がん化学療法 レジメン管理マニュアル 第2版
がん化学療法「レジメンのマニュアル」! 情報をアップデートした充実の第2版!!
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がん化学療法で役立つ情報をギュッと凝縮した「レジメンのマニュアル」、待望の第2版! がん種ごとに使用頻度の高いレジメン64本を厳選(血液がんも充実)。「支持療法薬を含む投与スケジュール」と「副作用の発現時期」が1つの表で一目瞭然に! エビデンスに基づいた減量中止規定、がん専門薬剤師が経験した具体的な介入事例も掲載。抗がん薬投与量を検討する際に必須の「腎機能低下時の考え方」を総論に新規追加!
監修 | 濱 敏弘 |
---|---|
編集 | 青山 剛 / 東 加奈子 / 池末 裕明 / 川上 和宜 / 佐藤 淳也 / 橋本 浩伸 |
発行 | 2016年06月判型:B6変頁:506 |
ISBN | 978-4-260-02536-2 |
定価 | 4,180円 (本体3,800円+税) |
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- 目次
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序文
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監修の序
2012年11月に刊行した本書初版では,監修の序の最後を,「本書は,効果的で安心・安全ながん化学療法を実施し,患者のQOLの維持向上を図るために必要なことを薬剤師の視点からまとめた一冊である.(中略)患者の安全確保につながる一助になれば幸いである」と結びました.幸いにも多くの読者から支持された結果,このたび医学書院から改訂の話があり,内容を更新・充実させた第2版を刊行することになりました.
現在,日本人の2人に1人はがんに罹患するといわれています.がん治療法の主役の一つである薬物療法の分野では,新しい抗がん薬の開発や,多くの臨床研究者によるエビデンスの創出により,がん化学療法の進歩は著しく,高い治療成績を上げるようになりました.また,治療効果を期待できる患者とそうでない患者を識別するバイオマーカーの発見により,治療効果の期待できない患者に対する無用な薬物治療を回避できるようにもなりました.しかし,治療効果を期待できるバイオマーカーを有しているからといって,その患者がその治療を安全に完遂できることを保証するものではありません.分子標的治療薬の中には,治療効果の高さと比例してQOLを低下させる副作用を引き起こすものもあります.適切な支持療法(副作用対策)が取られないため,治療を断念せざるを得ないケースもあります.安全性とQOLを維持しつつ,効果的な治療を継続していくためには,副作用の早期発見と適切な対応などの安全管理は不可欠です.その安全管理の一翼を担うのは,がん化学療法に高い専門性を有する薬剤師であることに異論をはさむ余地はありません.
今回の改訂にあたっても,各論は全国の第→線でがん医療に関わっているがん専門薬剤師の方に執筆を依頼しました.がん専門薬剤師の視点から,初版のスタイルを踏襲し,(1)支持療法薬を含む投与スケジュール,(2)処方鑑査とエビデンスに基づく減量・中止基準,(3)投与時の注意点,(4)副作用マネジメント,(5)薬学的ケアの実践例をコンパクトにまとめました.すべてのレジメンを取り上げることはできません.収載するレジメンの選択には苦労しましたが,がん種を考慮して使用頻度の高い標準レジメンを取り上げました.初版掲載のレジメンも半分程度残すことにしましたが,筆者は全面交代しました.特に「薬学的ケアの実践」の内容はすべて刷新したので,初版をお持ちの方にも,きっと新しい気づきがあるはずです.
本書の刊行に携わったすべての筆者,編者を代表して,本書ががん化学療法に携わる多くの方々の日々の業務の一助になれば幸いです.
2016年4月
がん研有明病院 院長補佐,薬剤部長
濱 敏弘
2012年11月に刊行した本書初版では,監修の序の最後を,「本書は,効果的で安心・安全ながん化学療法を実施し,患者のQOLの維持向上を図るために必要なことを薬剤師の視点からまとめた一冊である.(中略)患者の安全確保につながる一助になれば幸いである」と結びました.幸いにも多くの読者から支持された結果,このたび医学書院から改訂の話があり,内容を更新・充実させた第2版を刊行することになりました.
