認知症ハンドブック 第2版

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認知症にかかわる医療従事者が知っておきたい知識を網羅した決定版、7年ぶりの改訂。診断や薬物療法・非薬物療法、リハビリテーションやケアなど、臨床で必要となる情報を『認知症疾患診療ガイドライン2017』の内容に沿って解説。基礎研究に関する情報も臨床で役立つ内容を中心にアップデート。今回も「臨床のエンサイクロペディア」と呼ぶにふさわしい内容に仕上がっている。
編集 中島 健二 / 下濱 俊 / 冨本 秀和 / 三村 將 / 新井 哲明
発行 2020年11月判型:A5頁:946
ISBN 978-4-260-04166-9
定価 11,000円 (本体10,000円+税)

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 研究の進歩とともに,臨床現場における実際の認知症臨床の発展は目覚ましい.アルツハイマー型認知症治療薬として,1999年からドネペジルが使用可能であったが,2011年にガランタミン,リバスチグミン,メマンチンが認可され,4種類の薬剤が使用可能となって薬剤の変更や使い分けなども可能となった.さらに,認知症の病因・病態・原因蛋白などに関する基礎研究の進歩は大きく,画像検査・バイオマーカーなどの診断の発展や治療薬の開発研究も進められ,認知症医療が大きく変貌しようとしている.病理学的な疾患概念として注目されてきた嗜銀顆粒性認知症や神経原線維変化型老年期認知症なども,臨床段階での診断への努力も進められ,認知症の臨床はますます話題が広がっている.また,血管性危険因子管理の進歩などもあって,欧米では認知症発症率がすでに低下した可能性を指摘する報告もあり,わが国においても認知症発症抑制への取り組みが期待されている.
 増加する認知症者への対応と基礎・臨床の研究の発展を踏まえ,わが国では,2012年に「認知症施策推進5カ年計画(オレンジプラン)」が,そして2015年には「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」が策定され,行政の取り組みも進められてきている.医療制度のみならず,介護保険制度などによる介護領域の充実の検討も進められ,医療・介護などの連携による支援,認知症の予防・治療のための研究開発,認知症者にやさしい地域づくりを目指した取り組みも進められている.地域全体で認知症に向き合っていこうとの姿勢も重視されるようになってきているように思われる.一方,高齢者や認知症者の自動車運転免許に関する議論も進められ,地方における代替え交通手段などをはじめ多くの課題を抱えながら検討が進められてきている.これらの取り組みとともに,地域における認知症者の生活様式の変化も見受けられ,ますます認知症を取り巻く環境は変化している.
 このような基礎研究,臨床研究や臨床現場での診療・介護の発展,地域や行政の取り組みなどにより,認知症者を取り囲む環境や生活様式の変化などを踏まえ,臨床現場での診療支援に向けて認知症疾患に関する診療ガイドラインの改訂も進められ,2017年に改訂版が発行されている.一方,現場での診療に活用して頂くツールの一つとして,認知症臨床におけるエンサイクロペディアとして本書『認知症ハンドブック』が2013年に発刊された.その後の認知症の診療・介護の臨床現場での変化に対応し,現場で一層の活用を期待してこの『認知症ハンドブック』も改訂することになり,ここに第2版を発刊することになった.
 本書が認知症の臨床現場で活用され,認知症の診療や介護に役立てて頂くことにより認知症診療が一層発展していくことを期待する.

 2020年9月
 編者を代表して 中島健二

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第1章 認知症診療の基本
 進歩する認知症診療
 1 認知症とは?
 2 認知症領域で使用される用語の歴史的変遷
 3 認知症の医療経済分析

第2章 認知症の症状症候
 認知症の症候について
 1 中核症状(認知機能障害)
  A 記憶障害見当識障害
  B 失語失行失認
  C 視空間認知障害
  D 遂行機能障害
 2 BPSD
  A 幻覚妄想
  B 誤認妄想
  C 徘徊
  D 不穏興奮
  E 不眠,過眠,睡眠—覚醒リズムの異常
  F うつ状態アパシー
 3 せん妄

第3章 認知症の診断
 認知症診断のポイント
 1 診断の流れ
 2 問診
 3 評価尺度
 4 診察
  A 神経学的診察
  B 精神医学的診察
 5 鑑別診断
 6 画像診断
 7 その他各種検査

第4章 認知症の危険因子と予防
 認知症は予防できるのか
 1 認知症と危険因子との関係
  A 高血圧と認知症の関係
  B 糖尿病と認知症の関係
  C 脂質異常症と認知症の関係
  D 肥満やその他の生活習慣病と認知症の関係
  E 運動習慣と認知症の関係
  F 教育歴と認知症の関係
  G 食事,飲酒,喫煙,薬剤サプリメントと認知症の関係
  H 社会参加,余暇活動と認知症の関係

