学生・新人看護師の目の色が変わる
アイスブレイク30

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アイスブレイクとは“氷を解かす”のイメージでつくられた、集まった人の心を和ませ、お互いの垣根を外し、目的達成に向けて積極的に関わって行けるよう働きかける技術を指します。本書は看護教育の現場で活用できるアイスブレイクを30厳選し掲載。いつ、どんなとき、どんなアイスブレイクが有効か、そしてその具体的な運用方法をイラストと共に丁寧に解説します。読めばすぐに試したくなること請け合いです!
アイスブレイク30――著者インタビュー
内藤 知佐子 / 宮下 ルリ子 / 三科 志穂
発行 2019年10月判型:A5頁:120
ISBN 978-4-260-03938-3
定価 2,420円 (本体2,200円+税)

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はじめに

アイスブレイクの世界へようこそ
 皆さん、こんにちは。この本を手にとっていただき、ありがとうございます。
 近年、アクティブラーニングという言葉が流行り、学習者に対してどのように関われば主体的かつ対話的な深い学びに誘うことができるのか、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。現状の改善に向けてさまざまな取り組みをするものの、やらされ感たっぷりの学習者や、集中力が途切れてしまう学習者、他の教科の宿題をやり始める学習者を目の前にすると、指導者側のやる気も削がれてしまいますね。
 そんな現状を打開するためにおすすめしたいのが「アイスブレイク」です。アイスブレイクとは、簡単に解説するならば“準備体操”であり一緒に学ぼうという“雰囲気づくり”のための大切な時間です。授業や演習の冒頭、いわゆる「つかみ」の部分で活用します。アイスブレイクを通して、なんでも言い合える安心安全な場であることを認知してもらい、学ぶ意欲と教室の一体感を高めていきます。
 近年、この安心安全な場づくりが注目されています。Googleの研究によると、心理的安全性を高めることによって、チームのパフォーマンスと創造性が向上することがわかっています。そして、心理学には「Secure Base(安全基地)」という言葉があります。人間は、安心安全な場を感じて初めて外に向かって好奇心が向いていくそうです。皆さんにも、経験があるはずです。部署を異動したとき、施設が変わったとき、いわゆるAway感たっぷりのあの瞬間が、安全基地がない状態なのです。ご自身のパフォーマンスが一気に下がったことを体感されたと思います。目の前にいる学習者は、やる気がないのではなく、この安心安全な場であることが認知できていないために、外に向かって好奇心が向けられないだけかもしれません。
 私たちは、アイスブレイクは単なるウォーミングアップではなく、教育技法の1つだと捉えています。その目的は大きく3つです。
 ①自己開示を通して互いを理解し、緊張をほぐしていく。②ミニゲームやワークを通して、共に学ぶ仲間とチームビルディングを形成することを可能にする。そして、③これから学ぶテーマに触れることを通して課題を共有し、学ぶ態勢を整えていくことが期待できる、それがアイスブレイクなのです。
 1960年代にノールズ(M. S. Knowles)が提唱した成人学習理論のなかでも知られているように、“成人の学習者は、外発的動機よりも内発的動機に基づいている”といわれています。内発的動機とは、興味や関心など、学習者の内側にあるものによる動機づけです。学習者の主体性をあふれ出させるためには、いかに興味や関心をもってもらうか、そこが1つのカギとなります。知りたいと思えば、人は自然と能動的になることができます。その主体性をあふれ出させるしかけが、アイスブレイクなのです。
 本書では、社会人基礎力を意識して言葉を選び、3つのテーマ(主体性、チームワーク、思考力)に分けてアイスブレイクをまとめました。また各紹介には、推奨場面や適切な人数、所要時間や準備物品、推奨領域のほか、狙い・意図も明記し、すぐに活用できるようにしました。
 ぜひ、アイスブレイクに挑戦してみてください。学習者の可能性をあふれ出させ、目の輝きが変わる瞬間を一緒に楽しみましょう。

