論文・レポートが変わる!
看護学生のための科学的作文レッスン
「インフルエンザが増加している。」――この文を、科学的に正しく直せますか?
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あなたは自分の論文・レポートの文章に自信がありますか? 「読み手に伝わらない文章」を書いてしまっていませんか? 大学で文章指導を行う著者が、とある看護学生の卒業論文を題材に、科学的文章の書き方をやさしく解説しました。「正しく伝わる文とは」「段落づくりの大原則」「論文に書くべきこと/書いてはいけないこと」など、看護学生が身につけたい論文・レポート執筆のための作文技術を、ぎゅっと盛り込んだ一冊です。
著 | 倉茂 好匡 |
---|---|
発行 | 2019年04月判型:B5頁:128 |
ISBN | 978-4-260-03852-2 |
定価 | 2,090円 (本体1,900円+税) |
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- 序文
- 目次
- 書評
序文
開く
はじめに─このテキストの学び方─
このテキストは、看護学を学ぶ学生さんたちがレポートや論文を執筆するときの作文法を学ぶためのものです。では、「レポートや論文で使用する作文技術」とは、一般的な作文の技術といったい何が異なるのでしょうか?
看護学のレポートや論文は、多くの場合、科学的作文の技法を用いて書かれます。そして科学的な作文では、次の2つが完全に守られなくてはいけません。
この2項目だけを示すと、「そんなのあたりまえじゃないか」と思われるでしょう。ところが、特に後者の「論理構造」という観点から見ると、看護学を学ぶ学生さんに限らず、最近の学生さんの書く文章にはおかしな文章が非常に多いのです。
「文章」は、いくつもの「文」で構成されています。ですから、科学的作文技法で書かれた文章を書くためには、それを構成している「文」が意味のはっきりした文になっていなくてはなりません。ところが、最近の学生さんが書く「文」を見てみると、それ自体に多くの問題を抱えているものが多いのです。一例を挙げてみましょう。
そこで、このテキストでは、まず第1講と第2講で、「意味のはっきりした文を書く方法」を学びます。そこでは、文の点検方法を具体的に解説しています。そのために、多くの例文を挙げ、それらを点検し、その後に改善例を示します。
それらをじっくり学んだのちに、そこに書かれた技法を用いて、あなたが実際に書いた「文」を点検してみてください。きっと多くの問題点が見つかるでしょう。そして、このテキストに書かれた「改善方法」に従って書き直しをしてみてください。この作業を行わない限り、あなたの「意味のはっきりした文」を書く技量は伸びません。一方、この作業を繰り返していけば、あなたの「意味のはっきりした文」を書く力は伸びていきますし、さきほどの「文」の問題点にも気づくことができるようになるはずです。
また、このテキストの第3講以降では、私(「倉茂先生」として登場)が当時看護学科4年生だったのり子さんに卒業論文の作文指導を行ったときの様子が書かれています。そこでは、前述した文の点検と改善のみならず、段落の作り方、段落間の論理の作り方、段落内の論理構成など、主に「論理的な文章」の作成方法について、具体的に学びます。多くの学生さんは、この「論理的な文章」を書くということに無頓着です。ですから、みなさんにとっては、初めて学ぶ内容に近い感覚を抱くことと思います。
そこで、のり子さんが書いた論文の第1段落について「指導前の文章」と、「指導後の文章」とを比較してみましょう。この両者を読んで、改善点を指摘できた人は、相当に作文力の高い人といってよいでしょう。
►指導前の文章
►指導後の文章
いかがでしょうか? おそらく「指導後の文章のほうが読みやすいなあ」と思われる方も多いと思います。その一方で、「指導前の文章のどこに問題点があるの?」と不思議に思っている方も多いのではないでしょうか。なぜならば「指導前の文章」は、一般的な学生が論文執筆第一段階で提出する文章と比較すると、相当によい出来ばえの文章だからです。しかし、ここには多くの問題が存在しています。
