。本書は世界各国で取り組まれているMISの実際を紹介するほか、MISが今後、本当の意味で人工関節置換術を行ううえでの「選択肢」となりうるのかどうかを検討し、MISで行う人工関節置換術の最前線を読者に提示する。
編集 William J. Hozack et al.
糸満 盛憲 / 占部 憲 / 高平 尚伸
発行 2007年03月判型:A4頁:304
ISBN 978-4-260-00347-6
定価 13,200円 (本体12,000円+税)
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  • 目次
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第1部 人工関節置換術にMISは必要か?
 第1章 MIS後のリハビリテーション
 第2章 治療法とリハビリテーションの考え方-アメリカ合衆国
 第3章 治療法とリハビリテーションの考え方-ヨーロッパ
 第4章 治療法とリハビリテーションの考え方-アジア太平洋地域
第2部 股関節
 第5章 人工股関節置換術の原則と歴史
 第6章 股関節における従来のアプローチ
 第7章 股関節の最小侵襲アプローチ
第3部 膝関節
 第8章 人工膝関節置換術のための標準的な前内側傍膝蓋アプローチ
 第9章 膝関節の最小侵襲アプローチ
第4部 MIS人工関節とコンピュータ支援外科
 第10章 CAOSはMIS-THAとTKRをいかに支援するか?-背景と意義
 第11章 MISにおける膝関節と股関節のCT-basedナビゲーション
 第12章 イメージフリーナビゲーションを用いた前方アプローチ
 第13章 イメージレスナビゲーションを用いた2切開THAと
     小切開後方アプローチによるTHA
 第14章 イメージフリーナビゲーションによるTKA-手術手技
 第15章 TKAのためのイメージフリーナビゲーション
 第16章 コンピュータ支援MIS-TKA
 第17章 MISを補助するCAOS-UKAにおける理想的な連携
 第18章 切骨のためのフリーハンドナビゲーション
 第19章 MIS人工関節置換術にロボティクスの余地はあるか
 第20章 コンピュータナビゲーションはどのようにTKAを変えたか
第5部 MIS人工関節の評価
 第21章 人工股関節置換術におけるMIS:現状と将来展望
 第22章 臨床研究のコンセプト
 第23章 国際的なデータ比較のためのスコアリングシステム-股関節と膝関節
第6部 展望-股関節
 第24章 低侵襲THAは魅力あるコンセプトか?
 第25章 共通のアプローチ,いや分裂した世界か
 第26章 どんな器具が必要か?
 第27章 インプラントの新しいデザインはMISに必要か?
第7部 展望-膝関節
 第28章 MIS-TKAはwinning conceptか?
 第29章 MIS-TKA-どんな器具が必要か
 第30章 新しいインプラントデザインは必要か
第8部 MISとCAOSの展望
 第31章 新しい外科的技術の導入
 第32章 THA,TKAの合併症:得られた教訓
 第33章 MIS人工関節置換術と消費者に対する宣伝
 第34章 倫理と小切開人工関節置換術
 第35章 MISは欠陥のあるパラダイムか?
 第36章 MISとCAOSの展望:これらの発想に対して技術者は何ができるか?
 第37章 MISをどのように教えるか?
 第38章 MISのトレーニング機材としてのCAS

索引

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MISの光と影を理論的かつ客観的に記載
書評者: 黒坂 昌弘 (神戸大教授・整形外科学)
 欧米の第一線で活躍する整形外科医によって執筆された,『Minimally Invasive Total Joint Arthroplasty』が,北里大学教授の糸満盛憲教授らによって翻訳され,『MIS人工関節置換術』として出版された。

 人工関節置換術は,数ある整形外科手術の中でも最も確実性の高い,信頼のおける手術であることは,疑いの余地がない。人工関節置換術に関しては,デザインや材質の改良に始まり,種々の新しい試みが導入されている。最小侵襲手術と訳されるMinimally Invasive Surgery(MIS)は,数ある新しい試みの中で,近年最も注目されている概念である。少ない手術侵襲で患者の術後疼痛を和らげ,日常生活への復帰を早めるという概念は非常に魅力的であり,多くの整形外科医に広まりつつある。この意味では,本書は非常に時を得た出版であり,読者に理解しやすい図や写真の配置と,筆者の意図を組み込んだ,訳者の的確かつ明快な翻訳により,読者は多くのことを学び取ることができると確信する。従来の人工関節置換術の成績は安定しており,手術侵襲を小さくするだけでは,本質的なメリットは多くないとも考えられる。しかし,関節鏡手術が導入されたときに,置き去りにされた関節外科医が存在したように,最新の医療が導入されるときに,客観的にその技術を学び,導入してゆくことは外科医として重要な姿勢である。

