生活機能からみた
老年看護過程 第4版
+病態・生活機能関連図

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生活機能の視点から高齢者を捉え、“もてる力”を引き出すための方法とコツを解説。カルテが読める「目でみる疾患、症状、診断・検査値、合併しやすい症状、治療法」、ケアがみえる「情報収集・分析、アセスメントの視点、ケアプラン」、高齢者の全体像がみえる「病態・生活機能関連図と看護問題」で構成。ほしい情報が満載、実習記録に悩まないオールインワン!
シリーズ からみた看護過程
編集 山田 律子 / 内ヶ島 伸也
編集協力 秋下 雅弘
発行 2020年11月判型:A5頁:560
ISBN 978-4-260-04274-1
定価 4,070円 (本体3,700円+税)

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はじめに

 本書の初版は2008年9月に上梓されました.高齢者の尊厳を第一として,看護実践の質の向上を目指す有志たちが一丸となって執筆しました.本書には,私たちが当初から大切にしてきた2つの特長があります.
 1つ目は,「目標志向型・・・・・思考」によって看護を展開する点です.治療の場における看護学実習では,通常「看護問題」を取り上げ,治療可能な疾患からの早期回復に向けて問題を解決するように看護を展開します.いわゆる「問題解決型・・・・・思考」です.しかし,老年看護学実習で学生の皆さんが受け持つ高齢者の多くは,慢性疾患や障害をもちながら暮らしています.その場合には,高齢者がどのような生活を望んでいるかという「目標志向型思考」で看護を展開した方が望ましく,「看護問題・・」ではなく「看護の焦点・・」としています.このことを「転倒予防」を例に考えてみましょう.転倒により骨折すると高齢者の生活が一変するため,転倒予防は非常に重要です.しかし,転倒のリスクを「看護問題」として取り上げると,「安全を確保するためには行動制限をしなければならない」といった発想が生じます.この考え方は,高齢者の「いきいきとした活動」をかえって妨げることにつながりかねません.転倒予防策は具体策で立案しますが,「看護の焦点」には,高齢者の暮らしが豊かになるような目指すべき方向性を示した方が,本人をはじめ多職種間でも目標を共有でき,進むべき方向性も見失わずにすみます.
 2つ目の特長は,「生活行動モデル」を用いた点です.これは,筆者らの老年看護領域における実践経験をもとに開発したモデルであり,文字どおり「高齢者の生活」に焦点を合わせています.読者がモデルを理解し,実践に応用できるように,本書の第1編では「生活行動モデル」に基づいて,高齢者の生活をとらえるための視点について詳述しました.今回の改訂では,さらに第1編の生活行動の構成要素を見直し,「睡眠・休息」と「コミュニケーション」の構成要素を全面的に改訂するとともに,第2編とのつながりを円滑にするために第1編に「主な看護の焦点」を加えました.
 この第4版の改訂にあたっては,2022年度から導入される新カリキュラムを見据えて,高齢者が療養・生活する多様な場におけるシームレスな(切れ目のない)看護を多職種と協働しながら提供できるように,さらに根拠に基づく看護を「見える化」するために,具体策に小見出しをつけて「高齢者に対する何のための支援なのか」を表現しました.また,高齢者用の検査データ基準値への更新やMinds診療ガイドラインを踏まえて疾患名を修正しました.新カリキュラムでは,臨床判断能力に必要な基礎的能力を強化することも求められています.そこで第2編第1部では,老年医学の最前線で活躍されておられる秋下雅弘教授・東京大学大学院医学系研究科チームに,疾患ごとの病態生理,診断・治療等について,最新の知見を踏まえて内容を充実させていただきました.
 昨今の臨床動向をふまえて第2編の項目やコラムも刷新しました.特に第2編第1部では「口腔機能低下症」を追加して,高齢者歯科学を専門とする會田英紀教授に執筆いただき,第2部では「低栄養」を追加しました.また序章には,ポリファーマシー(多剤服用による有害事象)を含む「薬物治療を受ける高齢者のとらえ方」と,エンドオブライフ・ケアにも関わることができるように「人生の最終段階を見据えた高齢者のとらえ方と意思決定支援」を追加しました.
 高齢者人口の増加に伴い老年看護学実習も多様化している昨今ですが,個々の高齢者の価値観に沿って豊かな看護展開ができるように,今回の改訂にあたっては,さらに多くの老人看護専門看護師の方々に執筆者として加わっていただきました.
 以上のような第4版の改訂でありますが,皆さんが老年看護学実習を円滑に進めるうえでの拠り所として本書を活用してくださることは,筆者らにとって望外の喜びです.今後もお寄せいただいたご意見やご感想は,引き続き改訂の際に反映していく予定です.本書のさらなる改訂によって皆さんの学びが一層深まれば,実習場面で皆さんがお世話になる高齢者の方々への還元にもつながると考えているからです.
 第4版の刊行にあたり,多くの改訂事項に関して快くご協力いただきました執筆者の方々に対して,この場を借りて御礼を申し上げます.なかでも第4版を手に取る前に夭逝された上野澄恵氏には,心からの感謝とご冥福をお祈り申し上げます.上野氏が本書に遺してくださった数々の実践知は,読者によって今後も看護実践へと引き継がれていくものと信じております.最後になりましたが,いつも温かく励ましながら支えていただき,丁寧な編集・校正をいただきました医学書院の諸氏に深く感謝申し上げます.
 私たちの老年看護学にかける熱い思いを,本書を通して少しでも伝えることができたのであれば幸いです.

