呼吸器疾患研究の展望
基礎から臨床まで

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「呼吸」は生物の生命維持、生体活動にとって最も基本的な機能であり、医療者が日常臨床で頻繁に遭遇する問題解決のための基礎知識である。分子生物学など最先端の研究がなされる現代の呼吸器病学にも、地道な基礎研究の成果が臨床に繋がっていくサイエンスの最前線がある。未来への架け橋となるトランスレーションリサーチの手引書。
編集 相澤 久道 / 一ノ瀬 正和
発行 2006年05月判型:B5頁:232
ISBN 978-4-260-00183-0
定価 5,170円 (本体4,700円+税)
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  • 目次
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第I章 実験計画法
 1 医学統計
第II章 分子生物学・遺伝子工学的手法
 1 細胞死のシグナル伝達とその評価法
 2 呼吸器疾患の遺伝子解析
 3 細胞内シグナリングの解析による疾患へのアプローチ
 4 分子生物学の呼吸器疾患への応用
   -RNA・ゲノムDNAの調製とハイブリダイゼーション
 5 喘息病態におけるサイトカインネットワークとその評価法
 6 遺伝子操作動物モデルの作製法
第III章 組織学的手法
 1 組織学的観察の基礎と特殊染色
 2 実験動物のモルフォメトリーによる解析法
 3 マイクロダイセクション法の原理と応用
第IV章 臓器機能の評価法
 1 気道平滑筋の生理学的解析
 2 気道上皮の電気生理学的解析法
 3 肺胞上皮機能-肺障害と水分クリアランス
第V章 生体機能の評価法
 1 遺伝子操作動物モデルによる病態把握
 2 気道過敏性評価-原理と応用
 3 気道リモデリングの基礎的・臨床的検討法
第VI章 臨床研究への応用
 1 ELISAの実際
 2 マイクロダイアリシスによる微量物質の同定原理
 3 マイクロサンプリング法の原理と応用
 4 気道炎症評価法-呼気ガス,呼気凝縮液,喀痰
索引

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基礎知識から研究ノウハウまで さまざまなニーズに応える
書評者: 黒澤 一 (東北大保健管理センター/東北大病院内部障害リハビリテーション科)
 テクノロジーの進化によって研究手法は多様化しており,経験したことがなければなかなか理解しにくい状況になっている。学会で見聞きして名前は知っていても,実際にどのようなことをやるのかは知らないでいることが多いのではないだろうか。

 2004年の臨床呼吸機能講習会は福岡で行われ,C2コース(呼吸器研究者育成コース)が初めて設置された。編者の相澤久道先生はそのときの会長で,C2コースのコンセプトを提示した「生みの親」でもある。同じく編者の一ノ瀬正和先生はC2コースの初代主任として,コースの内容を作ることに尽力されたと聞いている。

 今回,発刊されたこの本は,講習内容をさらにUp-dateし,一冊にまとめたものである。初めてこの本の内容に触れる人ばかりでなく,実際のコースの受講生にとっても,執筆された各先生方のご講演がこのように本の形としてまとまったことで,プラスの意味が大きいのではないだろうか。

 実は,この本を読んでいるうちに,留学時代を思い出してしまった。自分が関与した実験内容の記事を読むのは懐かしくもあったが,それにも増して,研究所の中のいろいろな研究者のいろいろな実験風景をのぞく楽しみそのままの気分を味わうかのような感覚であったのだ。北海道大学の別役智子先生のレーザーキャプチャーマイクロダイセクションは何回も名前をお聞きしていたものであったが,実際に本でその内容とこれからの発展性を知ることができた。機器の種類も複数機種あると初めて知った。顕微鏡をのぞくご自分の「目」の負担が大変だと別役先生ご自身が話されていたように記憶しているが,さすがにそのご苦労をなさったことまでは本には書かれていなかった。関東中央病院の岡輝明先生が書かれた「組織学的観察の基礎と特殊染色」は非常に参考になる項であった。肺の組織固定や染色は難しいことは十分に承知していたが,大学院生や留学生時代に組織で苦労した際にこの本があれば随分違っただろうなと感じた。慶應義塾大学の浅野浩一郎先生の「呼吸器疾患の遺伝子解析」も非常に勉強になった。分子生物学的手法は小生にとってはあまり経験がないので,普段論文で見かける内容がわかりやすくなって嬉しい。冒頭に述べた学会での「虎の巻」としても役に立つ。筆者は,ELISAというものが抗体を使ったアッセーであることは知っていた。しかし,白状しておくと,山下哲次先生の執筆部分を読むまでは抗体がウエルの底にもついているという初歩的なことも知らなかった。

 一読してみて,本書は,呼吸器疾患の病態解明と新治療法開発に必要な基礎知識と,研究手技のノウハウを網羅した本ということができる。研究の方向性を見出すために,また研究途次に読む論文の数々で使われている研究手法の基礎知識を知るために,臨床での疑問を解決する方法を考えて実際に研究を計画するために,今行っている研究をさらにステップアップするために,などさまざまなニーズに応えてくれるものと思う。

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