医学書院の70年
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1975.06.01Standardwerkeから標準医学教科書シリーズへStandardwerkeは,かつて1940年代半ばに出版されブルーラインの愛称で医学生に支持された『簡約医学双書(全29巻)』に続く大型企画であった。社長の金原一郎が提唱したもので,通常の教科書と全書の中間をねらい,各分野のエキスパートによる全国規模の分担執筆であること,大学院レベルの内容とすることが一貫した方針であった。しかし,シリーズ全体に総編集者を置いたわけではなく,個々の企画はある程度自主的に編集され,発行時期もまちまちであった。そこで発行点数がある程度揃った段階で,一連のシリーズとしてアピールするために“医学書院のStandardwerke”とした経緯がある。 StandardwerkeはドイツのSpringer Verlagが同社の代表的出版物につけた名称であるが,当時“日本のSpringer”を目指していた社はこれに倣い,社名を冠して命名した。シリーズは50冊を超え,実際,1960年代終わりごろまで社を代表する教科書群として発展した。 一方,Standardwerkeとは異なるコンセプトで1960年代半ばにスタートしたのが「標準シリーズ」である。対象は医学部学生で,最小限の知識を収載するというものであった。なかでも最初に刊行された『標準組織学』は,当初, B5判300頁程度の小振りな教科書として短期間で発行する予定であったが,折しも全国的な学園問題が起こり,著者の原稿執筆は思うに任せず,たちまちのうちに数年が過ぎてしまった。ようやく原稿が揃うとその規模は当初の計画を大幅に超えていたため,「総論」「各論」の2巻本とすることが決定,1975年6月1日に「総論」が発行された。ちなみに“標準”は,Standardwerkeを和訳したものである。その後,他の標準シリーズも続々と刊行され,1970年代から始まった医学部増設による学生数増の後押しもあり,最も定評のある教科書シリーズとなった。各巻はそれぞれ改訂が重ねられ,内容への信頼性,記載の網羅性,情報の更新性が読者から厚い支持を得ている。70 years of igaku-shoin098

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