カラーアトラス
網膜の遺伝病
遺伝子解析と臨床像

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遺伝性網膜疾患について,今日までに報告された原因遺伝子,ローカス,遺伝子変異が引き起こす臨床像について各染色体ごとに解説。また著者らの豊富な臨床例の集積を原因遺伝子ごとにまとめ,さまざまな病態を呈する臨床像をグラフィックに紹介した。遺伝子の突然変異に起因する疾患解明への大きな一歩となる,本邦初の眼科臨床遺伝学のモノグラフ。
和田 裕子 / 玉井 信
販売 医学書院
発行 2005年04月判型:A4頁:332
ISBN 978-4-260-70051-1
定価 22,000円 (本体20,000円+税)
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眼科臨床遺伝学における本邦初のモノグラフ
書評者: 三宅 養三 (国立病院機構東京医療センター・臨床研究センター長)
 1999年に私は『臨床眼科』の編集委員を務めていた。その頃東北大学の和田裕子先生と,同じく編集委員であった玉井信先生が臨床眼科誌の“連載”のコーナーに「目の遺伝病」という題で毎月1つの遺伝子異常を取り上げ,それにより生じる網膜疾患を1つ示し,その眼所見,眼機能をコンパクトにまとめ連載を開始された。私の興味も同じ分野にあるので,大変興味を持ってその経過を見守った。またこの作業を開始された和田,玉井両先生を大変うらやましく思ったのも事実である。というのは,内容の充実した報告が切れ目なく継続されるからである。私も実は自験例だけで,自分の思想や流れを入れた単著が書きたかったからである。その後,これは将来間違いなくすばらしい本としてまとめられるだろうとの期待と羨望を強く意識したのは2003年の頃であったように思う。私の予想をはるかに超えたロングランの連載の後,玉井教授の退官にちょうど時期をあわせるかのようにこの本邦初の眼科臨床遺伝学のモノグラフが出版された。

 まずアトラス形式のため,非常に読みやすい本である。さらに最先端の診断法であるOCTや多局所ERG等もカラーで視覚に訴える方法で取り入れており,次々にページをめくるのが楽しくなるのである。従来眼科遺伝病の教科書は最初に病気の解説があり,最後に遺伝子異常が分かっているものにはその解説が付記されるのが一般的であった。しかしこの本はまず遺伝子異常を先行させ,それに起因する網膜疾患を1つずつ見事に解説している。著者はこれを大変重要な示唆と意識しておられるに違いない。すなわち遺伝性網膜疾患は,遺伝子異常によってその診断が再編成されることを強調されているのであろう。同じ遺伝子異常でもこのように大きな表現型の差がみられる以上,まさにこれは正論であろうことがこの本を通読すると感じられる。さらにこの本の終わりには,Mutation Databaseとして,現時点での各遺伝子変異とその報告者が詳細にまとめられており,網膜の遺伝に関した情報はここにすべてが網羅されている感がある。

 日本人の遺伝病は欧米とは異なる点が多々あることは多くの証拠があるが,すべて日本人の自験例で,それも和田先生のオリジナルであるFSCN2と網膜色素変性の因果関係等々の新しい情報を多数含んだこの本は,まさに東北大学の「継続は力」を感じさせる名著である。

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