「指導前の文章」から「指導後の文章」へ書き直していくために、のり子さんは相当の時間をかけました。「倉茂先生」からの直接指導を何回も受けました。なぜなら、この書き直しには、さまざまな観点での作文上の修正を施しているためです。そして、その修正に必要な知識を、のり子さんは段階を追って修得していきました。相当に時間をかけて学習したおかげで、ここまで文章を改稿することができたのです。
そこでこのテキストでは、文章上の問題点を発見し、さらに修正していくプロセスを、のり子さんが書いてきた論文の「背景」の文章を使用しながら、段落の作り方、文の点検方法の実際、段落間の論理のチェック方法、段落内の論理のチェック方法の順に具体的に説明しました。そのうえで、実際にのり子さんに指導したときの実例をもとに、どのようにしたら文章を改善できるかを実感できるよう工夫しました。これだけで、第3講から第6講までの4講にわたっています。
ここでも、読者のみなさんは、単に読んでなるほどと感じるだけではなく、自分の文章と向き合い、のり子さんが修正していったのと同様のプロセスで自分の文章を修正してみてください。
第7講以降では、論文などの「目的と方法」「結果」「考察」の各文章をどのように作成していけばよいのかを解説しました。ここでも、のり子さんが実際に作成した文章をもとに指導しています。特に「結果」の記述方法および「考察」の記述方法には、「独特のルール」があります。そして、この独特のルールについては、残念ながら高等学校までの国語教育ではほとんど指導されていません。ですから、みなさんにとっては初めて学ぶ内容になると思います。
この各講を読んだら、ここでも必ず自分の書いた論文やレポートを手元に置き、のり子さんが指導を受けたことと同様の視点で自分の文章を点検してみてください。そのうえで、自分の文章を修正してみてください。
大学教員が大学生の文章を修正していくとき、教員がほぼすべてを書き直すに等しい修正をしなくてはならないことが多くあります。そして、学生は教員に指示されたとおりに修正します。しかし、指示されたとおりに書き直すだけでは、なかなか学生自身の作文力は向上していきません。私は、このことを残念に思いながらも、何年も指導を繰り返し、試行錯誤の末に、このテキストで解説している方法で学生の作文指導をするようになりました。そして、この方法で指導すれば、学生が着実に作文力をつけていくことを実感してきました。ですから、ただこのテキストを読むだけではなく、のり子さんが受けた指導内容をヒントにして、自分の文章を修正する努力をしてください。そうすれば、あなたの作文力は確実に上昇するでしょう。ぜひ、このテキストをあなたの文章改善に役立てていただきたいと思います。
2019年3月
倉茂好匡
このテキストは、看護学を学ぶ学生さんたちがレポートや論文を執筆するときの作文法を学ぶためのものです。では、「レポートや論文で使用する作文技術」とは、一般的な作文の技術といったい何が異なるのでしょうか?
看護学のレポートや論文は、多くの場合、科学的作文の技法を用いて書かれます。そして科学的な作文では、次の2つが完全に守られなくてはいけません。
・ | 誰がどのように読んでも、一通りの意味にしか読み取ることができない。 |
・ | 段落間でも段落内でも、その論理構造が明確になっている。 |
「文章」は、いくつもの「文」で構成されています。ですから、科学的作文技法で書かれた文章を書くためには、それを構成している「文」が意味のはっきりした文になっていなくてはなりません。ところが、最近の学生さんが書く「文」を見てみると、それ自体に多くの問題を抱えているものが多いのです。一例を挙げてみましょう。
例 看護学生は、看護教員から受ける影響が大きい。
一般社会では、この種の表現はしばしば見られます。新聞紙上などでも頻出する表現です。しかし「意味のはっきりした文」という観点から見ると、この「文」には非常に多くの問題があります。そして、このテキストを学び始めたみなさんが、現時点でこの問題点を的確に指摘することは難しいのではないでしょうか。そこで、このテキストでは、まず第1講と第2講で、「意味のはっきりした文を書く方法」を学びます。そこでは、文の点検方法を具体的に解説しています。そのために、多くの例文を挙げ、それらを点検し、その後に改善例を示します。
