今日の小児治療指針 第17版

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日常的な疾患から在宅医療、子ども虐待まで、小児に関わるすべての領域に対し、第一線のエキスパートが実践的な治療方針を具体的に解説。今版では、近年注目が高まり問題視されている「子ども虐待と小児科医の役割」の章を新設。また、小児に関するガイドライン一覧や役立つウェブサイトの情報など付録資料もより充実している。小児科医はもちろん、小児診療に携わる人必携の1冊。

シリーズ 今日の治療指針
総編集 水口 雅 / 市橋 光 / 崎山 弘 / 伊藤 秀一
発行 2020年12月判型:A5頁:1010
ISBN 978-4-260-03946-8
定価 17,600円 (本体16,000円+税)

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    2021.03.04

  • 序文
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第17版序

 「今日の小児治療指針」の改訂版が完成し,第17版として皆さまにお届けする運びとなりました.1970年(昭和45年)に初版を発行して以来,半世紀の長きにわたって,本書は小児の医療・保健にかかわる多くの先生方にご購読いただいてまいりました.過去50年間に日本の子どもの生活と環境は大きく変化し,小児の医学・医療は著しく進歩しました.本書はこの間,版を重ねるごとに,とりあげる項目や章の編成,執筆者の陣容を更新し続け,実地の診療に沿ったアップデートを重ねることにより,さまざまな変化や進歩に対応してきました.今回の改訂では,旧版(16版)を担当した水口,市橋,崎山とともに伊藤が新たに総編集者として加わり,改訂を進めました.
 本書は28の章から構成され,716項目について各領域の第一線で活躍中の687名のエキスパートに,現時点における最も適確な治療法のエッセンスを書き下ろしていただきました.今回の改訂におけるポイントとして,近年における子ども虐待の問題の重要性に鑑みて,前版までは複数の章に分かれていた虐待に関する項目を,この版ではひとつにまとめて,新たな章「子ども虐待と小児科医の役割」として記載いたしました.また資料として,「小児科に関するガイドライン一覧」,「新生児マススクリーニング対象疾患一覧」および「小児科医に有用なウェブサイトURL一覧」を新たに加えました.
 時代が昭和(1926〜1989),平成(1989〜2019)から令和(2019〜)へと遷り,新型コロナウイルスSARS-CoV-2の流行で子どもの生活・医療も脅かされつつある今,50年に渡る伝統をふまえつつ内容を刷新した本書が,これまでにも増して多くの先生方にご利用いただき,令和の子どもたち相手の医療・保健の場で活用されることを心より願っております.

 2020年11月
 水口雅
 市橋光
 崎山弘
 伊藤秀一

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1 救急医療
2 治療手技
3 小児診療にあたって
4 新生児疾患
5 染色体異常,奇形症候群
6 先天代謝異常
7 内分泌疾患
8 代謝性疾患,栄養障害
9 リウマチ,膠原病,免疫不全
10 アレルギー疾患
11 感染症
12 呼吸器疾患,胸部疾患
13 消化器疾患,肝疾患
14 循環器疾患
15 血液腫瘍疾患・凝固異常
16 腎・泌尿器疾患
17 婦人科疾患
18 神経・筋疾患
19 精神疾患,心身医学的問題,発達障害
20 小児保健
21 学校保健
22 運動器疾患
23 皮膚疾患
24 眼疾患
25 耳鼻咽喉疾患
26 小児歯科・口腔外科疾患
27 小児在宅医療
28 子ども虐待と小児科医の役割

付録1 小児薬剤投与法の原則
付録2 脳死判定と脳死下臓器提供

薬品名索引
和文索引
欧文索引

資料一覧
 在胎期間別出生体重・身長・頭囲標準値
 在胎期間別出生体重・身長・頭囲標準曲線
 身長・体重・胸囲・頭囲のパーセンタイル値
 乳幼児身長・体重発育パーセンタイル曲線
 標準身長・体重表
 標準成長曲線
 体重・身長から体表面積を算出するノモグラム
 学校保健安全法施行規則における感染症の種類
 小児科に関するガイドライン一覧(Minds認定されたもの)
 新生児マススクリーニング対象疾患一覧
 小児科医に有用なウェブサイトURL一覧
 学校生活管理指導表(小学生用,中学・高校生用)

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小児科医の実践書としてのバイブル
書評者:衞藤 義勝(脳神経疾患研究所先端医療研究センター長/慈恵会医大名誉教授)

 『今日の小児治療指針 第17版』が出版された。丁度今回は1970年初版から50年の節目の年で,まさに半世紀小児科医の治療指針のバイブルとして,今まで多くの小児の診療に携わってきた研修医から実地小児科医,小児を診る他科医,病院医師まで広く利用され,現場の医療ではなくてはならない医学書であることは自明の理である。

