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基礎から学ぶ楽しい疫学 第2版

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疫学研究の方法論、バイアスの問題、統計処理の方法などの疫学の基礎知識を、著者一流の切れ味鋭くユーモアに富んだ語り口で、懇切丁寧に解説。第2版では、個人情報保護法の施行を受け、「第11章 疫学と倫理」を大幅に書き改めた。
中村 好一
発行 2006年01月判型:A5頁:248
ISBN 978-4-260-00169-4
定価 3,300円 (本体3,000円+税)
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  • 目次
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第1章 疫学とは
 人間集団における健康状態の頻度測定
第2章 疾病頻度の測定
 1. 曝露と疾病
 2. 疫学指標
 3. 相対危険と寄与危険
第3章 既存のデータ
 疾病頻度に関するデータは目の前にある
第4章 疫学研究方法
 1. 記述疫学,生態学的研究,横断研究-まずは比較的簡単なものから
 2. コホート研究-疫学研究の中心となるもの
 3. 症例対照研究-もう1つの中心となるもの
 4. 介入研究-最も強力な研究デザイン
 5. では,どの研究方法を採用するのか?
第5章 偏りと交絡
 1. 偶然誤差と系統誤差-バイアス=真の姿を歪めるもの
 2. バイアスとその制御-(狭義の)バイアスは研究計画段階で制御すべし
 3. 交絡因子とその制御-交絡因子に配慮のない研究は,疫学研究ではない
 4. 標準化-直接法と間接法を使い分ける
第6章 因果関係
 疫学研究における最後の詰め
第7章 スクリーニング
 疫学の集大成
第8章 サーベイランスと疾病登録
 恒常的に実施されている疾病頻度調査
第9章 臨床疫学
 疫学の応用
第10章 疫学に必要な統計
 1. 標本抽出と標本サイズ-研究計画で最も重要な部分
 2. 推定と検定-検定よりは推定を
 3. 推定の実際-点推定値±1.96×標準誤差
 4. 多変量解析-強力な武器,しかし安易な利用は要注意
第11章 疫学と倫理
 避けて通ることのできない課題
第12章 疫学の社会への応用
 最後のステップ
索引

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「黄色本」と愛称される頭と体と心で学べる疫学テキスト
書評者: 山縣 然太朗 (山梨大学大学院医学工学総合研究部社会医学講座教授)
 「黄色本」。私の所属する講座ではこう呼んでいる本がある。疫学研究の第一人者,中村好一氏の『基礎から学ぶ楽しい疫学』である。その第2版が出版された。私たちの講座では毎朝8時から教員と大学院生とで輪読会を行っている。最新の疫学,公衆衛生の教科書を読むのである。英文の教科書が主であるが,「黄色本」の初版が出版されたころに,朝の輪読会で取り上げたところ,大変評判がよかった。その魅力は本書の3つの特徴による。

 1つ目はどんな「頭」でも学べるということである。本文が非常にやさしく,丁寧に記載されているので,誰もが基礎知識を必要とせずに学ぶことができる。私も医学部を卒業したばかりの時にこのような本があれば,もっと早く疫学を理解し,好きになっていたと思う。一方で,疫学的手法を用いた研究経験がある人も,目からウロコの記載を見つけることができるだろうし,今回の改訂の中心である疫学研究の倫理面での理解を深めることができる。

 2つ目は「体」を使って学べるという点である。疫学研究に必要な統計解析についてエクセルのワークシートを使用した計算式が記載されており,パソコンを使って実際のデータを解析することが可能である。頭だけでなく体(指)を動かした実習によって知識が定着する。

 3つ目は「心」に響く学習ができるという点である。この本で最も著者らしさが出ている部分は,随所に見られる著者注釈である。著者注釈を読むことによって,疫学研究に対する科学者としての厳しい目と同時に,著者の人間味あふれる疫学の「心」に触れることができ,無味乾燥な専門用語も生きた言葉に変身して,疫学の本当の楽しさを知ることができる。

 私は疫学者の一人として,疫学研究が健康課題を解決するための人を対象にした研究の最も基本的な科学的手法であることを多くの人が理解してほしいと願っている。そのために,まさに,タイトルどおりに楽しく疫学を基礎から学べる「黄色本」を活用することをお勧めする。