それらをじっくり学んだのちに、そこに書かれた技法を用いて、あなたが実際に書いた「文」を点検してみてください。きっと多くの問題点が見つかるでしょう。そして、このテキストに書かれた「改善方法」に従って書き直しをしてみてください。この作業を行わない限り、あなたの「意味のはっきりした文」を書く技量は伸びません。一方、この作業を繰り返していけば、あなたの「意味のはっきりした文」を書く力は伸びていきますし、さきほどの「文」の問題点にも気づくことができるようになるはずです。
また、このテキストの第3講以降では、私(「倉茂先生」として登場)が当時看護学科4年生だったのり子さんに卒業論文の作文指導を行ったときの様子が書かれています。そこでは、前述した文の点検と改善のみならず、段落の作り方、段落間の論理の作り方、段落内の論理構成など、主に「論理的な文章」の作成方法について、具体的に学びます。多くの学生さんは、この「論理的な文章」を書くということに無頓着です。ですから、みなさんにとっては、初めて学ぶ内容に近い感覚を抱くことと思います。
そこで、のり子さんが書いた論文の第1段落について「指導前の文章」と、「指導後の文章」とを比較してみましょう。この両者を読んで、改善点を指摘できた人は、相当に作文力の高い人といってよいでしょう。
►指導前の文章
厚生労働省はがん検診推進事業として2009年より20歳、25歳、30歳、35歳、40歳の女性を対象に検診無料クーポン券の配布を実施し、受診率の向上を図っている。しかし、厚生労働省が実施した国民生活基礎調査の報告によると、2010年の日本の子宮頸がん検診受診率は20~24歳では10.2%、25~29歳では24.2%である。受診率が70~80%を維持するOECD(Organization for Economic Cooperation andDevelopment、以下OECDと略す)諸国に比較して日本の子宮頸がん検診受診率は著しく低い結果となっている。
►指導後の文章
日本では近年、20歳代女性の子宮頸がん罹患数が増加している。1992年の20歳代の子宮頸がん推定罹患数は225人だったが(地域がん登録全国推計値、1992)、2012年の同罹患数は488人だった(地域がん登録全国推計値、2012)。このように、20歳代の子宮頸がん推定罹患数は20年で2倍以上になった。一方、女性全体のデータでは、1992年の子宮頸がん推定罹患数は7,843人(地域がん登録全国推計値、1992)、2012年には10,908人(地域がん登録全国推計値、2012)であった。女性全体では20年で子宮頸がん推定罹患数が1.4倍になったことと比較しても、20歳代女性の罹患数増加率が大きいことがわかる。
いかがでしょうか? おそらく「指導後の文章のほうが読みやすいなあ」と思われる方も多いと思います。その一方で、「指導前の文章のどこに問題点があるの?」と不思議に思っている方も多いのではないでしょうか。なぜならば「指導前の文章」は、一般的な学生が論文執筆第一段階で提出する文章と比較すると、相当によい出来ばえの文章だからです。しかし、ここには多くの問題が存在しています。
「指導前の文章」から「指導後の文章」へ書き直していくために、のり子さんは相当の時間をかけました。「倉茂先生」からの直接指導を何回も受けました。なぜなら、この書き直しには、さまざまな観点での作文上の修正を施しているためです。そして、その修正に必要な知識を、のり子さんは段階を追って修得していきました。相当に時間をかけて学習したおかげで、ここまで文章を改稿することができたのです。
そこでこのテキストでは、文章上の問題点を発見し、さらに修正していくプロセスを、のり子さんが書いてきた論文の「背景」の文章を使用しながら、段落の作り方、文の点検方法の実際、段落間の論理のチェック方法、段落内の論理のチェック方法の順に具体的に説明しました。そのうえで、実際にのり子さんに指導したときの実例をもとに、どのようにしたら文章を改善できるかを実感できるよう工夫しました。これだけで、第3講から第6講までの4講にわたっています。
ここでも、読者のみなさんは、単に読んでなるほどと感じるだけではなく、自分の文章と向き合い、のり子さんが修正していったのと同様のプロセスで自分の文章を修正してみてください。
第7講以降では、論文などの「目的と方法」「結果」「考察」の各文章をどのように作成していけばよいのかを解説しました。ここでも、のり子さんが実際に作成した文章をもとに指導しています。特に「結果」の記述方法および「考察」の記述方法には、「独特のルール」があります。そして、この独特のルールについては、残念ながら高等学校までの国語教育ではほとんど指導されていません。ですから、みなさんにとっては初めて学ぶ内容になると思います。