 第17版では全28章716項目を専門分野のエキスパートの先生方が最新の知識を要点を含め執筆しており,持ちやすいA5サイズで出版された。各28章の項目内1~3章の項目は救急医療,治療手技,小児診療に当たっての総論的な項目であり,いずれも小児科医としての基本的な考え,手技,具体的な臨床現場での対応など要領よく記載され,大変役立つ項目である。4章は新生児疾患の栄養管理,ケア,薬物療法,輸液,輸血,交換輸血,人工喚起法,採血法,未熟児管理など新生児,未熟児の基本管理など具体的に記載され,新生児疾患の各論も含め現場での知識が整理できる。5~8章は先天異常,先天性代謝異常症,内分泌疾患,栄養代謝疾患の最新の治療法を含め要領よくまとめられている。9~10章はリウマチ,膠原病,免疫不全症の診断ならびに治療に関しての要点が述べられ,専門医までの橋渡しの治療として役立つ。11~12章は感染症,呼吸器疾患で小児科医として10章のアレルギー疾患と同時に最も,一般診療として活用できる項目であり,また13章は消化器,肝臓疾患,14章は循環器,15章は血液腫瘍,16章は腎泌尿器とかなり専門性が要求される項目であり,専門医までの橋渡しをする上での基本事項が記載されている。18,19章は神経,筋疾患,精神疾患,心身医学,発達障害,20章は小児保健,学校保健で小児科医としての必要事項の基本知識を簡便に記載している。22~27章までは小児関連各科(整形,皮膚科,眼科,耳鼻科,歯科口腔外科,在宅医療など)での小児医療に関して従来どおり記載され,大変役立つ。今回28章は特に社会的な問題となっている「こどもの虐待と小児科医の役割」の章が追加され,小児科医の役割が記載され,実践的な内容となっている。また資料として小児科に関するガイドライン一覧と新生児マススクリーニング対象疾患の一覧が追加されている。各章いずれも,大事なところは赤字で示され,大変読みやすく,A5サイズなので診療の場面でも利用しやすい。

 従来より,小児の各疾患を極めて要点を絞り,適切な診断・治療方針が簡潔に記載され,現場での医療で,実戦的に使用できることが本書の特徴である。このことにより半世紀の長きにわたり,小児医療の現場での診療書として,不滅のバイブルとして長い期間利用されてきた理由がわかる。現在コロナ感染症流行の中,小児科医は厳しい状況にあるが,本書を脇に置かれ,日常の診療に利用されることを強く祈念する。


病院研修,外来,在宅,場所を選ばない必需品
書評者:内海 裕美(吉村小児科院長)

 本書は,1980年(昭和55年)に卒業した評者にはなじみ深いものである。研修医,勤務医であったころには,病院,出張先の外来などで治療に役立てていた必需品であり,開業22年を迎えた私は第16版を機会あるごとに活用している。今回の第17版は28章716項目のエキスパートによる書き下ろしであり,「子ども虐待と小児科医の役割」と新たな章の記載があり,小児科関連のガイドライン,小児科医に有用なウェブサイトURLなどの資料も充実している。

 本書は,診断後に治療指針を調べる,確認するのに役立つ簡便さが売りである。それだけでなく以下の特徴があることを知ってほしい。

1)目次を一覧すると小児医療の扱う疾患の多さを把握することができる。特に若い先生方には,「20章 小児保健」「21章 学校保健」を読んでいただきたい。

2)第1章の救急医療では,一般外来でも遭遇するものまで含められている。心の問題も低年齢化してきており,希死念慮,拒食などへの対応も参考になる。

3)第2章では治療手技が文章化されているので,確認,実施積み重ね,確認と手技の研さんに活用できる。

4)第3章では,小児診療にあたっての心構え,基本,年齢別特徴,子どもへの説明,障害のある子ども,小児科領域の医薬品の特性,病診(診診)連携,外来の工夫,患者教育のノウハウ,エラーとニアミスについてのエッセンスがまとめられている。基本であるが一朝一夕には獲得できない重要部分であろう『保護者が納得! 小児科外来 匠の伝え方』(医学書院,2017)なども併読されたい。

5)各疾患についても,日常診療で遭遇する機会の多いものについてはおよそこの治療指針で足りると思われる。専門性の高いものについても治療の概要を知ることができるので,患者,患者家族への説明に役立つ。

6)ガイドライン一覧の資料だけでなく,各領域にガイドラインの存在が記載されている。

7)処方内容が具体的でわかりやすい。

8)小児科医は「子どもの総合診療医」である。皮膚科,眼科,耳鼻咽喉科,歯科・口腔外科,整形外科疾患などの概要,治療などにも触れられており,診療,病診連携・診診連携に役立つ。

9)小児科医は地域の医療資源である。小児在宅医療のニーズが高まる中,積極的に取り組まねばならない領域となっている。どこの場所にいる,どんな子どもでも小児医療の対象であるという理念が貫かれていることがうかがえる。

10)子どもの虐待が独立した章として取り上げられた意義は大きい。個人的には,世相を反映して第1章に位置しても妥当だと考えている。どんな疾患でもどんな家族でも虐待の存在は常に鑑別疾患として念頭に置き,その扱い方も熟知しておく必要がある。知識だけでなく実践を積み重ねることが大事な分野である。

 最後に,書評を依頼され,初版時の序,第17版の序から最後の学校生活管理指導表まで全部目を通した。機会あるごとに必要と思われるときに利用していたが,通読する価値のある本だと気付かされた。ぜひ通読していただき,その上で機会あるごとに開いてほしい。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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    2021.03.04