“難しい”先入観を一変 楽しむ疫学入門書
書評者: 児玉 和紀 (放射線影響研究所主席研究員・疫学部部長)
 中村教授の『基礎から学ぶ楽しい疫学』の第2版が出版された。初版と同様,疫学の初心者から中級者までがまさに楽しく学べる構成になっている。筆者も疫学の世界に身を投じて20数年になり,初心者からやや進歩したかなあといったところであるが,本書から学ぶところも実に多い。

 筆者はある大学の非常勤講師をしており,毎年15回の疫学の講義のほか,必要に応じて集中講義も行っているが,本書の初版は筆者の講義に大いに活用させていただいた。特に脚注のコメントは秀逸で,学生に疫学の魅力を伝えるのに非常に役立っている。おかげで,筆者が教えた学生たちは“疫学は計算式だけがやたら目立つ,とっつきにくい学問である”といった先入観から簡単に離脱し,“疫学は楽しい学問であり,人々の保健・医療・福祉に多大な貢献をしている基礎科学である”ことを理解してくれていると信じている。

 また,われわれが20年近く毎年開講してきている疫学の教育セミナー(日本循環器病予防セミナー)においても,本書は参考書として受講生に人気が高く,最近は受講生に課している演習である「疫学研究の企画案作成」においても,多くの受講生が本書を参考にして頑張っている姿が目立つようになっている。

 さて,疫学の世界で最近特に大きな問題となってきているものの1つは,言うまでもなく倫理問題である。この問題が非常に重要であることは誰もが認識していると思うが,内容を理解するのはなかなか楽ではない。筆者と同じように感じられている方も多いと思う。ところが,中村教授に法律の知識が豊富であることも関係してか,また日本疫学会で倫理問題を担当されていることもあってか,このなかなかわかりにくい問題が本書では実にスマートに解説されている。最近は倫理問題があまりに強調されるがために疫学研究が行われにくい状況も生じてきているが,本書を参考に倫理的側面に十分配慮しながら疫学研究を実施していきたいものである。

 最後に,本書の最終章は「疫学の社会への応用」になっている。筆者も疫学研究の結果が社会へ活用されることがないようでは疫学研究をやる意味は少ないと強く思っている。この点に関しての中村教授の慧眼にはまさに敬服の至りである。本書で疫学の基礎を楽しく学び,そして社会への応用の重要性を理解し,疫学研究を人々の保健・医療・福祉により役立てられるように,そして疫学を志す人が1人でも多く現れることを心より願っている。

社会情勢も盛り込んだ疫学入門書
書評者: 柳川 洋 (埼玉県立大学・学長)
 中村好一教授は大変忙しい先生である。国際疫学会,日本疫学会,日本公衆衛生学会,日本医事法学会,日本循環器管理研究協議会と5つの学会の理事を引き受けている。そのうえ日本疫学会が刊行する『Journal of Epidemiology』の編集委員長,日本公衆衛生学会が刊行する『日本公衆衛生雑誌』の編集担当理事と,2つの雑誌の編集に携わっている。また,大学内では,疫学倫理審査委員長や,低学年の学生指導の責任者なども担当していると伺っている。

 このような多忙の中で2002年に彼が刊行した『基礎から学ぶ楽しい疫学』の改訂版が発行された。疫学の入門書なので基本的な内容が古くなることはあまりないが,いくつかの重要な加筆修正が加えられている。例えば倫理問題については,個人情報保護法の施行や,国や日本疫学会の疫学倫理指針の公表など,初版刊行後に社会の情勢が大きく変化しており,この点については最新の情報が盛り込まれている。

 彼は「入門書は少数の執筆者(できれば単著)で作成するべきである」という思想を持っている。大人数で執筆すると,項目間の濃淡が出るから」というのがその理由の1つである。本書は確かに濃淡がない。疫学の入門書として必要かつ十分な記載がなされている一方で,著者の個性がこれほど出ている入門書も珍しい。

 第2版の前書きで,高校生まで読者層を拡大するという野心を表明しているが,確かに医学の知識がなくても読める本である。ちなみに彼は,雑誌連載中の元の文章が某大学の入学試験に採用されたことを,密かに誇りにしている。大学入試で採用されるということは,それなりの論理性が貫かれていることの証左といっても差し支えないだろう。

 初版の前書きにあるように,本書程度の理解があれば学部学生の疫学の講義において単位を与えてもいい,ということにも賛成である。わが国を代表する疫学者が執筆した入門書として,医学・保健・医療関係の学生はもとより,臨床医,保健行政関係者,さらには疫学をもう少し理解したい一般の人など,すべての人にお勧めしたい良書である。

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