質的研究をめぐる10のキークエスチョン サンデロウスキー論文に学ぶ
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41本物の質的研究者は数を数えない?──質的研究における数の使用  論文の解説この論文でサンデロウスキー先生は,「数は質的データには欠かせない要素」と指摘し,質的研究における数の使用を積極的に肯定しています.そして,「質的データ から意味を生み出す目的」,「結果を報告・証明・検証する目的」,「研究対象となる出来事や経験を再現するという目的」での数の使用について,それぞれ具体例を挙げて説明しています.「数を扱う能力は質的研究の質を高めるには欠かせない」と断言するサンデロウスキー先生にとって,「質的研究では数を扱ってはいけないのか?」や「その必要性はないのか?」という問いは愚問であるとさえ言えるでしょう.質的データから意味を引き出すために,質的データを量的なデータセットに変換する手法と聞くと,多くの人が「内容分析」を思い起こすと思います.内容分析は,Berelsonなどが体系化したマス・コミュニケーション研究における代表的な実証研究の方法の1つです(有馬,2007,p.1).しかし,皆さんもお気づきの通り,サンデロウスキー先生がここで述べている「量化」の目的は,内容分析によって最終的な結果を導き出す,いわばデータ分析の帰結としての量化・・・・・・・・にとどまらず,量化を出発点としてパターンを探し出す,あるいは作業仮説を立てて自分のデータを新しい視点から見ることができるようにすることでもあります.データ分析の出発点で,いわば仕掛けと・・・・しての量化・・・・・を経ることによって,深く多面的な解釈が可能となり,考慮すべきデータや分析の方向性,あるいは鍵となる結果への焦点が鮮明になると言うのです.私の知り得る範囲では,日本で発表された看護研究で,質的データを量化することによって作業仮説を立て,分析・解釈を深めた報告は,皆無ではありませんが稀少です.したがって,多くの質的研究者にとってサンデロウスキー先生の指摘は新鮮であり,チャレンジ精神を駆り立てるものではないでしょうか.紹介されている研究論文を参考にして,そのノウハウを学びたいものです.

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