 2019年9月
 内藤知佐子・宮下ルリ子・三科志穂

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はじめに
Introduction なぜ、アイスブレイクがいいのか
 1 アイスブレイクってなに?
 2 なぜ「看護を教えること」にアイスブレイクがいいの?
 3 アイスブレイク実施のコツ
 4 力をあふれ出させる「ファシリテーター型指導者」のススメ

Chapter 1 主体性を引き出すアイスブレイク
 1 なりきりヒーローインタビュー 2人で会話を成立させるトレーニング
 2 あなたのこと教えます!(自己・他己紹介)
     数人で会話を継続させるトレーニング
 3 4コマ自己紹介 自分を相手に理解してもらうトレーニング
 4 共通点探しの旅 相手を理解するためのトレーニング
 5 一緒に座るよ!一緒にまわるよ! 他者と力を合わせることを体験する
 6 いろいろシールでグループになろう
     さまざまな種類のコミュニケーションを体験する
 7 「思い」「願い」を聞いて! 本音を引き出すトレーニング
 8 交渉ゲーム 互いが納得できる合意点を探すトレーニング
 9 誕生月はいつかなゲーム 表現力と観察力を養う
 10 コンビニでのお買い物、栄養バランスを考えたコンビニ食の選択
     根拠を論理的に説明するトレーニング

Chapter 2 チームワークを引き出すアイスブレイク
 11 アイテムで「ミッション」への姿勢を言語化しよう
     互いの価値観を尊重する力を養う①
 12 けんちゃんの大好物は? 根拠に基づき考える力を養う
 13 遅刻の理由、どこまで許せる? 互いの価値観を尊重する力を養う②
 14 遅刻時間、どこまで許せる? 医療職として守るべきことを知る
 15 何秒保てるかな? 身体をリラックスさせる
 16 新聞紙タワー チーム活動で大切なことを知る
 17 あなたたちの「きょうどう」は、どれ? 言葉を大切に扱うトレーニング
 18 私の夢(妄想)、語ります! 前向き思考で話す、聞くことのトレーニング
 19 「10」までカウントしてみよう 観察力を高めタイミングを見計らうトレーニング
 20 キャッチボールで医療安全 置き換えて考え、チーム力をUPするトレーニング

Chapter 3 思考力を引き出すアイスブレイク
 21 トリックアート写真で、見かたを変える! 意図的に見かたを変えるトレーニング
 22 知らないものは「見えない」 相手との違いを知るトレーニング
 23 写真を見て、分析しよう 自分の分析を言葉で伝えるトレーニング
 24 間違い探しゲーム 思い込みをなくすトレーニング
 25 本当に見えているかな? 1円玉を描いてみよう
     観察する習慣をつけるトレーニング
 26 オリジナルロゴマークをつくろう
     ミッション、目標、チームカラーを共有するトレーニング
 27 4つのキーワードからウソを見破れ! 情報を集め、統合するトレーニング
 28 BIGワードに注意 わかったつもりをなくすトレーニング
 29 楽しんで覚える医療略語(カタルタ®アレンジバージョン)
     遊び心でやる気を高める
 30 今年の漢字一文字 概念化する力を養う

アイスブレイク早見表
用語解説
著者紹介

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教える側も教わる側もやってみたいアイスブレイク実践教本(雑誌『保健師ジャーナル』より)
書評者: 伊藤 美樹子 (滋賀医科大学公衆衛生看護学講座)
 最近,新任期の保健師は,健康教育や資料を用いて説明するようなプレゼンが上手だという話を,とある研修会で耳にした。しかし一方で,所内の電話に出ることや家庭訪問には苦手意識があるようだとも。

 つまり,発信者として一方的に伝える技術はとても器用にこなせるのに対し,携帯電話と違って相手が分からない固定電話での応対や,訪問先で相手の話を「聴く」というような,双方向のコミュニケーションはうまくないようである。

