医学書院の70年
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1991.08.10『今日の診療CD-ROM』発行医学書院初のCD-ROM出版『今日の診療CD-ROM』がこの日発行された。電子出版を検討する「電子出版委員会」が社内に発足したのは,さらにさかのぼること4年前の1987年7月である。当時,『今日の治療指針』は診療のリファレンス書として高い評価を受けていたが,大学や配信会社からは電子的な提供が切望されていた。しかし,パソコン一式の価格は70~100万円と高価な時代であり,OSはWindows出現以前のMS-DOSで,操作には呪文のような「コマンド」を覚える必要があった。パソコンをつなぐネットワークもなく,大量のデータを読者に届ける方法はほぼないに等しかった。 ちょうどそのころ,CD-ROMという新しい媒体が出現した。音楽用CDを転用したCD-ROMは,プレスによって大量に,しかも廉価に複製し配布することができた。使用するにはパソコンに加え,約15万円もする専用のCD-ROMドライブを購入する必要があったが,640MBという当時としては巨大なデータを再生できることは,そのデメリットを上回る魅力があった。   この状況に鑑み同委員会で検討の結果,『今日の治療指針』を中心に,診断,検査,治療,薬剤などの7冊の書籍を1枚のCD-ROMに収録し,縦横に検索して表示する製品の案をまとめた。その後,実際に開発を行う組織として1988年5月,新たに「EPタスクフォース」が立ち上げられ,それまでの検討段階から開発の段階に移行した。Publication of Today’s Diagnosisand Treatment on CD-ROM 初版であるVol.1のパッケージ─毎年改版されているが,紙媒体との差別化のために「版」の代わりに「Vol.」とした。パッケージの中にはCD-ROM,操作マニュアル,5インチFD,3.5インチFD,ユーザー登録ハガキが入っている。紙媒体の書籍や雑誌が並ぶ書店において,このパッケージはかなり異質であった。The package of Vol.1 of To day’s Diagnosis and Treatment on CD-ROM.70 years of igaku-shoin146

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