医学書院の70年
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『新臨床内科学』は,米国のMcGraw-Hillから出版されているCurrent Medical Diagnosis and Treatmentに着想を得て出版された「内科学」書である。このCurrent Medical Diagnosis and Treatmentはわが国でも多くの読者を獲得していた定評ある臨床指針である。1972年の内科学会の際,日野原重明,阿部正和両先生の示唆により,『今日の治療指針』の姉妹編として活用すべき書という位置づけで構想されたのが『新臨床内科学』であった。 特筆すべきは,構想から2年半ほどの極めて短期間に発刊されたことである。しかも,従来「内科学」といえば,ある大学の内科教授が教室員や関連病院のドクターに声をかけ,まとめるのが通例であった。本書は,その慣行を破り,全国の医科大学で領域ごとに著名な先生方に執筆を依頼し,異例な多数の共同執筆となった。 本書の特徴は,何よりベッドサイドで役立つup-to-dateの最新知識を要領よくまとめていること,また,各種の内科疾患について,概念・臨床所見・検査所見・診断・鑑別診断・経過と予後・治療の順に統一的に記述されている点にある。初版の総論ではPOS診察記録の書き方に触れつつ,水・電解質の障害を述べるなど,全身を診るための新しい内科学はどうあるべきかという日野原,阿部両先生の理念が伺える。 発行から3年後の1977年の年間売り上げは,当時の金額で1億円を軽く超え,1974年の春闘で疲弊していた社の経営を支える大きな柱となった。『新臨床内科学』最新版The current 9th edition of Practice of Internal Medicine.097

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