 本書『アイスブレイク30』のchapter 1「主体性を引き出すアイスブレイク」を見てみよう。「2人で会話を成立させるトレーニング」「数人で会話を継続させるトレーニング」など10の技法が紹介されている。双方向コミュニケーションの技術の深化に役立ちそうだ。

 私が興味を持ったのは,chapter 3「思考力を引き出すアイスブレイク」にある「わかったつもりをなくすトレーニング」だ。二者のコミュニケーションの中に用いられる「大丈夫」「ちゃんとする」のような,具体的ではない概念や抽象度の高い言葉でのやりとりの問題に気付くことを意図したトレーニングである。新任期のみならず,指導する側にも気付きは大いにあるだろう。他に「根拠に基づき考える力を養う」「互いの価値観を尊重する力を養う」を取り上げた「チームワークを引き出すアイスブレイク」(chapter 2)など,計30のネタが紹介されている。

 著者らは,「『教える―教わる』という上下関係ではなく,(略)フラットな関係性があってこそ,学習者の主体性は引き出され」ると述べている(p.12)。面白そうだ,やりがいがありそうだ,できそうだ,やってよかった,やり続けたいという動機付けモデル(ARCS+Vモデル)も経験的にそうだろうと納得できる。また本の帯にある通り,「これは教育技法」なのである。いろいろと応用できそうだ。

 アイスブレイクでは「いかに自己開示ができるか」「自由に発想してもらうか」が重要であり,参加者全員にとって安全な(自由が脅かされない)場にすることが大事だとの解説もある(p.15)。私がアイスブレイクと呼んできたものには,睡魔に襲われて意識が遠のいた学生をやんわり目覚めさせたり,難しい内容が続いて集中力が途切れてきた聴衆を喚起するために,脈絡のない風景写真や愛犬の写真を提示したりするものもあるが,そうした間を持たすものとは区別して読んだ方が良い。

 本書はアイスブレイクの実践教本として,時間配分や投げかけの言葉まで具体的に紹介している。ただし,アイスブレイクをするファシリテーター側に成功を確約してはいない(それも好感が持てる)。うまくいかない場合にありがちなことや,次に生かすための対応策についても触れている。その点が重要だ。

 学生や新人看護師を想定して書かれているが,広く住民にも,そして保健師の技術向上にも一役買うであろう。

(『保健師ジャーナル』2020年2月号掲載)
学習者を安全基地に導くための必須スキル(雑誌『助産雑誌』より)
書評者: 渡辺 大地 (株式会社アイナロハ代表取締役/札幌市立大学看護学部非常勤講師)
 「今からグループの中で,1から10まで数えてもらいます。最初に“1”を言う人を決めますが,“2”以降は空気を読みながら誰かが一つずつカウントしていくことにします」

 これは,本書の中で紹介されているアイスブレイクの一つです。私は産婦人科や保健センターなどで両親学級のファシリテーターを仕事でさせてもらっているので,アイスブレイクには目がないのです。本書を拝読し,まず実践してみたのが冒頭で紹介した「“10”までカウントしてみよう」(p.74)というお題です。両親学級のオープニングで受講者をグループ分けした後,出題してみました。

 本書は看護師の授業やミーティングの際のアイスブレイク集ということですが,「緊張をほぐす」「集中力を高める」などのアイスブレイクの効果は,両親学級を受講するマタニティ夫婦にも共通して必要なものだと思います。実践の結果,反応は実にさまざまでした。空気を読むことがテーマのアイスブレイクですが,空気を全く読めずに滞るチームもあれば,空気を読み過ぎて一向に進まないグループ,何だか分からないけれど笑い声が絶えないグループ,いつまでたってもゴールするグループが出てこないものの,いずれもものすごく盛り上がって,一気に和やかな雰囲気になりました。

