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消化管吻合法バイブル [Web動画付]

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器械吻合が広く普及する一方、技術さえ習得すれば手縫い吻合のほうが安全で柔軟性に富んでおり、信頼性が高いケースも少なくない。また腹腔鏡、胸腔鏡手術の普及により、熟練した施設では器械吻合をどのように行っているか関心が高まっている。本書では、開腹下での手縫いの吻合、開腹下での器械吻合、内視鏡下での器械吻合を網羅。エキスパートの消化器外科医がどのような吻合を行っているかを動画とともに明らかにする。
監修 北島 政樹
編集 宮澤 光男 / 竹内 裕也
発行 2018年12月判型:B5頁:248
ISBN 978-4-260-03654-2
定価 13,200円 (本体12,000円+税)

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  • 目次
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監修の序
 外科を専攻し実臨床において疑問が生じた場合,常に動物実験にて解明し,それを再度,臨床にフィードバックするプロセスが外科医としての理念であり,また消化管吻合研究の始まりであった。
 外科レジデントのときに,胃切除後に留置する胃ゾンデの管理で抜管時期のタイミングが常に疑問であった。指導医によって3~4日後,あるいは1週間後と指示が異なっていた。そこで抜管の最適時期を知るために,胃腸吻合の創傷治癒をイヌを用いて研究することにした。吻合法としては(1)結節吻合,(2)連続吻合,(3)Gambee吻合を施行し,経時的な創傷治癒の評価として(1)吻合部病理組織像,(2)胃内視鏡像,(3)バイオケミカルアクティブゾーンのhydroxyproline量測定,(4)ソフテックスによる吻合部微小血管像,(5)耐圧試験を用いた。その結果,層々吻合,特に血流豊富な粘膜下層を正確に吻合することが重要であり,Gambee吻合が最良という結論に到達した。本研究は「消化管吻合創の治癒起転」として1975年の学位に繋がった。
 その後は創傷治癒の研究を継続し,縫合糸の治癒起点に与える影響をも検討した。当時,吸収糸として汎用されていたカットグート,絹糸あるいはデキソン糸(ポリグリコール酸)をイヌの胃内に吊るし耐久性および酸の影響を観察した。驚いたことにカットグートは2~3日で溶解してしまい,臨床における疑問点として残った。
 このような時期に1971年,創傷治癒研究会が創設され,2000年に日本創傷治癒学会に改称された。創傷治癒の臨床・基礎が注目を集める中で1958年,峯の2段階式環状吻合器の開発から,ソ連にて1960年,Suture Gunに改良され,1972年,中山の彎曲型吻合器が開発された。その後,1979年,EEA,GIAが本邦に紹介され食道離断術,食道・空腸吻合術や低位前方術などに適応され,急速に普及した。
 そこで器械吻合とGambee吻合の治癒機転の比較を前述の評価項目とフルオレッセン蛍光試験を加えて検討した。さらに臨床時に食道離断術,食道・空吻吻合術,結腸・結腸吻合術に用いてその成績を総合評価した。その結果,器械吻合の成績はGambee吻合に比べて創傷治癒機転は遅延するが,吻合材料がsteelという点,さらには他臓器との癒着が少ない利点などが認められた。
 その後,周知のごとく腹腔,胸腔鏡下手術が主流となり用手吻合・器械吻合も医工・産学連携により機器の精密化が進歩し吻合法も安定感を増したが,吻合法の基本原則には従来と何ら変わりないと考えている。さらに吻合技術の質が向上したのは,外科手術における周辺支援機器やシステムの進歩,すなわちICGを用いた生体蛍光イメージング法の展開である。術中腸管血流評価による縫合不全発生率の減少にも関係しており,消化管バイアビリティー評価の一助となっている。
 最後に本書は執筆者が本邦において,それぞれの分野のオピニオンリーダーであり「消化管吻合法のバイブル」として用いられるとのこと,すなわちバイブルの持つ意味,特定の分野において権威ある書物,また常に傍らに置くことから座右の書や愛読書になるようにここに強く祈念している。

