医学書院の70年
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日本のバブル景気後退期または後退末期から景気回復に転じるまでのいわゆる“バブル崩壊”は,ある一瞬に起こった現象ではなく,1990年末ごろからジワジワと浸透していった。こうした社会の動向は社の出版活動にも暗い影を投げかけた。社長の金原優から社員に示される経営方針「社員の皆さんへ」(1994年8月)には,「第52期の決算は別途報告しますが,大変厳しい内容となりました。和書部門も洋書部門も売り上げが減少したために,原価と経費が追いつかず欠損金の計上となりました。」との記載がある。当時,社は策定した中期経営計画に基づいて洋書業務の縮小を筆頭に大きな転換期にあった。翌年の「社員の皆さんへ」(1995年2月)では,各部門の経営方針のほかに「経費節減」の項目を建て,①冗費の削減,②業務の見直しによる無駄の排除,③会議の見直しによる効率化・時間短縮,④時間の有効管理の励行,を求めている。この方針実行のために,1995年6月1日の部長会議で具体的に検討。資金の効率的運用による生産性の拡大と経営改善を目指す以下の内容が全社員向けに通達された。 〔各種会合の縮小と見直し〕①特約店総会は都内で実務中心に開催し新年会は中止,②フランクフルトブックフェアの際の海外出版社招待パーティは中止,③年始の新年互礼会は中止,④雑誌の編集委員会の新年会・忘年会は中止あるいは現職のみの参加者に限定,⑤役員会は役員の実務関与を深めるべく夜間開催に変更する。 〔各種経費節減の励行〕①節電と資源保護や防災目的に執務室・事務機器の消灯を励行,②ペーパータオル・紙コップなどの消耗品を含めて資源を節約,③郵便状況の高速化の中で速達を廃止,生原稿は書留から簡易書留に変更,④学会等への出張者と業務の調整を実施,簡潔かつ迅速な出張報告の励行,⑤休出・残業を減少させ日常業務の効率化をはかり同時に社員の健康維持と豊かなライフスタイルの確立を目指す,⑥会議の招集者は議題・会開催日・開始時間と終了時間・開催場所を明示する,⑦編集会議の食事は質実的で失礼のないものとする。 上記の危機時を経て,現在は特約店総会の熱海開催,雑誌編集委員会の忘・新年会など一部復活した行事もある。しかし,当然ながら2011年3月の東日本大震災を契機として節電や冗費削減の努力は継続されている。左ページ:廃棄のためスプレーをかけられた洋書籍の山Opposite Page: Imported books to be disposed of.155

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