この各講を読んだら、ここでも必ず自分の書いた論文やレポートを手元に置き、のり子さんが指導を受けたことと同様の視点で自分の文章を点検してみてください。そのうえで、自分の文章を修正してみてください。
大学教員が大学生の文章を修正していくとき、教員がほぼすべてを書き直すに等しい修正をしなくてはならないことが多くあります。そして、学生は教員に指示されたとおりに修正します。しかし、指示されたとおりに書き直すだけでは、なかなか学生自身の作文力は向上していきません。私は、このことを残念に思いながらも、何年も指導を繰り返し、試行錯誤の末に、このテキストで解説している方法で学生の作文指導をするようになりました。そして、この方法で指導すれば、学生が着実に作文力をつけていくことを実感してきました。ですから、ただこのテキストを読むだけではなく、のり子さんが受けた指導内容をヒントにして、自分の文章を修正する努力をしてください。そうすれば、あなたの作文力は確実に上昇するでしょう。ぜひ、このテキストをあなたの文章改善に役立てていただきたいと思います。
2019年3月
倉茂好匡
目次
開く
はじめに─このテキストの学び方─
第1章 文の基本 意味がはっきりした文を作りましょう
第1講 まず「文」の形を決めましょう
「文」とは何か、復習しましょう
主語と述語を見つけましょう
補助語と被補助語の関係に注意しましょう
主語が省略されているときの原則を覚えましょう
文の種類について学びましょう
一文ずつの点検をしましょう
・練習問題
第2講 「文」の意味をはっきりさせましょう
主語と述語の関係をはっきりさせましょう
・練習問題
修飾関係をはっきりとさせましょう
・練習問題
その単語の使い方は適切ですか?
・練習問題
第2章 文章の組み立て 段落を整えて読みやすい文章にしましょう
第3講 「段落の作り方」を学びましょう
次の文章の問題点を指摘できますか?
段落の大原則を学びましょう
段落の話題を点検しましょう─1つの話題で統一されていますか?─
段落作りの基本を理解しましょう
自分ではわかっているのに読者には伝わらない
─しばしばはまる落とし穴─
不足している話題を見つけて段落を作りましょう
第4講 段落内のすべての文を点検しましょう
「文」レベルの問題点に気づきますか?
まず段落構成の再チェックをしましょう
冒頭の文を点検してみましょう
一文ずつの点検をさらに続けましょう
単純化した文の修飾関係をすべて点検しましょう
すべての文をチェックしましょう
第5講 「段落間の論理」と「段落内の論理」の両者を点検しましょう
次の文章には「段落間の論理」に問題があることに気づきますか?
「段落間の論理」の点検方法の基礎を学びましょう
実際に「段落間の論理」をチェックしてみましょう
「段落間の論理」の総点検をしてみましょう
段落の基本的構造を理解しましょう
「視点ブレのある段落」を見抜きましょう
「視点ブレのある段落」を修正してみましょう
どの段落を修正すべきかを見抜きましょう
第6講 「段落間の論理」と「段落内の論理」の両者を再点検しましょう
次の文章に残っている問題点に気づきますか?
「段落間の論理」を最終チェックしましょう
問題のある「段落間の論理」を修正しましょう
─プロの知識が必要な場合─
ほかの「段落間の論理」も点検しましょう
わかりにくい文を修正しましょう
─自分勝手な表現はありませんか?─
その人特有のエラーに注意しましょう
重大な論理エラーに気がつきましたか?
─推敲をしっかりしないと─
細かいエラーも見落とさないようにしましょう
第3章 論文の作法 「書くべきこと」と「書いてはいけないこと」を判断しましょう
第7講 「目的」と「方法」の書き方を学びましょう
「目的」の文章のもつ問題に気づきますか?
「方法」の文章も点検してみましょう
第8講 「結果」の記述方法を学びましょう
「結果」の記述内容にある問題点に気づきますか?
「結果の記述の基本原則」を学びましょう
「結果の記述の基本原則」に則ってチェックしましょう
Column 統計検定結果における有意差の示し方
第9講 「考察」の記述方法を学びましょう
次の文章の問題点に気づきますか?
