エキスパート外来診療
一般外来で診る common diseases & symptoms

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主治医が「この分野は苦手」とは言っていられない、後期高齢者医療制度に象徴される時代。「その疾患を疑うポイントは何?」「どう診療を進める?」「どこまでが守備範囲?」。試行錯誤しながら外来を続ける医師のためのヒント集が誕生! 経験豊かな各分野の外来エキスパートによる「臨床の知」が詰め込まれた、外来担当医なら必携の1冊。
編集 五十嵐 正男 / 福井 次矢
発行 2008年04月判型:A5頁:564
ISBN 978-4-260-00559-3
定価 6,380円 (本体5,800円+税)

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 毎日診療をやっていると,自分の持っている知識やこれまでの長い経験でも解決できない問題にしばしば出合う。病院勤務時代にはそのようなときでも多くの先輩・同僚・ナースの知識と経験に助けられ,これらの難問に無事対処できてきた。しかし病院を辞し,朝から晩まで一人で外来診療を行ってみると,このような問題に出合っても助言が得られず,困ることが屡々ある。一般外来診療は孤独であり,自分の知識の足りなさを思い知らされる。
 いっぽう医療の進歩はめまぐるしく,しかもその裾野の広がり様には驚かされる。それらに自分一人で追いついてゆくことは不可能に近い。また自分のあまり得意でない分野の疾患に対して,必ずしもその時代で常識とされるものから遅れた診療を心ならずも行って,たまたま何らかの誤りが起きれば,それは知らなかったでは済まされず,社会から糾弾されかねない。このようなとき頼りになるものがあって欲しいと心より思ってきた。
 難しい専門書は星の数ほどあるが,一般外来で出合う common disease について,自分の知識の不足を感じたときに紐解いて参考にできるような本に出合うことは少ない。
 このようなときに本当に頼りになる本を出版したいと願って本書は編集された。多くの執筆者を揃えるという従来の手法はとらず,一つの系統の疾患は一人の著者がすべて書くという形態をとった。著者には原則として大学や大病院で第三次医療を十分に経験し,その後実際に一般外来診療を担当しておられる方々にお願いして,common disease に対して自分が実際にどのように対処しているかを具体的に書いて頂き,最後には一般外来の守備範囲をはっきりと述べて頂いた。
 本書が良い医療をしようと日夜努力しておられる第一線の医師たちの一助となれば幸いである。
 2008年2月
 五十嵐正男 福井次矢

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1 外来でみる症候からの診断学,治療原則
2 感染症
3 循環器疾患
4 呼吸器疾患
5A 消化器疾患(肝胆膵)
5B 消化器疾患(消化管)
6 脳・神経疾患
7 内分泌・代謝疾患
8A 膠原病・アレルギー疾患(膠原病)
8B 膠原病・アレルギー疾患(アレルギー)
9 血液疾患
10 腎泌尿器疾患
11 皮膚疾患
12 運動器疾患
13 女性外来
14 精神科疾患
15 小児科疾患
16 内科診療に必要な眼科の知識
17 内科診療に必要な耳鼻科の知識
18 在宅医療
19 一般外来での漢方治療
20 正常値,異常値とはなにか―検査基準値の新しいパラダイム
索引

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エキスパートとディスカッションしているような書
書評者: 伴 信太郎 (名大附属病院・総合診療医学)
 世の中に類書は少なくないが,本書は章・項目立てと著者選びに非常に工夫が凝らされた極めて実用的かつ格調の高い外来診療のガイドブックだといえる。

 まず,章・項目立ては「外来でみる症候からの診断学,治療原則」から始まって,感染症,循環器疾患,というように内科学書に似た章立てとなっているが,その項目内容は外来でよく遭遇する疾患に絞り込んだ簡にして要を得て,かつ実践的な記述となっている。さらには,家庭医的な診療にも役立つように,小児科,眼科,耳鼻科の他,在宅医療,漢方治療も含まれていて幅が広い。

 著者に関しては,24人が執筆しておられるが,誰一人として共著はない。これは十分な臨床能力・経験をもった人が,責任をもって執筆したということを意味している。実際,評者が個人的に知っている著者が何人かおられ,皆さん現場主義の臨床家であり,かつ臨床能力も高い人たちである。

 本書は,章立てからもわかるように,外来診療のテーブルに置いて鑑別診断を考えたり,処方薬を探したり,というタイプの本ではない。このような,とりあえずの対応は他の診断・治療マニュアルにまかせ,診療が終わってから少し時間がある時に該当する項目を読むと,その領域のエキスパートの医師とディスカッションをしているような雰囲気に浸れる。筆者は「原則として大学や大病院で第三次医療を十分に経験し,その後実際に一般外来診療を担当しておられる方々にお願いし」たという編集方針が真価を発揮している。

 本書は五十嵐正男先生と福井次矢先生という聖路加国際病院の師弟コンビによる編集であるが,五十嵐先生は現在開業して診療所にてご活躍しておられ,福井先生は長らく日本家庭医療学会や日本総合診療医学会などにおける活動を通じて実践的なジェネラリストとの交流が広い。こうした編集者であってはじめて格調が高く,かつ実践的でもある本書が生まれたと言えるだろう。外来診療を行うすべての人に薦めたい良書である。
外来診療で遭遇するコモンディジーズを網羅
書評者: 木戸 友幸 (木戸医院院長)
 一般外来を受け持つ医師,特にソロのプライマリ・ケア医として幅広い外来診療を行っている開業医に最適な参考書が出た。

 本書の最大の特徴は,使い勝手の良さである。各項目の始めにまず要約が述べられ,次いで疾患の特徴が要領よく示された後,診断,治療と続く。これらも程よい分量で診療中でも流し読みできる量である。そして最後に専門医に送るタイミングで締めくくっている。

 疾患としては,通常一般外来で遭遇することの多いコモンディジーズはすべて網羅されている。疾患単位の記載に加えて,症候からの診断学,在宅医療,漢方の基礎まで盛り込まれている。

 しかし,このすっと頭に入ってくる理解し易さはどこからくるのであろうか? 執筆者には聖路加国際病院人脈に加えて,その道の専門家として定評のある方々が集められている。それだけではなく,彼(彼女)らの多くはその専門に加えプライマリ・ケアも同時に行っていた(いる)医師のように見受けられる。要するにプライマリ・ケア医の気持ちの分かる医師が執筆していることがその理由の最大のものであろう。

 本書は500ページの分量があるが,執筆者は20人余りと少ない人数でまとめている。なぜなら執筆は疾患別ではなくて,感染症,循環器疾患というように系統別で同一執筆者が当たっているからである。このことで考え方に統一感が出せている。これも理解しやすい理由の一つであろう。

 外来診療の現場で,最新の情報を,簡潔に要領よく,プライマリ・ケアの心が分かる専門医からアドバイスされるのと同等の効果。本書の特徴を一言で説明するならこのようになろう。

 最後に私事で恐縮だが,執筆者のうちの何人かは,私の30年の臨床医人生のなかで,ある時期仕事を共にしたことのある人たちであり,その素晴らしい臨床能力や人柄までよく知っている。それだけに,本書を多くの皆さまに強く推薦したい。

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