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ワタナベダイチ式! 両親学級のつくり方

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両親学級を運営するのに必要な考え方、スキル、コツと、さまざまな施設での両親学級の取り組みを紹介。第1部では、両親学級で伝えるべき内容・集客の仕方・プログラムの組み方など、いかに満足度の高い学級を開催するかという知識をまとめ、第2部では全国の病院や助産院などに渡辺氏が赴き、両親学級の企画から実際の様子、学級のポイントをまとめている。「助産雑誌」で人気の連載が1冊に!
渡辺 大地
発行 2019年07月判型:A5頁:216
ISBN 978-4-260-03913-0
定価 2,640円 (本体2,400円+税)

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はじめに

 はじめまして。渡辺大地です。
 私は2011年に埼玉県所沢市で株式会社アイナロハを立ち上げ,翌年から「産後サポート『ままのわ』」という産前産後ヘルパー派遣サービスを開始しました。それと同時期に,所沢市内の産科クリニックで「パパニティ・クラス」という両親学級の講師を務めるようになり,2019年夏には初開催から7年になります。現在では,全国で年間100本ほどの両親学級とそれにまつわる講演,助産師会での研修や助産師養成課程を含む看護学部などでの授業も担当させていただけるようになりました。
 その中で多くの失敗もしましたし,失敗とまでいかなくともうまくできなくて落ち込むこともありました。何度やっても毎回が反省の連続です。それでも,ときどき,本当に稀にですが,「今回はうまくいったな!」と思うこともあります。
 そんなこれまでの経験を踏まえ,そして現状の課題も含め,両親学級運営をめぐる悪戦苦闘のあれこれを紹介していこうというのが本書です。

 本書の内容が連載として掲載された『助産雑誌』には,それ以前にも特集の執筆などをしていますが,2015年11月号の汐見稔幸先生(白梅学園大学学長)へのインタビュー記事「父親の育児参加をうながす『両親学級』とは」はとても好評でした。両親学級の世界で汐見先生は第一人者であり,未開の地を開拓された方です。そんな先生に,日本の両親学級の歴史から教えていただき,現状の課題を分析していただきました。
 その汐見先生に,インタビュー後に感謝のメールを送りました。そうしたら,お返事として,次頁のようなとても胸の熱くなるメッセージをくださいました。


(前略)
僕らは先に走っただけで,あなた方が本走者ですよ。
あなた方なりのやり方で楽しくやってください。
若い人っていいな,とそれだけでもうらやましいのですから。
ともかく応援しています。
がんばって!
汐見稔幸


 これは,私だけに向けられたものではなく,現場で両親学級に奮闘するすべての関係者への激励だと思えるのです。
 現場のニーズに合ったやり方で,楽しく,試行錯誤しながらチャレンジを続けることが両親学級のあり方であって,正解も不正解もないということですよね。このメッセージがどれだけの実践に裏づけられたものか,汐見先生の膨大なご著書を拝見すれば一目瞭然です。
 そうしたことを心に留めつつ,一方で,現場では日々助産師やスタッフたちが両親学級の運営に悪戦苦闘していることもわかっています。「現場のニーズに合った」という部分,「楽しい」という部分,行なうは難し,ですよね?
 本書は私の学級運営の経験談(第1部)と,全国のステキな学級のレポート(第2部)をまとめたものです。本書を通して,両親学級をつくりあげる喜びを感じてもらえたら,たいへん嬉しいです。

 2019年5月
 渡辺大地

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第1部 ワタナベダイチ式! 両親学級のつくり方
 第1章 両親学級で何を伝えるべきか
 第2章 両親学級で理想を語るか,現実を語るか
 第3章 両親学級を参加者全員でつくりあげる
 第4章 男性限定講座(父親学級)と夫婦同伴講座(両親学級)
 第5章 どうやって両親学級に集客するのか
 第6章 両親学級のためのちょっとした工夫
 第7章 産前クラスか,産後クラスか
 第8章 講師に向いている人とは
 第9章 両親学級に最適な人数は?
 第10章 考える沐浴指導
 第11章 改善のためのアンケート実施
 第12章 開催日程の検討とプレ開催のススメ
 第13章 自己紹介をするか,しないか
 第14章 意識が高い・低いとは,どういうことか?
 第15章 父親の自覚はいかに?
 両親学級のプログラムに関するQ&A