 2018年秋
 国際医療福祉大学副理事長・名誉学長/慶應義塾大学名誉教授 北島政樹

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総論
 漏れない,狭窄しない吻合法の概念
  1 吻合法の基本的概念(理論)
  2 縫合針の種類と使用法
  3 縫合糸の種類と使用法
  4 自動縫合器の種類と基本的使い方
  5 自動縫合器の針の種類

各論
 1章 食道・胃領域
  頸部,開胸下
   1 手縫い頸部食道胃管吻合
   2 胸腔内食道胃管吻合
   3 手縫い咽頭空腸吻合法 空腸食道吻合(咽喉食摘後)
   4 回結腸を用いた食道切除後再建
   5 空腸を用いた食道切除後再建
   6 サーキュラーステープラーを用いた頸部食道胃管吻合法
   7 リニアステープラーを用いた頸部食道胃管吻合術(三角吻合)
   8 リニアステープラーを用いた頸部食道胃管吻合法(Collard変法)
  胸腔鏡下,腹腔鏡下
   9 胸腔鏡下胸腔内食道胃管吻合法
   10 腹腔鏡下幽門側胃切除後B-I再建法(デルタ吻合)
   11 腹腔鏡下幽門側胃切除後のR-Y再建法
   12 腹腔鏡下胃全摘術 リニアステープラーを用いた方法(Overlap法)
   13 腹腔鏡下胃全摘術 リニアステープラーを用いた再建(FEEA法)
   14 腹腔鏡下胃全摘術 サーキュラーステープラーを用いた
       食道空腸吻合再建法(手縫いまつり縫い法)
   15 腹腔鏡下胃全摘術 サーキュラーステープラーを
       用いた方法(経口アンビル法)
   16 腹腔鏡下噴門側胃切除術 上川法(観音開き法)
 2章 小腸・結腸・直腸領域
  開腹下
   1 手縫い吻合(Albert-Lembert吻合)
   2 手縫い吻合(連続および結節Gambee法)
   3 器械吻合-機能的端々吻合
   4 結腸切除後の器械による端々三角吻合
  腹腔鏡下
   5 結腸腹腔内吻合
   6 double-stapling technique(DST端々吻合)
   7 double-stapling technique(DST端側吻合)
   8 single stapling technique (SST吻合)
   9 器械吻合-腹腔鏡下反転DST吻合
   10 ISR手縫い吻合
  炎症性腸疾患
   11 狭窄形成術
   12 東北大式吻合
       (Antimesenteric cutback end-to-side isoperistaltic anastomosis)
   13 Kono-S吻合
   14 大腸全摘,回腸嚢肛門(管)吻合
 3章 肝・胆・膵領域
  開腹下
   1 総胆管-空腸連続縫合
   2 総胆管-空腸結節縫合
   3 肝内胆管空腸吻合法(胆管ステントを用いた結節縫合法)
   4 肝内胆管空腸吻合法(結節縫合)
   5 膵空腸吻合法―膵管空腸粘膜吻合
   6 膵空腸吻合法─no stent法
   7 膵空腸吻合法─膵管非吻合密着法
   8 膵空腸吻合法─柿田式吻合
   9 膵空腸吻合法─Blumgart変法(Nagoya method)
   10 膵胃吻合法─Twin Square Wrapping(TSW)法
  腹腔鏡下
   11 腹腔鏡下胆管空腸吻合法
   12 腹腔鏡下胆道消化管吻合法
       ─Swineウエットラボ胆道再建実習モデルによる運針手技習熟法
   13 腹腔鏡下膵空腸吻合法─スーチャークリップを用いたBlumgart変法
   14 膵空腸吻合
       〔Wrapping double mattress法(Kiguchi method)(ロボット)〕
   15 膵尾側吻合法(生体吸収性材料を利用)
   16 鏡視下膵消化管吻合 腹腔鏡下DuVal変法膵空腸吻合
  肝移植
   17 胆管吻合法(右葉グラフト)
   18 胆管吻合法(左葉グラフト)
   19 胆管吻合法(複数本の吻合)

