医学書院の70年
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1990.01.15『治療薬マニュアル』発行当初は『今日の薬剤指針』として計画され,編集の過程で『治療薬マニュアル』となり,1990年1月15日に初版が発行された。臨床的な領域別に薬物治療の考え方,使い方,使用する際の注意点,処方例や臨床薬理的な解説をまとめたもので,臨床医・薬剤師に必要な情報を盛り込んだ薬剤マニュアルとして,現在では定番となっている。その構成は外来や勤務先でも簡便に使用できるよう配慮され,冒頭に用法・用量が記載される独特なスタイルをとる。 発行が計画された80年代後半は,まだ電子的な環境が整っておらず,製作には多くの薬剤情報を手作業で整理する必要があった。この作業は国立病院医療センター・医薬品情報室の古泉秀夫先生を中心とした薬剤師の先生方が担当された。そのほか,臨床的な情報は各々の領域の臨床家,臨床薬理学の先生方によって執筆されている。時代的には,ACE阻害薬,H2受容体拮抗薬,IFN製剤,ニューキノロン系薬など,現在も診療で主流を占める大型薬剤が開発された後であり,使用される薬の種類が増え,さまざまな最新薬剤情報を得たいという医療者の需要も増えてきたところであった。当時,市場を席巻していたのは『日本医薬品集』(薬業時報社)や『今日の治療薬』(南江堂)であったが,発行に当たっては類書を渉猟し,別の書籍で“二度引き”する必要のない内容とすることが重視された。 毎年の改訂では,新薬や改訂添付文書情報への対応のほか,図解薬理(2000年),化学構造式(2001年),薬価(2006年)の追加や,今日の治療指針の処方例との連携を図った付録別冊「重要薬手帳」(2009年)を添付するなど,時代の要請に合わせて対応を図っている。最近では薬学養成課程が6年制となり,長期の臨床実習期間が必須になったことで,さらに読者層が広がっている。上:『治療薬マニュアル1990』(初版)Above: The first edition of Manual of Therapeutic Agents published in 1990右ページ:『治療薬マニュアル2014』Opposite page: 2014 edition of Manual of Therapeutic Agents.70 years of igaku-shoin140

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