第2部 ワタナベダイチが行く! 全国・両親学級レポート
 第1章 現役パパがマタニティ夫婦の悩みを受け止める「パパランチ」!〈矢島助産院〉
 第2章 「産後劇」で産後をリアルにイメージ!〈埼玉県助産師会 朝霞地区〉
 第3章 夫婦でイメージトレーニング! 産後に特化した両親学級
       〈青葉レディースクリニック〉
 第4章 産後のメンタルヘルスに響け,男性小児科医師による父親学級!
       〈JA長野厚生連 佐久総合病院 佐久医療センター〉
 第5章 「お産の流れ」を学ぶ! 夫婦でお産をシミュレーションする両親学級
       〈小阪産病院〉
 第6章 受講者に合わせてプログラムを調整,1人ひとりに寄り添う両親学級!
       〈吉村医院〉
 第7章 乳児期以降の子育てを妊娠中に学ぶ! 男女双方に響く夫婦向け講座
       〈千葉県浦安市こども家庭支援センター〉
 第8章 「家族を作る」プログラム! 3段階で学ぶ両親学級〈赤川クリニック〉
 第9章 助産学生がつくる一度限りの両親学級!〈山口県立大学 別科助産専攻〉
 第10章 お産経験者にインタビュー,夫を巻き込む仕組みをつくった両親学級!
       〈愛産婦人科〉
 第11章 震災で中断した両親学級,「参加型」を強化して再スタート!
       〈黒川産婦人科医院〉
 第12章 全国に学ぶ! 両親学級成功の秘訣とは?
 第13章 両親学級の人材育成を考える

おわりに
さくいん

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対話でつながる両親学級を実践するための1冊(雑誌『助産雑誌』より)
書評者: 渡邉 由加利 (前札幌市立大学看護学部 准教授)
 これまで,両親学級の内容や運営について,「参加者のニーズに合っているのか,役に立てているのか,夫を巻き込んだ進行が難しい……」など,困り事をお持ちの方はもちろん,バージョンアップを目指しておられる方の一助となる1冊として,本書をご紹介させていただきます。また,「新型コロナウイルスの感染拡大防止のために,これまでとは違った運営や支援の方法を考える必要があっても,なかなか時間を作れず困っている」,そんな思いにある方にも,何らかのヒントにしていただけたらと思っています。

 著者の渡辺氏は,自身の体験で感じた産後の大変さをサポートできればと,産前産後の家族を支援する会社を設立し,産後サポート事業や医療機関・地域にて,累計1万人以上の夫婦を対象に,両親学級を開催されているほか,年間100本ほど講演をされています。本書『ワタナベダイチ式! 両親学級のつくり方』は,そんな渡辺氏の両親学級運営のエッセンスが詰め込まれています。両親学級は,子育てについて夫婦でどのように話したらよいか(夫婦の対話)を練習し,帰宅後の本番に向けた準備をする場です。活動を続ける中で明らかになってきた「どのように対話したら良いかが分からない夫婦が多く,対話の感覚とやり方を身に付けることが彼らの支援になる」との実感が彼の活動の軸となっています。

 本書には多くのポイントが紹介されていますが,ここでは,夫婦の話し合いを決定付けるともいえる「言葉の定義」を取り上げます。「言葉の定義」は,夫と妻に限らず,ファシリテーターや他の参加者間でも違いがあります。言葉の定義が違っている中での会話は,分かり合えないことへの寂しさ,悲しさが募り,それがいら立ちへと変化しやすくもあります。夫婦を支援する上で「言葉の定義の確認」がどれほどに重要であるか,いくつもの事例で紹介されており,「人により言葉の定義とはこれほどに違っているのか」と改めて実感することができます。

 その気持ちの変化が関係悪化の最大の要因であると考える渡辺氏の両親学級では,参加者の意見交換により,参加者おのおのの言葉の定義(本当に伝えたいこと)を明らかにし,その違いを発見していくプロセスに重点を置いています。ファシリテーターは,違いを認める,違っていて良い,違いからつながる,という体験となるよう対話を支援します。それは結果として,他者と気持ちを分かち合うことの安心感,他者理解への寛容さを高めることにつながり,正しく相手の言葉を理解し,夫婦で適切に問題を解決する力を高めることにもつながります。納得する形での問題解決は,相手への共感,2人に新しい一体感や家族意識,お互いが同じ方向で成長しているという満足感をもたらします1,2)

 また,渡辺氏は「両親学級のファシリテーター」を通訳者として捉えています。ファシリテーター自身が「言葉の定義」に敏感になること,自分自身の「言葉の定義」を知った上でファシリテートすることで,参加者にとって両親学級の場はより安心な場となり,本音が言える場になるのではないかと思います。

 参加者にとってこの体験は,困ったときに,夫婦だけ,もしくは1人でがんばるだけではなく,「自分には支援者がいる」ということに気付く機会ではないでしょうか。それぞれの思いはそれぞれであれ,支援者の思いが届く場の創造に本書が役立てばうれしく思います。

[参考文献]
1)ジェイ・ベルスキー,ジョン・ケリー:安次嶺桂子(訳):子供をもつと夫婦に何が起こるか.草思社,1995.
2)渡邉由加利:妊娠末期の「夫婦関係」の実態と関連要因の検討.SCU Journal of Design & Nursing,7(1):23-36,2013.

(『助産雑誌』2020年8月号掲載)

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