 2020年9月
 著者を代表して 山田律子

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はじめに
老年看護の展開における考え方
複数の疾患をもつ高齢者のとらえ方
薬物治療を受ける高齢者のとらえ方
手術を必要とする高齢者のとらえ方
人生の最終段階を見据えた高齢者のとらえ方と意思決定支援
本書の構成と使い方

第1編 生活行動情報の着眼点
   1 睡眠・休息
   2 覚醒・活動
   3 食事
   4 排泄
   5 身じたく
   6 コミュニケーション

第2編 病態からみた看護過程の展開
 第1部 疾患別看護過程の展開
  脳神経系疾患
   1 認知症
      高次脳機能障害
   2 パーキンソン病
      進行性核上性麻痺
      脊髄小脳変性症
   3 脳卒中(脳出血・脳梗塞・くも膜下出血)
  運動器系疾患
   4 大腿骨近位部骨折
      骨粗鬆症
      脊椎圧迫骨折
      変形性膝関節症
  呼吸器系疾患
   5 肺炎(誤嚥性肺炎)
   6 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  循環器系疾患
   7 心不全(慢性うっ血性心不全)
      不整脈
      閉塞性動脈硬化症
  代謝疾患
   8 糖尿病
  腎・泌尿器系疾患
   9 前立腺肥大症
      慢性腎臓病(CKD)
  皮膚疾患
   10 老人性皮膚瘙痒症(老人性乾皮症)
      帯状疱疹
   11 褥瘡
      スキンテア(皮膚裂傷)
      白癬
  眼疾患
   12 白内障
      緑内障
  感染症
   13 尿路感染症
  顎口腔系疾患
   14 口腔機能低下症

第2部 症状・機能障害別看護過程の展開
   15 摂食嚥下障害
      胃食道逆流症(逆流性食道炎)
      胃瘻のケア
   16 低栄養
   17 脱水
   18 浮腫
   19 排尿障害(尿失禁・排尿困難・頻尿・過活動膀胱)
   20 排便障害(便秘・下痢)
   21 睡眠障害
   22 言語障害(失語症・構音障害)
   23 老人性難聴
   24 痛み・しびれ
   25 抑うつ状態
   26 せん妄
   27 高血圧・低血圧
   28  フレイル(サルコペニア・廃用症候群)
   29 転倒

付録
 付表1 気をつけたい! 高齢者の治療薬と留意点リスト
 付表2 高齢者理解のための生活史年表
 付表3 唱歌と童謡

索引

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