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第3361号 2020年3月2日


iPSを用いた最先端治療,低価格化に挑む
令和元年度AMED再生医療公開シンポジウムの話題から


特別講演の演者として登壇した山中氏
 令和元年度AMED再生医療公開シンポジウムが2月5日,TKPガーデンシティ品川(東京都港区)にて開催された。本紙では,京大iPS細胞研究所所長の山中伸弥氏による特別講演「iPS細胞 進捗と今後の展望」の模様を報告する。

 「医学研究における成功の定義にパラダイムシフトを起こす必要がある」。講演冒頭にこう主張した山中氏は,従来,医学研究のゴールとされてきた「画期的な治療法の開発」の先を見据え,これからは「画期的な治療法を“低価格”で提供すること」が重要であると述べた。主張の背景には,免疫拒絶反応を起こしづらいとされる,患者自身の体細胞から作製するiPS細胞に膨大な時間と費用が掛かってしまう現状がある。

 そこで氏は,免疫拒絶反応が起こりにくいHLAホモ接合体を有した健康なボランティアドナーからiPS細胞を作製できるよう,再生医療用iPS細胞ストック開発に2013年より注力する。作製されたiPS細胞は,現時点で日本人の40%をカバーできるとされ,これまで大学15機関と企業5社に提供。パーキンソン病,加齢黄斑変性症,角膜疾患,心不全に対する臨床試験が実施中だという。その他,網膜色素変性症,脊髄損傷,関節疾患については臨床試験がすでに承認されており,近く実施される見込みと語った。

 今後の方針として氏は,ストックiPS細胞で対応できていない残り60%の日本人,また日本人以外への対応を課題に挙げ,「ゲノム編集などの遺伝子改変技術を応用しつつ,カバー範囲を広げたい」と結んだ。