第5章 認知症の治療と管理
 1 認知症治療の基本的な姿勢流れ
 2 BPSDへの対応
  A 精神症状:幻覚妄想,不安焦燥
  B 精神症状:うつ症状とアパシー
  C 精神症状:睡眠障害
  D 行動障害:多動,興奮,暴力
  E 行動障害:徘徊,脱抑制
 3 せん妄への対応
 4 非薬物療法
  A 認知リハビリテーションのエビデンス
  B 現実見当識訓練法
  C 回想法
  D デイサービスデイケア
  E 音楽療法
  F 作業療法
  G 光療法
  H 家族への接し方,および本人への接し方(パーソンセンタードケア)

第6章 認知症の合併症管理と終末期の対応
 合併症の予防と対策終末期医療の基本
 1 高齢者における合併症の予防と対応
  A 脳血管障害
  B 摂食嚥下障害,誤嚥性肺炎
  C 失禁と便秘
  D 脱水症,浮腫
  E 運動障害,パーキンソニズム
  F 不随意運動
  G 痙攣発作
  H 転倒骨折と寝たきり
  I 低栄養と褥瘡
  J 周術期への対応
 2 終末期の対応と課題
  A 口腔健康管理
  B 胃瘻,経管栄養
  C 尊厳死

第7章 認知症をめぐるその他の諸問題,地域連携,支援
 認知症をめぐる諸問題について
 1 社会資源の活用(介護保険制度を中心に)
 2 地域連携のあり方(地域包括支援センターを中心に)
 3 在宅医療が果たすべき役割
  A 医療連携システム
  B かかりつけ医,サポート医
  C 認知症疾患医療センター
  D 身体合併症対策の医療連携
 4 介護負担と介護者支援:介護者への情報提供を中心に
 5 法律的諸問題
  A 車の運転
  B 刑事民事
  C 銃刀法

第8章 軽度認知障害
 軽度認知障害の臨床のポイント
  A 臨床で必要となる基本事項
  B 疫学
  C 臨床症状
  D 検査
  E 診断(鑑別診断)
  F 治療効果判定リハビリテーション
  G 経過予後
  H 患者家族看護師メディカルスタッフへの指導アドバイス

第9章 アルツハイマー型認知症
 アルツハイマー型認知症の臨床のポイント
  A 臨床で必要となる基本事項
  B 疫学
  C 臨床症状
  D 検査
  E 診断(鑑別診断)
  F 治療効果判定リハビリテーション
  G 経過予後
  H 患者家族看護師メディカルスタッフへの指導アドバイス

第10章 レヴィ小体型認知症(PDDも含む)
 レヴィ小体型認知症の臨床のポイント
  A 臨床で必要となる基本事項
  B 疫学
  C 臨床症状
  D 検査
  E 診断(鑑別診断)
  F 治療効果判定リハビリテーション
  G 経過予後
  H 患者家族看護師メディカルスタッフへの指導アドバイス

第11章 前頭側頭葉変性症とその他の変性性認知症疾患
 前頭側頭葉変性症の臨床のポイント
 1 前頭側頭葉変性症
  A 臨床で必要となる基本事項
  B 疫学
  C 臨床症状
  D 検査
  E 診断(鑑別診断)
  F 治療効果判定リハビリテーション
  G 経過予後
  H 患者家族看護師メディカルスタッフへの指導アドバイス
 進行性核上性麻痺の臨床のポイント
 2 進行性核上性麻痺
  A 臨床で必要となる基本事項
  B 疫学
  C 臨床症状
  D 検査
  E 診断(鑑別診断)
  F 治療効果判定リハビリテーション
  G 経過予後
  H 患者家族看護師メディカルスタッフへの指導アドバイス
 大脳皮質基底核変性症の臨床のポイント
 3 大脳皮質基底核変性症
  A 臨床で必要となる基本事項
  B 疫学
  C 臨床症状
  D 検査
  E 診断(鑑別診断)
  F 治療効果判定リハビリテーション
  G 経過予後
  H 患者家族看護師メディカルスタッフへの指導アドバイス
 4 嗜銀顆粒性認知症
 5 神経原線維変化型老年期認知症
 6 石灰沈着を伴うびまん性神経原線維変化病
 7 ハンチントン病
  A 概念
  B 臨床症状
  C 診断
  D 治療
  E 経過予後

第12章 血管性認知症
 血管性認知症の臨床のポイント
 1 概念と分類
 2 血管性認知障害
 3 混合型認知症
 4 白質病変
 5 微小脳内出血と認知症
 6 脳小血管病の概念
 7 血管性認知症の臨床症状
 8 血管性認知症の診断基準
 9 血管性認知症の画像診断と検査所見
 10 脳小血管病と遺伝子異常
 11 予防と治療

第13章 その他の認知症疾患
 1 内科疾患
 2 クロイツフェルト—ヤコブ病などプリオン病
 3 正常圧水頭症
 4 脳外科疾患に伴う認知症

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