現在,日本人の2人に1人はがんに罹患するといわれています.がん治療法の主役の一つである薬物療法の分野では,新しい抗がん薬の開発や,多くの臨床研究者によるエビデンスの創出により,がん化学療法の進歩は著しく,高い治療成績を上げるようになりました.また,治療効果を期待できる患者とそうでない患者を識別するバイオマーカーの発見により,治療効果の期待できない患者に対する無用な薬物治療を回避できるようにもなりました.しかし,治療効果を期待できるバイオマーカーを有しているからといって,その患者がその治療を安全に完遂できることを保証するものではありません.分子標的治療薬の中には,治療効果の高さと比例してQOLを低下させる副作用を引き起こすものもあります.適切な支持療法(副作用対策)が取られないため,治療を断念せざるを得ないケースもあります.安全性とQOLを維持しつつ,効果的な治療を継続していくためには,副作用の早期発見と適切な対応などの安全管理は不可欠です.その安全管理の一翼を担うのは,がん化学療法に高い専門性を有する薬剤師であることに異論をはさむ余地はありません.
今回の改訂にあたっても,各論は全国の第→線でがん医療に関わっているがん専門薬剤師の方に執筆を依頼しました.がん専門薬剤師の視点から,初版のスタイルを踏襲し,(1)支持療法薬を含む投与スケジュール,(2)処方鑑査とエビデンスに基づく減量・中止基準,(3)投与時の注意点,(4)副作用マネジメント,(5)薬学的ケアの実践例をコンパクトにまとめました.すべてのレジメンを取り上げることはできません.収載するレジメンの選択には苦労しましたが,がん種を考慮して使用頻度の高い標準レジメンを取り上げました.初版掲載のレジメンも半分程度残すことにしましたが,筆者は全面交代しました.特に「薬学的ケアの実践」の内容はすべて刷新したので,初版をお持ちの方にも,きっと新しい気づきがあるはずです.
本書の刊行に携わったすべての筆者,編者を代表して,本書ががん化学療法に携わる多くの方々の日々の業務の一助になれば幸いです.
2016年4月
がん研有明病院 院長補佐,薬剤部長
濱 敏弘
目次
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第1章 総論:がん化学療法を安全に行うために
1 抗がん剤の相互作用
2 制吐療法
3 発熱性好中球減少症(FN)に対する薬物療法の組み立て方とその評価ポイント
4 抗がん剤治療中における栄養管理のポイント
5 分子標的薬の皮膚障害に使用する皮膚外用剤の注意点
6 腎機能低下時の考え方
第2章 乳がん
1 AC(アドリアマイシン+シクロホスファミド)
2 FEC100(シクロホスファミド+エピルビシン+フルオロウラシル)
3 TC(ドセタキセル+シクロホスファミド)
4 パクリタキセル
5 トラスツズマブ(ハーセプチン®)
6 ペルツズマブ(パージェタ®)+トラスツズマブ(ハーセプチン®)
7 カペシタビン(ゼローダ®)
8 カペシタビン(ゼローダ®)+ラパチニブ(タイケルブ®)
9 トラスツズマブ エムタンシン(カドサイラ®)
10 エリブリン(ハラヴェン®)
11 TAC(ドセタキセル+ドキソルビシン+シクロホスファミド)+Peg-G-CSF
第3章 肺がん
I.小細胞がん
12 シスプラチン+エトポシド
13 シスプラチン+イリノテカン
14 アムルビシン(カルセド®)
15 ノギテカン(ハイカムチン®)
II.非小細胞がん
16 シスプラチン+ペメトレキセド(ペメトレキセドメンテナンス)
17 カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ
18 ゲフィチニブ(イレッサ®)
19 エルロチニブ(タルセバ®)
20 アファチニブ(ジオトリフ®)
21 ドセタキセル(タキソテール®,ワンタキソテール®)
22 クリゾチニブ(ザーコリ®)
23 アレクチニブ(アレセンサ®)
第4章 大腸がん
24 FOLFOX±Bev(フルオロウラシル+レボホリナート+
オキサリプラチン±ベバシズマブ)
25 FOLFIRI(フルオロウラシル+レボホリナート+イリノテカン)±
セツキシマブ
26 XELOX±Bev(カペシタビン+オキサリプラチン±ベバシズマブ)