索引

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共に「縫合不全ゼロ」をめざそう
書評者: 坂井 義治 (京大教授・消化管外科)
 「縫合不全」-外科医なら誰もが経験し,眠れない夜を過ごす術後合併症である。縫合不全の原因は何か? これまでも,そして今も研究が続いている。

 北島政樹先生による「監修の序」を読むと,吻合と創傷治癒に関する研究の原点と器械吻合の創生を再認識することができる。内視鏡手術が普及している現在,手縫い吻合の機会は激減しているものの,その基本手技と理論の理解は必須であろう。また,進化する吻合器機の原理と基本的使用法の理解なしには,安全確実な吻合は不可能である。

 本書の総論では,これらの基本知識をたくさんの図表から容易に学習することができる。さらに各論では,各領域の第一人者により,現在行われている消化管吻合のほぼ全ての手技のコツとピットフォールが簡潔に解説され,しかもQRコードからアクセスする付録web動画により吻合の実際を映像でも学習できる。

 比類なき教科書であり,まさに“消化管吻合法バイブル”といえる。外科専攻医ばかりでなく専門医,指導医にもこのバイブルを手にしていただき,共に「縫合不全ゼロ」をめざしたいと思う。
写真,解説図,Web動画で手技が的確に理解できる
書評者: 片井 均 (国立がん研究センター中央病院副院長・胃外科)
 消化器の手術は,再建をもって完結し,吻合は最も重要なステップの一つである。吻合に関する縫合不全などの合併症は,時に致死的となる。また,狭窄が発生すると長期QOLを著しく阻害する。全ての外科医が理想的な再建・吻合法を求める中で,まさにバイブルというべき待望の手術書が発刊された。

 総論に関しては,外科医が知るべき知識が,極めてコンパクトにまとめられており,大変わかりやすい。

 各論に関して,最初に注目すべきはその手技の選びかたである。外科医が今まさに知りたい吻合法が,腹腔鏡から開腹,食道・胃領域から肝胆膵領域と網羅されている。次に注目すべきは,執筆者の選択である。それぞれの分野のエキスパートが実に丁寧に選ばれている。学会などのセミナーで,手術ビデオを披露し高い評価を得ている執筆者が並んでいる。執筆者の名前を見ただけで読者が直接指導を受けたいと思う豪華な面々である。監修者,編集者の努力の賜物と考えられる。

 執筆内容に関しては,「吻合のための器具」,「手技」,「吻合の特徴」,「吻合法のコツとピットフォール」などの項目が執筆の際の必須項目として要領よく立項されており,読者の頭に入りやすい仕組みになっている。外科医の一つひとつの手技には理由付けが必要だが,本書では「この吻合法を用いている理由」が立項されており,本書が単なる技術書を超えたものであることの証となっている。

 吻合手技の理解には,ステップごとの図や写真を用いての解説が必須である。最近の手術書には写真のみ用いているものもあるが,解説図がないとわかりにくい手技もある。本書では各項目の著者が解説図を的確に追加し読者の理解の助けとしている。さらに喜ばしいことには複雑な手技はWeb動画が用意されており,しかもQRコードを用いてスマートフォンに読み込み可能という至れり尽くせりという内容となっている。

 医師の働きかた改革が叫ばれる中,特に若手医師は効率的に自己研鑚を行うべき時世となっている。Web動画を通勤や出張の合間にチェックするのは,この要件を満たすものと考えられる。本書本体もソフトカバーで持ち運びも容易である。「バイブル」として常にそばに置くべき書物として推薦したい。

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