看護分野特有のエラーなのでしょうか?─「思い込み」は危険です─
結果にもとづいた考察を書きましょう
意味のある論理展開をしましょう
研究デザインへの反省点が見つかったとき
あとがき
索引
第1章 文の基本 意味がはっきりした文を作りましょう
第1講 まず「文」の形を決めましょう
「文」とは何か、復習しましょう
主語と述語を見つけましょう
補助語と被補助語の関係に注意しましょう
主語が省略されているときの原則を覚えましょう
文の種類について学びましょう
一文ずつの点検をしましょう
・練習問題
第2講 「文」の意味をはっきりさせましょう
主語と述語の関係をはっきりさせましょう
・練習問題
修飾関係をはっきりとさせましょう
・練習問題
その単語の使い方は適切ですか?
・練習問題
第2章 文章の組み立て 段落を整えて読みやすい文章にしましょう
第3講 「段落の作り方」を学びましょう
次の文章の問題点を指摘できますか?
段落の大原則を学びましょう
段落の話題を点検しましょう─1つの話題で統一されていますか?─
段落作りの基本を理解しましょう
自分ではわかっているのに読者には伝わらない
─しばしばはまる落とし穴─
不足している話題を見つけて段落を作りましょう
第4講 段落内のすべての文を点検しましょう
「文」レベルの問題点に気づきますか?
まず段落構成の再チェックをしましょう
冒頭の文を点検してみましょう
一文ずつの点検をさらに続けましょう
単純化した文の修飾関係をすべて点検しましょう
すべての文をチェックしましょう
第5講 「段落間の論理」と「段落内の論理」の両者を点検しましょう
次の文章には「段落間の論理」に問題があることに気づきますか?
「段落間の論理」の点検方法の基礎を学びましょう
実際に「段落間の論理」をチェックしてみましょう
「段落間の論理」の総点検をしてみましょう
段落の基本的構造を理解しましょう
「視点ブレのある段落」を見抜きましょう
「視点ブレのある段落」を修正してみましょう
どの段落を修正すべきかを見抜きましょう
第6講 「段落間の論理」と「段落内の論理」の両者を再点検しましょう
次の文章に残っている問題点に気づきますか?
「段落間の論理」を最終チェックしましょう
問題のある「段落間の論理」を修正しましょう
─プロの知識が必要な場合─
ほかの「段落間の論理」も点検しましょう
わかりにくい文を修正しましょう
─自分勝手な表現はありませんか?─
その人特有のエラーに注意しましょう
重大な論理エラーに気がつきましたか?
─推敲をしっかりしないと─
細かいエラーも見落とさないようにしましょう
第3章 論文の作法 「書くべきこと」と「書いてはいけないこと」を判断しましょう
第7講 「目的」と「方法」の書き方を学びましょう
「目的」の文章のもつ問題に気づきますか?
「方法」の文章も点検してみましょう
第8講 「結果」の記述方法を学びましょう
「結果」の記述内容にある問題点に気づきますか?
「結果の記述の基本原則」を学びましょう
「結果の記述の基本原則」に則ってチェックしましょう
Column 統計検定結果における有意差の示し方
第9講 「考察」の記述方法を学びましょう
次の文章の問題点に気づきますか?
看護分野特有のエラーなのでしょうか?─「思い込み」は危険です─
結果にもとづいた考察を書きましょう
意味のある論理展開をしましょう
研究デザインへの反省点が見つかったとき
あとがき
索引
書評
開く
学生への論文作成指導を振り返るきっかけともなる一冊(雑誌『看護教育』より)
書評者: 藤井 徹也 (豊橋創造大学保健医療学部看護学科教授)
専門職を目指す看護学生にとって、科学的な文章を書けるようにトレーニングすることは、大切なことです。しかし、高等学校までの国語では科学的作文の作成に関してほとんど指導されることはなく、看護学生は、基礎教育課程でレポート課題や卒業研究などの論文作成をとおして、その書き方を学びます。本書は、その手助けになる1冊です。
第1章では、文章の書き方の基本が紹介されています。小・中学校で学ぶ「『文』とは、なにか」から始まり、「。(句点)」「、(読点)」の説明、「主語」「述語」の確認の仕方、さらに、「補助語」「助詞」「連用修飾語」「連体修飾語」などの活用方法が示されています。シンプルな例題を用いて説明されており、学生にはとても理解しやすい内容です。たとえば、日常的に目にする「風疹の流行が広がっている」という表現は、厳密には「風疹の患者数が増加している」とすべきである、などの例題が取り上げられています。
