医学書院の70年
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『看護大事典』は,企画が成立した1983年時点では,洋書のベストセラー書籍であるMosby’s Medical & Nursing Dictionaryの翻訳からスタートした企画であったが,進行が大幅に滞り頓挫してしまい,その後1996年にオリジナルの企画として再スタート,2002年11月に初版が発行された。本書は,単に医学辞典を看護辞典に翻訳した「ことば典」(辞典)ではなく,看護学や看護ケアに関する項目を網羅し,看護職に向けた機能的かつ実用的な事柄を集めた「こと典」(事典)を目指し,約5年の歳月をかけて完成した。 収載項目は35,000項目に及び,参照項目も10,000項目と,類書を圧倒的にしのぐ情報量であった。また第一線で活躍中の医学・医療・看護・保健,その他関連分野の専門家約960名が執筆し,情報の新しさや信頼性は高く,特に看護にかかわる概念,有機的体系,システム,実践包括内容などが詳細に解説されている。約800点の図表と鮮明な写真を駆使したビジュアルな編集も高い評価につながり,発行後まもなく教育現場や臨床現場で広く受け入れられることとなった。 初版の好評を受け,第2版に向けた準備が早々に開始された。基本的な編集理念に変更はなかったが,初版の優れた内容は受け継ぎ,さらに実践性を高める編集上の工夫を凝らした。発展し続ける看護学を取り入れるために,8年がかりで入念なチェック体制を整え製作を行っている。 第2版では,責任編集者が初版の22名から97名に増え,執筆者も1,600名以上となり,より専門的な領域を広くカバーできる体制となった。また,新進気鋭の専門家を加えることで,専門性や刷新性,正確性が高まった。最新用語を含めた約2,000項目が新規で追加される一方,収載項目は全体で約29,000項目に厳選され,項目の重要度によって記載にメリハリがつけられた。特に主要疾患・症状・機能障害に関する項目は大項目として解説を充実させ,実用性のある教科書としての使い方も可能にした。図表も初版の約800点から約1,000点へと大幅に増やし,印刷も2色刷となりビジュアルな事典に進化した。当時,時代の要請から市場に普及し始めていた電子辞書版との同時発行も話題となった。 現在,『看護大事典』は冊子体としての需要は徐々に減少し,電子媒体へと移行しつつある。そのコンテンツは『看護医学電子辞書』『医学書院Net Dictionary』にすでに活かされているが,今後は電子教科書など,より幅広いデバイスへの展開も期待されている。173

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