27 パニツムマブ(ベクティビックス®)
28 レゴラフェニブ(スチバーガ®)
29 トリフルリジン・チピラシル(ロンサーフ®)
30 カペシタビン(ゼローダ®)
第5章 胃がん
31 SP(S-1+シスプラチン)
32 カペシタビン+シスプラチン+トラスツズマブ
33 SOX(S-1+オキサリプラチン)
34 S-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤)
第6章 肝胆膵がん
I.肝臓がん
35 ソラフェニブ(ネクサバール®)
II.胆道がん
36 GC療法(ゲムシタビン+シスプラチン)
III.膵臓がん
37 FOLFIRINOX(オキサリプラチン+イリノテカン+
フルオロウラシル+レボホリナート)
38 ゲムシタビン+S-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤)
39 nab-パクリタキセル+ゲムシタビン
第7章 婦人科がん
I.卵巣がん
40 TC(パクリタキセル+カルボプラチン)+ベバシズマブ
41 ドキソルビシン(ドキシル®)
42 dose-dense TC(パクリタキセル+カルボプラチン)
II.子宮頸がん
43 RT-シスプラチン
III.子宮体がん
44 AP(ドキソルビシン+シスプラチン)
第8章 泌尿器がん
I.腎臓がん
45 スニチニブ(スーテント®)
46 ソラフェニブ(ネクサバール®)
47 エベロリムス(アフィニトール®)
48 テムシロリムス(トーリセル®)
49 パゾパニブ(ヴォトリエント®)
II.前立腺がん
50 カバジタキセル(ジェブタナ®)
第9章 頭頸部がん
51 RT+シスプラチン
52 RT+セツキシマブ
第10章 血液がん
I.非ホジキンリンパ腫
53 R-CHOP(リツキシマブ+シクロホスファミド+ドキソルビシン+
ビンクリスチン+プレドニゾロン)
54 ブレンツキシマブ ベドチン(アドセトリス®)
55 ベンダムスチン+リツキシマブ
II.ホジキンリンパ腫
56 ABVD(d)(ドキソルビシン+ブレオマイシン+ビンブラスチン+
ダカルバジン)
III.多発性骨髄腫
57 VMP(ボルテゾミブ+メルファラン+プレドニゾロン)
IV.慢性骨髄性白血病(CML)
58 イマチニブ
59 ニロチニブ
60 ダサチニブ
V.骨髄異形成症候群(MDS)
61 アザシチジン(ビダーザ®)
第11章 その他のがん
62 ゾレドロン酸
63 デノスマブ
64 ラスブリカーゼ(ラスリテック®)
付録 抗がん剤の希釈後の安定性
索引
1 抗がん剤の相互作用
2 制吐療法
3 発熱性好中球減少症(FN)に対する薬物療法の組み立て方とその評価ポイント
4 抗がん剤治療中における栄養管理のポイント
5 分子標的薬の皮膚障害に使用する皮膚外用剤の注意点
6 腎機能低下時の考え方
第2章 乳がん
1 AC(アドリアマイシン+シクロホスファミド)
2 FEC100(シクロホスファミド+エピルビシン+フルオロウラシル)
3 TC(ドセタキセル+シクロホスファミド)
4 パクリタキセル
5 トラスツズマブ(ハーセプチン®)
6 ペルツズマブ(パージェタ®)+トラスツズマブ(ハーセプチン®)
7 カペシタビン(ゼローダ®)
8 カペシタビン(ゼローダ®)+ラパチニブ(タイケルブ®)
9 トラスツズマブ エムタンシン(カドサイラ®)
10 エリブリン(ハラヴェン®)
11 TAC(ドセタキセル+ドキソルビシン+シクロホスファミド)+Peg-G-CSF
第3章 肺がん
I.小細胞がん
12 シスプラチン+エトポシド
13 シスプラチン+イリノテカン
14 アムルビシン(カルセド®)
15 ノギテカン(ハイカムチン®)
II.非小細胞がん
16 シスプラチン+ペメトレキセド(ペメトレキセドメンテナンス)
17 カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ
18 ゲフィチニブ(イレッサ®)
19 エルロチニブ(タルセバ®)
20 アファチニブ(ジオトリフ®)
21 ドセタキセル(タキソテール®,ワンタキソテール®)
22 クリゾチニブ(ザーコリ®)
23 アレクチニブ(アレセンサ®)
第4章 大腸がん
