医学書院の70年
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2009.12.01出版契約書改定「出版権設定型」から「複製権等譲渡型」へ社では医師をはじめとする著作権者(著作者)から著作権の中の複製権(印刷,写真,複写,録音,その他の方法で有形的に再生する権利)と譲渡権に関して,譲渡を受けたり利用許諾を得たりして出版事業を成立させている。出版事業を円滑に行うためには,権利の所在と利用の範囲を詳細に取り決めたうえで「出版契約書」を著作権者と締結しておくことが条件となる。 出版契約書には大別して二つの類型があり,その一つが「著作権譲渡型」である。著作者人格権(公表権,氏名表示権,同一性保持権)が著者に残る以外は,すべて出版社に権利が移転することを意味するもので,出版社にとっては最も強力な契約形態である。 もう一つの類型が「出版権設定型」である。著作権者から出版権の設定を受けるというこの契約によって,出版社は著作物を複製(印刷)して頒布(販売)することにより,公衆に提供する権利を専有できる。これは社が従来から行ってきた契約方式であり,出版形態が紙媒体のみの時代には有効であった。途中,著作権法の改正や複写権の管理委託などの環境変化に対応して条項の修正を施していたが,電子出版という新たな出版形態が登場して以来,徐々に時代の変化に対応しきれなくなっていった。 こうした時代の要請によって,2009年12月1日から「複製権等の期限付き譲渡型」契約書の運用を開始した。これは,契約書の有効期間中は,複製権のすべてに加えて,著作権の他の支分権(上映権,公衆送信権,翻訳・翻案権,貸与権)を社が著作権者となって権利を所有できるというものである。これにより社が,出版物の電子化やネット上での第三者による著作権侵害行為に主体的にかかわることを可能にした。社長の金原優が,電子出版も含めた未来の出版形態を見据えて行った改定作業であった。 一方,雑誌においては早くから著作権譲渡を前提とした投稿受付と原稿依頼を開始し,同業他社に先んじて電子ジャーナル(MedicalFinder)の商品化を成功させている。上:「複製権等の期限付き譲渡型」契約書のサンプルAbove: Sample pages of the new type of agreement transferring copyright for an agreed period of time.右ページ:小冊子『出版界は今何が問題か』―社長の金原優が医学書院協力会で行った講演(1999年)の内容をまとめたもの。出版界・出版社として対処を考えなくてはならない著作権にかかわる諸問題について簡潔・明快に解説している。Opposite page: The cover of the book entitled What are the Prob-lems in the Publishing World in Japan written by Yu Kanehara and published by Igaku-Shoin Ltd. in November 1999. (not for sale)70 years of igaku-shoin190

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