 一方では,現在行われつつあるMISは,主として皮膚切開を短くすることに重点が置かれ,本当の意味で,患者にもたらされるメリットは未だ明確でない。多くのMISに関する論文を見ても,科学的にMISが従来の方法に比較して明らかに優れているという傍証は得られていない。一方,関節鏡手術が,テレビモニターの導入でそれまでの手術に比して明らかに優れたものとなり,従来の関節切開を必要とする手術より,格段に優れた手技として確立された歴史を忘れてはならない。MISにおいては,コンピュータによるナビゲーション手術の進歩にその期待が寄せられている。

 本書には,MISの光と影が明確に記載されており,コンピュータによるナビゲーション手術を含め,現時点でのMIS手術の功罪が,理論的かつ客観的に記載されている。MIS手術に関する最も充実した著書といえる本書が翻訳され,多くの読者の皆さんの手元に届くことは,今後のMIS手術が適切に評価され広まってゆくためには非常に重要なことと考えられる。多くの読者の方が,本書からMISについて学び,患者に福音がもたらされることを期待したい。
MISに役立つ術中写真・図を豊富に収載した実用書
書評者: 内藤 正俊 (福岡大教授・整形外科)
 膝関節と股関節に対する人工関節置換術は整形外科領域で最も成功し,進歩し続けている代表的な治療法である。米国の統計では1994年に行われた人工関節置換術は合計333,000例(人工膝209,000例,人工股124,000例)であったが,2004年には2倍以上の712,000例(人工膝478,000例,人工股234,000例)になっている(National Hospital Discharge Survey)。わが国でも同じ傾向にあり,最近では人工関節置換術を年間数百例以上行う施設が稀ではなくなっている。手術例数の増加とともに手術方法にも工夫や改良が重ねられている。特に最小侵襲手術(minimally invasive surgery:MIS)の概念の導入は,人工関節置換術に新たな発展をもたらしている。

 筆者も後側方アプローチによるMIS人工股関節置換術を行っていたが,さらに他のアプローチによるMIS人工股関節置換術の導入を数年前に思い立った。実施に先だって手術に役立つ書籍を検索したが詳しく書かれたものは見出せなかった。そこで,エキスパートのいる施設での見学を計画し,2005年10月に北里大学病院で糸満盛憲教授執刀による仰臥位前方アプローチMIS人工股関節置換術に手洗いさせていただいた。最小の皮膚切開と無駄のない皮下の展開,臼蓋コンポーネントの設置や脚長差のチェックの容易さ,出血量の少なさ,手術時間の短さ,術後のX線で確認された完璧なインプラントのアライメントなど見事なMISに感動したのをよく憶えている。

 インターネットやマスコミによる影響もあり,MIS人工関節置換術への要望が今後さらに強まっていくと予想される。折も折,MISに関する最新の情報を満載した『MIS人工関節置換術』の日本語訳版が上梓された。MISに精通した海外の7名の編集者が股関節と膝関節でのMISの必要性・歴史・原則,さまざまなアプローチ,将来の展望などを8部構成で包括的にまとめ,北里大学整形外科の糸満盛憲教授,占部憲准教授,高平尚伸講師の3名により訳されている。実際の手術に役立つよう術中写真や図が豊富に提示され,複雑な手術手技も解りやすい日本語で記載されている。コンポーネントの正確な設置のためのコンピューター支援整形外科手術(computed assisted orthopaedic surgery:CAOS)についても随所に取り上げられ,MISでの術中の大混乱(CHAOS)を防ぐ手立てとしての将来性も議論されている。

 本書の序で述べておられるようにMIS人工関節置換術はまだ発展段階にあり,明確なエビデンスに乏しい。しかし,通常の人工関節置換術と同じ成績が得られるのであれば,より低侵襲の手術が患者にとって福音となる。関節外科医やこれから関節外科をめざす若い先生方は,ぜひ本書をMISの実用書として役立てていただきたい。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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