24 FOLFOX±Bev(フルオロウラシル+レボホリナート+
オキサリプラチン±ベバシズマブ)
25 FOLFIRI(フルオロウラシル+レボホリナート+イリノテカン)±
セツキシマブ
26 XELOX±Bev(カペシタビン+オキサリプラチン±ベバシズマブ)
27 パニツムマブ(ベクティビックス®)
28 レゴラフェニブ(スチバーガ®)
29 トリフルリジン・チピラシル(ロンサーフ®)
30 カペシタビン(ゼローダ®)
第5章 胃がん
31 SP(S-1+シスプラチン)
32 カペシタビン+シスプラチン+トラスツズマブ
33 SOX(S-1+オキサリプラチン)
34 S-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤)
第6章 肝胆膵がん
I.肝臓がん
35 ソラフェニブ(ネクサバール®)
II.胆道がん
36 GC療法(ゲムシタビン+シスプラチン)
III.膵臓がん
37 FOLFIRINOX(オキサリプラチン+イリノテカン+
フルオロウラシル+レボホリナート)
38 ゲムシタビン+S-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤)
39 nab-パクリタキセル+ゲムシタビン
第7章 婦人科がん
I.卵巣がん
40 TC(パクリタキセル+カルボプラチン)+ベバシズマブ
41 ドキソルビシン(ドキシル®)
42 dose-dense TC(パクリタキセル+カルボプラチン)
II.子宮頸がん
43 RT-シスプラチン
III.子宮体がん
44 AP(ドキソルビシン+シスプラチン)
第8章 泌尿器がん
I.腎臓がん
45 スニチニブ(スーテント®)
46 ソラフェニブ(ネクサバール®)
47 エベロリムス(アフィニトール®)
48 テムシロリムス(トーリセル®)
49 パゾパニブ(ヴォトリエント®)
II.前立腺がん
50 カバジタキセル(ジェブタナ®)
第9章 頭頸部がん
51 RT+シスプラチン
52 RT+セツキシマブ
第10章 血液がん
I.非ホジキンリンパ腫
53 R-CHOP(リツキシマブ+シクロホスファミド+ドキソルビシン+
ビンクリスチン+プレドニゾロン)
54 ブレンツキシマブ ベドチン(アドセトリス®)
55 ベンダムスチン+リツキシマブ
II.ホジキンリンパ腫
56 ABVD(d)(ドキソルビシン+ブレオマイシン+ビンブラスチン+
ダカルバジン)
III.多発性骨髄腫
57 VMP(ボルテゾミブ+メルファラン+プレドニゾロン)
IV.慢性骨髄性白血病(CML)
58 イマチニブ
59 ニロチニブ
60 ダサチニブ
V.骨髄異形成症候群(MDS)
61 アザシチジン(ビダーザ®)
第11章 その他のがん
62 ゾレドロン酸
63 デノスマブ
64 ラスブリカーゼ(ラスリテック®)
付録 抗がん剤の希釈後の安定性
索引
書評
開く
より充実した薬学的ケアを実践する上での心強い味方
書評者: 堀 里子 (東大大学院特任准教授・育薬学)
本書は,薬学的ケアに欠かせない「がん化学療法レジメンの知識を整理して身につけたい!」「最新の情報をアップデートしたい!」とお思いの方にうってつけの良書です。何より,それらの知識を目前の患者の治療やQOLの維持向上にどう活かせばよいかも同時に学べる工夫が随所にみられます。
本書では,レジメンごとに抗がん薬の処方鑑査のポイントや減量基準,調剤のポイント,抗がん薬投与時の注意点といった「安全な治療」のための情報が簡潔でわかりやすく解説されています。患者のQOL維持向上に欠かせない「副作用マネジメント」のための情報も豊富です。レジメンと副作用は時系列に表形式でもまとめられており,支持療法を含む治療計画と副作用の発現時期や対策のポイントが一目でわかり,大変便利です。さらに,抗がん薬の相互作用や腎機能低下時の考え方,支持療法(副作用対策)や栄養管理のポイントといった,薬学的ケアを実践する上で習得しておきたいトピックも総論で学べる構成になっています。
そして,CASEで学べる「薬学的ケアの実践」の項目は,本書の最大の魅力だと思います。臨場感ある個々のCASEを通して,抗がん薬の処方鑑査や投与時の注意点,副作用マネジメントのための知識をどのように“よりよい治療”と“QOLの維持向上”に結び付ければよいか,具体的なイメージが湧くので,理解がぐっと深まります。本書は,現場で手の届くところに置いておき,さっと調べられる手軽さもありますが,腰を落ち着けてCASEを軸に読み進めながら,レジメンへの知識を深めていくという楽しみ方もあると思います。