 マタニティ夫婦の妊娠や子育ての在り方が家族によって千差万別なのと同様,看護師一人一人の良さや成長の方法も十人十色で正解はありません。ですが,ファシリテーターが自分で思っているほど,学習の場は多様な人を受け入れる環境,つまり「安全基地」になっていないものです。これを言ったら変に思われるかな? こんな質問をしたら場違いかな? ――こんな気持ちのまま最後まで過ごさせてしまうようでは,ファシリテート失敗と言わざるを得ません。ファシリテートには慣れているから大丈夫,ではなく,慣れてきたからこそ新人の感覚・視点を見失わないために,アイスブレイクを取り入れてみよう,という気持ちが肝心です。

 でも,気負わなくて大丈夫ですよ。本書には,想像するだけでもワクワクするようなアイスブレイクがたくさん掲載されていますので,自分のファシリテートする場でこれをやったらどうなるだろう?と想像を巡らせながら,楽しんで取り入れてもらえたらと思います。

 「手元のノートに,1円玉のサイズと同じ丸を描いてみて。……ホントにそんなに大きい?」これだけでアイスブレイクに使えるんです。どうですか,やってみたくなってきたでしょう?

(『助産雑誌』2020年2月号掲載)
単なる「緊張ほぐし」ではなく「固定観念を揺さぶる」研修に(雑誌『訪問看護と介護』より)
書評者: 安保 寛明 (山形県立保健医療大学看護学科教授)
◆緊張を緩和させるアイスブレイク

 「学生・新人看護師の目の色が変わる」と副題がついた鮮明な青色の本が、私の書棚に加わりました。本の名前は『アイスブレイク30』。学生や看護師への教育を行っている3人の著者が紹介する参加者主体型学習活動集です。

 「アイスブレイク」には、緊張や警戒心を解きほぐすという意味合いがあります。例えばこの本では、「新聞紙タワー」「なりきりヒーローインタビュー」と名付けられたグループワークが紹介されていて、受講者同士の緊張を緩和させる効果があると思います。

 このように紹介すると、アイスブレイクは単なる緊張ほぐしのように思われるかもしれませんが、そうではありません。この本で著者たちは、看護師の専門性を高めるために、研修に参加者主体型の内容を組み込む必要があると言いたいのです。

◆詰め込みと命令による研修の限界

 質の低い院内研修や講義は、研修という名の命令・・を行う傾向にあります。この研修で言われた通りの方法で仕事をしろ、試験に出すから覚えろ、できなかったら上司に報告するぞ(単位を出さないぞ)、などの脅しが付き、学習者を萎縮させます。

 しかし、看護職者が専門職として位置付くには、知識の背景にある概念を理解することや、複数の判断や価値の存在を前提に優先順位を決められることといった、自律した判断力を持つことが重要で、主体性を喚起する必要があります。

 判断力を育成するために必要なことは、知識の獲得の他にいくつかあります。私は研修においてアイスブレイクなどの参加者主体型学習活動を多く行いますが、その理由は、先ほど紹介した緊張の緩和の他に、「固定観念と集団の関係性を揺さぶる」ことを目的としています。

◆固定概念を揺さぶる、参加者主体型学習

 この本では、自己紹介に関するアイスブレイクがいくつか紹介されています。例えば、自己紹介で「名前、所属、この季節に食べた美味しいもの、今年の楽しみな予定」を紹介してもらうと、後半の2つの話題で、自分と身近な人の意外な関心に気付きます。さらに、自己紹介で聞いたことを他己紹介として誰かに話すと、前向きに人を紹介する経験になります。

 多くの看護師は、患者の疾病に起因する問題点を解決するために仕事をしますから、申し送りなどでも患者の問題点を真っ先に話題にする習慣がつきがちです。しかし、前述のような他己紹介を経験すると、人をつなぐコミュニケーションでは、問題点ではなく関心を伝えることが有益で楽しいと再発見します。このように、看護師の習慣によって形成しやすい固定観念を揺さぶることを、参加者主体型の学習活動は提示するのです。

 私も、この青色の本を参考にして、次の研修の構成を考えるとしましょう。

(『訪問看護と介護』2020年2月号掲載)

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