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Neurological CPC [ハイブリッドCD-ROM付]
順天堂大学脳神経内科 臨床・病理カンファレンス

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主に『脳と神経』に連載された97回の順天堂大学脳神経内科のCPC(臨床・病理カンファレンス)から珠玉の30編を選定し、読みやすくレイアウトを変更、単行本化したもの。定評のある同教室のCPCが臨場感溢れる形式で収載され、読者を飽きさせない。付録CD-ROMに97回すべての雑誌連載時のPDFファイルを収載し、キーワードでの検索も可能。
編集 水野 美邦 / 森 秀生
発行 2006年03月判型:B5頁:392
ISBN 978-4-260-00210-3
定価 8,800円 (本体8,000円+税)

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  • 目次
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症例1 急速に進行する痴呆,錐体外路症候を呈した61歳男性

症例2 ミオクローヌスとてんかんを呈した77歳女性

症例3 進行性の歩行困難,嚥下障害,痴呆を呈した78歳男性

症例4 全身筋萎縮と,末期に至り眼球運動障害を呈した54歳男性

症例5 歩行障害と痴呆を呈した71歳女性

症例6 進行性球麻痺症状,歩行障害を呈した65歳女性

症例7 パーキンソニズムを呈し,突然死をした75歳男性

症例8 四肢筋力低下・筋萎縮に経過中パーキンソニズムが加わった56歳女性

症例9 パーキンソニズムで発症し,眼球運動障害,痴呆が加わった65歳男性

症例10 23歳発症のパーキンソニズム,55年の経過で突然死をした78歳男性

症例11 24歳発症,62歳で死亡した家族性パーキンソニズム男性

症例12 25歳発症,パーキンソニズムを呈し,18年の経過で死亡した43歳女性

症例13 44歳発症,右側優位のパーキンソニズムで,突然死を来した症例

症例14 歩行障害,眼球運動障害を主症状とした70歳男性

症例15 80歳発症,歩行障害を主訴とした85歳女性

症例16 両下肢に限局した筋力低下・筋萎縮を呈し,4年の経過で死亡した80歳女性

症例17 随意運動障害で発症し,錐体外路徴候・痴呆・眼球運動障害を併発した81歳女性

症例18 パーキンソニズムと痴呆を呈し4年の経過で死亡した74歳女性

症例19 歩行障害,すくみ足,垂直性眼球運動障害を呈し,食道癌を合併した61歳男性

症例20 パーキンソニズムと痴呆を呈した80歳女性

症例21 進行性の歩行および注視障害を認めた77歳男性

症例22 進行性の歩行障害を呈した67歳男性

症例23 進行性の歩行障害と知能低下を呈した57歳女性

症例24 母親にパーキンソン病を持ち,パーキンソニズムを呈した56歳女性

症例25 言語障害で発症し,動作緩慢,痴呆を呈した68歳男性

症例26 パーキンソニズムで発症し,高度の行動異常を伴う痴呆を呈した64歳男性

症例27 パーキンソニズムに眼球運動障害と開瞼困難を伴い,仮性球麻痺が目立った65歳男性

症例28 うつ状態,痴呆とパーキンソニズムを呈した73歳女性

症例29 進行性の性格変化,痴呆,パーキンソニズムを呈した76歳女性

症例30 家族性のパーキンソニズムと注視麻痺,痴呆を呈した54歳男性

索引

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臨床神経学を学ぶすべての方々に必携の書
書評者: 田代 邦雄 (北海道医療大教授・心理科学)
 神経学の近年の進歩は目覚ましく,CT,MRI,SPECT,PETなどの画像診断が登場し,また分子生物学的アプローチにより,遺伝子レベルの異常が解明され新たな疾患概念が生まれるなど,その進歩はとどまることを知らない状況にある。

 しかしながら,神経学の基本は,患者(ある場合には家族)から十分な病歴を聴取し,神経学的診察に時間をかけ症候を分析し,正しい診断をつけていくことから始まることに変わりはない。画像診断が先行し,神経学的診察が不十分,また神経徴候のどこがポイントなのか注目できないことがあってはならないのである。

 このたび,医学書院より出版された『Neurological CPC』は,順天堂大学脳神経内科において過去約17年間に行われた97回のCPCの内(その全症例の雑誌連載時の誌面を収載したハイブリッドCD-ROM付),今回は1992-2005年のCPCより30編を厳選し単行本としてまとめられたものである。その目次一覧をみても興味ある,かつ多彩な神経疾患が収録されていることが明らかである。

 その方式は,New England Journal of Medicine(NEJM)に毎週掲載されているCPCと同じく,症例呈示,指名されたDiscussantによる臨床的・症候学的解析,画像や検査データを踏まえた臨床診断,そして鑑別診断が述べられ,ついで参加者が各自の考えを発言し,その後に病理学的所見の呈示があり最終診断が下されることになる。

 今回の30症例の特徴は,CJD 1例,FEMF(familial essential myoclonus and epilepsy)1例,ALS 3例を除けば,残りの25症例はパーキンソニズム,歩行障害,痴呆,眼球運動障害,行動異常なども含めた多彩な症候を示す神経変性疾患が中心となっており,指定されたChief discussantの見事な症候解析と診断・鑑別診断,そして次々と発言する参加者の見解,その中には学生も含まれて自分たちの意見を述べていく,しかも発言者の実名が記録されるという,まさに臨場感あふれる討論が展開されているのである。最後に病理学的には,その肉眼的所見,組織学的所見の解説がなされ最終診断が呈示されることになる。