長期にわたるがん化学療法では,在宅での患者の生活やその家族・介護者に寄り添った薬学的ケアがますます求められます。本書は,病院薬剤師にとっても,薬局薬剤師にとっても,相互連携のもと,より充実した薬学的ケアを実践する上での心強い味方となるでしょう。さらに,薬剤師ならではの視点で,よりよいがん化学療法を実現するノウハウが詰まっていますので,抗がん薬治療に関わる医療・福祉専門職の方々にとっても広く役立つものと思います。
臨床現場で活躍されている薬剤師の方々が,それぞれの熱い想いも込めて活きた情報を共有し,わかりやすく実践的なマニュアルとして本書を作り上げてくださったことに心より敬意を表したいと思います。本書を多くの方に手に取っていただき,それぞれの現場で,薬学的ケアを実践していただけることを願っています。
がん化学療法看護の臨床においても必須の書
書評者: 飯野 京子 (国立看護大教授・成人看護学)
本書は,がん医療において最前線で活躍している薬剤師による,エビデンスに基づいたコンパクトながん化学療法の解説書です。著者らが検討を重ね頻度の高い標準レジメンについて,(1)支持療法を含む投与スケジュール,(2)処方鑑査とエビデンスに基づく減量・中止基準,(3)投与時の注意点,(4)副作用マネジメント,(5)薬学的ケアの実践例について専門的な内容を簡潔にまとめています(p.vi 参照)。
がん化学療法において,多くの薬は最終的に看護師が投与管理を担っていますが,この分野は新薬の開発が著しいために新たな投与管理,副作用マネジメントを実践するためには,常に新しい知識や技術を獲得しようとする不断の努力が必要となってきています。そんなときに,ポケットサイズの本書は持ち歩き可能で,使いやすいサイズとなっています。
特に,レジメンごとに支持療法を含む薬の投与の方法,順番,投与時間,副作用の発現時期と対策が一覧表になっているページは投与管理において重要な情報がコンパクトに整理されており,看護師にとって有用な部分であると思います。
薬の確実・安全な投与管理のためには,看護師は投与前に正しい患者(Right Patient),正しい薬(Right Drug),正しい目的(Right Purpose),正しい用量(Right Dose),正しい用法/経路(Right Route),正しい投与時間(Right Time)の「6R」を確認することが推奨されています。これは,看護師ががん化学療法を受ける患者と治療を十分に理解しながらの「6R」でなければなりません。本書では,「抗がん薬の処方鑑査」の項目があり,安全に薬を用いるための必須ポイントである慎重投与の対象患者,減量基準など,薬理学的な視点で「6R」を確認するための知識が網羅されています。
さらに,レジメンごとに実践例が掲載されています。薬剤師の視点で紹介されている実践例ですが,患者の副作用のアセスメント,アドヒアランスを高めるための指導,生活指導など看護ケアに薬理学的な視点をプラスするためのわかりやすい事例となっています。
本書をひもとくと,チームにおいてどのような視点で薬剤師から情報を得るのか,薬剤師に何を情報提供すればより安全・確実な治療がもたらされるのか具体的に記述されています。
がん化学療法看護の臨床においても必須の書であると感じました。
書評者: 堀 里子 (東大大学院特任准教授・育薬学)
本書は,薬学的ケアに欠かせない「がん化学療法レジメンの知識を整理して身につけたい!」「最新の情報をアップデートしたい!」とお思いの方にうってつけの良書です。何より,それらの知識を目前の患者の治療やQOLの維持向上にどう活かせばよいかも同時に学べる工夫が随所にみられます。
本書では,レジメンごとに抗がん薬の処方鑑査のポイントや減量基準,調剤のポイント,抗がん薬投与時の注意点といった「安全な治療」のための情報が簡潔でわかりやすく解説されています。患者のQOL維持向上に欠かせない「副作用マネジメント」のための情報も豊富です。レジメンと副作用は時系列に表形式でもまとめられており,支持療法を含む治療計画と副作用の発現時期や対策のポイントが一目でわかり,大変便利です。さらに,抗がん薬の相互作用や腎機能低下時の考え方,支持療法(副作用対策)や栄養管理のポイントといった,薬学的ケアを実践する上で習得しておきたいトピックも総論で学べる構成になっています。