また、わかりやすい文にするために「文の構造を調べ、単純な構造の文に直す」ことが紹介されており、その視点で、自分の書いた文・文章を読み返すことの大切さを指摘しています。「文・文章の読み返し」については、教員も日ごろから学生に指導していることだと思います。しかし、読み返しの視点やその方法まで含めて指導しているでしょうか? そうした気づきを与えてくれる本書を、教員も一読すべきと考えます。
第2章では、段落のつくり方が紹介されています。著者が実際に指導した学生の論文を例に取り、その文章の問題点と改善点について順を追って説明しています。学生にとっては、同じ立場である学生が書いた文章を題材としているため、身近で理解しやすいと考えます。
第3章は、第2章で取り上げた論文の「目的」「方法」「結果」「考察」の記述方法を説明しています。第2章同様に、冒頭で問題点を示し、改善策とその理由をていねいに説明しています。特に、「結果」で図表を用いる際の文章の書き方の解説は必見です。
小生は、本書の「はじめに」を読み始めて数行で、これまでの論文作成指導が適切であったか、と自らを振り返りました。そこには、科学的な作文で必要なのは「誰がどのように読んでも、一通りの意味にしか読み取ることができない」こと、と述べられています(p.iii)。これまでの指導は研究内容に主眼を置き、「主語」「述語」の使い方などの細かな指導まではできていなかった、と反省しました。
本書には、文章作成指導のよりよい方法を学べるだけでなく、教員自身が日ごろから適切な文章を作成できているかどうかを振り返るのに最適な内容が満載です。学生のみならず、教員自身の学びなおしにもお薦めしたい一冊です。
(『看護教育』2019年7月号掲載)
書評者: 藤井 徹也 (豊橋創造大学保健医療学部看護学科教授)
専門職を目指す看護学生にとって、科学的な文章を書けるようにトレーニングすることは、大切なことです。しかし、高等学校までの国語では科学的作文の作成に関してほとんど指導されることはなく、看護学生は、基礎教育課程でレポート課題や卒業研究などの論文作成をとおして、その書き方を学びます。本書は、その手助けになる1冊です。
第1章では、文章の書き方の基本が紹介されています。小・中学校で学ぶ「『文』とは、なにか」から始まり、「。(句点)」「、(読点)」の説明、「主語」「述語」の確認の仕方、さらに、「補助語」「助詞」「連用修飾語」「連体修飾語」などの活用方法が示されています。シンプルな例題を用いて説明されており、学生にはとても理解しやすい内容です。たとえば、日常的に目にする「風疹の流行が広がっている」という表現は、厳密には「風疹の患者数が増加している」とすべきである、などの例題が取り上げられています。
また、わかりやすい文にするために「文の構造を調べ、単純な構造の文に直す」ことが紹介されており、その視点で、自分の書いた文・文章を読み返すことの大切さを指摘しています。「文・文章の読み返し」については、教員も日ごろから学生に指導していることだと思います。しかし、読み返しの視点やその方法まで含めて指導しているでしょうか? そうした気づきを与えてくれる本書を、教員も一読すべきと考えます。
第2章では、段落のつくり方が紹介されています。著者が実際に指導した学生の論文を例に取り、その文章の問題点と改善点について順を追って説明しています。学生にとっては、同じ立場である学生が書いた文章を題材としているため、身近で理解しやすいと考えます。
第3章は、第2章で取り上げた論文の「目的」「方法」「結果」「考察」の記述方法を説明しています。第2章同様に、冒頭で問題点を示し、改善策とその理由をていねいに説明しています。特に、「結果」で図表を用いる際の文章の書き方の解説は必見です。
小生は、本書の「はじめに」を読み始めて数行で、これまでの論文作成指導が適切であったか、と自らを振り返りました。そこには、科学的な作文で必要なのは「誰がどのように読んでも、一通りの意味にしか読み取ることができない」こと、と述べられています(p.iii)。これまでの指導は研究内容に主眼を置き、「主語」「述語」の使い方などの細かな指導まではできていなかった、と反省しました。
本書には、文章作成指導のよりよい方法を学べるだけでなく、教員自身が日ごろから適切な文章を作成できているかどうかを振り返るのに最適な内容が満載です。学生のみならず、教員自身の学びなおしにもお薦めしたい一冊です。
(『看護教育』2019年7月号掲載)