 神経変性疾患の中でもPD,PSP,CBD,PNLA,MSA,DLBD,FTD,AD,Pick,PDC等の討論は,順天堂大学脳神経内科における神経学の歴史と伝統,そして世界をリードする人脈ならではのCPCであると感服する次第である。そこに示されたものは,神経変性疾患の臨床,そして最先端研究へも繋がっているものであり,どこの国にも負けない実績と言えるであろう。

 本書の序文にも述べられている如く,その模範となっているものは現在でもNEJMに毎週掲載されているCPCである(その中には年間でみるとNeurological CPCも必ず何例かは取り上げられている)。   

 翻ってみると,Little, Brown and Co.より『Neurologic Clinicopathological Conference of the Massachusetts General Hospital』(MGH-CPC)と題する神経疾患50症例をまとめた本が1968年に出版されたことがある。当時は画像診断としてはCTすらなかった時代であるが,神経症候学的解釈と病理所見で確定診断するCPCにおいて,DE Denny-Brown,RD Adams,JM Foley,HH Merritt,M Victorら,神経学を学ぶ者にとっては憧れの的である著名な神経学者がDiscussantとして登場している。その方々が必ずしもすべて正解でなく,時には学生が正しかった例もあるが,大切なのは疾患そして症候をいかに解釈していくかのプロセスの重要性を教示したものだということである。

 この度の,水野美邦教授,森 秀生助教授の編集による本書は,先に紹介したMGH-CPCを,より近代化,updateした画期的なテキストであり神経学を学ぶすべての方々にとって必携の書であると言うことができ,その出版に心からの賛辞を表するものである。

最終診断に至るまでの科学的プロセスを学ぶ
書評者: 廣瀬 源二郎 (浅ノ川総合病院脳神経センター常勤顧問)
 神経内科領域におけるすばらしい臨床・病理カンファレンス(CPC)の記録業績が,わが国で初めて出版された。CPCで長く続けて公に出版されているのは,New England Journal of Medicineに毎週掲載されるMGHでの症例記録(Case Records of the Massachusetts General Hospital)である。きわめてtimelyでレベルの高いディスカッションがされることから,最新情報を把握したい内科系臨床医にとり最も魅力的なCPC記録として知られるものである。30数年前ハーバード大留学中の私も最も楽しませてもらったカンファレンスである。要望が強いため,その中から神経疾患についてのCPCだけをまとめて過去に欧米で発刊されたこともある。この方式に倣い,順天堂大学脳神経内科の剖検症例で,過去100回以上開催された神経疾患患者CPCの内,97症例をCD-ROMのPDFファイルにまとめ,そのうち教室の伝統的業績を反映した症例で,編者が重要であると思われたパーキンソン病およびその類縁疾患を中心に30症例が選択されCD-ROM付き冊子体として発刊されたわけである。このCPCは『脳と神経』誌に1990年以来掲載されているとはいえ,冊子体として発刊されたものを通読すると,その臨床神経学の内容,材料に改めて感心するばかりである。教室員によるしっかりとした病歴聴取,詳細な神経学的所見把握をもとに,教室のteaching staffが主に討論者となり,論理的に考えを推し進め診断にいたるプロセスを呈示している。さらに森助教授が中心となり,その神経病理診断がなされており,HE染色のみでなくKB染色,Bodian染色,さらには種々の免疫染色を駆使して詳細に検討し,それらの所見を正確に記載し,どちらといえばアメリカ流というよりはドイツ学派の考えを交えて解説している。

 臨床神経学とは,患者の病歴にはじまり,診察で神経学的所見をとり,この両者をまとめて病変が神経系のどこにあり,如何なる病因・疾患かの鑑別をあげて最終診断を下す科学的プロセスの遂行である。最近の神経科学領域の進歩は実にめざましく,とくに分子生物学的・遺伝学的なアプローチおよび進歩した画像診断を駆使した病因・病態の把握,診断には目をみはるものがある。最先端の新しい事実を求めて進んでいくことは神経学研究のさらなる進展には不可欠であろう。しかしながら得られた新知識が何のために患者に用いられるかを考えなかったら臨床医学は発展しない。臨床をないがしろにした最先端の神経学的業績のみでは,神経疾患・神経難病を患う人は決して救われない。神経学の行く先こそは,最新の分子生物学的手法を利用して得た知識を,患者の神経症候学を基盤に昔ながらの正しい臨床神経学にのっとり診断,治療する際に用いていくことにある。この流れに沿った本書の発刊は時宜を得ており,「神経学よ!何処へ?」との多くの神経内科医の懸念を吹き飛ばし,今後の神経学の進むべき道として改めて臨床神経学の基本・本流に戻ることを教えてくれるものである。臨床に携わる神経内科医,これから神経内科専門医をめざす若い医師にはぜひ本書を読んでいただき,このレベルをわが国の臨床神経学のスタンダードとしていただくことを期待するものである。

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