そして,CASEで学べる「薬学的ケアの実践」の項目は,本書の最大の魅力だと思います。臨場感ある個々のCASEを通して,抗がん薬の処方鑑査や投与時の注意点,副作用マネジメントのための知識をどのように“よりよい治療”と“QOLの維持向上”に結び付ければよいか,具体的なイメージが湧くので,理解がぐっと深まります。本書は,現場で手の届くところに置いておき,さっと調べられる手軽さもありますが,腰を落ち着けてCASEを軸に読み進めながら,レジメンへの知識を深めていくという楽しみ方もあると思います。
長期にわたるがん化学療法では,在宅での患者の生活やその家族・介護者に寄り添った薬学的ケアがますます求められます。本書は,病院薬剤師にとっても,薬局薬剤師にとっても,相互連携のもと,より充実した薬学的ケアを実践する上での心強い味方となるでしょう。さらに,薬剤師ならではの視点で,よりよいがん化学療法を実現するノウハウが詰まっていますので,抗がん薬治療に関わる医療・福祉専門職の方々にとっても広く役立つものと思います。
臨床現場で活躍されている薬剤師の方々が,それぞれの熱い想いも込めて活きた情報を共有し,わかりやすく実践的なマニュアルとして本書を作り上げてくださったことに心より敬意を表したいと思います。本書を多くの方に手に取っていただき,それぞれの現場で,薬学的ケアを実践していただけることを願っています。
がん化学療法看護の臨床においても必須の書
書評者: 飯野 京子 (国立看護大教授・成人看護学)
本書は,がん医療において最前線で活躍している薬剤師による,エビデンスに基づいたコンパクトながん化学療法の解説書です。著者らが検討を重ね頻度の高い標準レジメンについて,(1)支持療法を含む投与スケジュール,(2)処方鑑査とエビデンスに基づく減量・中止基準,(3)投与時の注意点,(4)副作用マネジメント,(5)薬学的ケアの実践例について専門的な内容を簡潔にまとめています(p.vi 参照)。
がん化学療法において,多くの薬は最終的に看護師が投与管理を担っていますが,この分野は新薬の開発が著しいために新たな投与管理,副作用マネジメントを実践するためには,常に新しい知識や技術を獲得しようとする不断の努力が必要となってきています。そんなときに,ポケットサイズの本書は持ち歩き可能で,使いやすいサイズとなっています。
特に,レジメンごとに支持療法を含む薬の投与の方法,順番,投与時間,副作用の発現時期と対策が一覧表になっているページは投与管理において重要な情報がコンパクトに整理されており,看護師にとって有用な部分であると思います。
薬の確実・安全な投与管理のためには,看護師は投与前に正しい患者(Right Patient),正しい薬(Right Drug),正しい目的(Right Purpose),正しい用量(Right Dose),正しい用法/経路(Right Route),正しい投与時間(Right Time)の「6R」を確認することが推奨されています。これは,看護師ががん化学療法を受ける患者と治療を十分に理解しながらの「6R」でなければなりません。本書では,「抗がん薬の処方鑑査」の項目があり,安全に薬を用いるための必須ポイントである慎重投与の対象患者,減量基準など,薬理学的な視点で「6R」を確認するための知識が網羅されています。
さらに,レジメンごとに実践例が掲載されています。薬剤師の視点で紹介されている実践例ですが,患者の副作用のアセスメント,アドヒアランスを高めるための指導,生活指導など看護ケアに薬理学的な視点をプラスするためのわかりやすい事例となっています。
本書をひもとくと,チームにおいてどのような視点で薬剤師から情報を得るのか,薬剤師に何を情報提供すればより安全・確実な治療がもたらされるのか具体的に記述されています。
がん化学療法看護の臨床においても必須の書であると感じました。
更新情報
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