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第3347号 2019年11月18日


Medical Library 書評・新刊案内


ジェネラリストのための眼科診療ハンドブック 第2版

石岡 みさき 著

《評者》中西 重清(中西内科院長〔広島市〕/21世紀適々斎塾塾長)

内科開業医のための眼科テキスト

 本書は内科開業医のための眼科知識を高める必読書である。「眼科医がいない状況で非専門医がどこまで診療するのか,どの時点で紹介するか」が的確に解説されており,自信を持ってお薦めしたい。

 眼症状の相談を受けると,総合病院ではなく,近くの信頼できる眼科開業医に紹介するのが常であろう。それは普段から顔見知りで,疑問点を何でも相談できる関係だからである。著者の石岡みさき先生は,内科開業医がどんな眼科疾患に困り,何を知らないかを熟知している。外来患者さんは高齢化して多疾患を併存し専門以外の知識が必要で,ポリファーマシー(多剤処方)を併せ持っている。「目が悪い」と言えばすぐに眼科紹介,「腰が痛い」と言えば整形外科紹介では,患者ニーズに応えることができない。経過観察ができそうなら「様子を見ましょう」と伝え,「こういう眼科疾患なので薬を出しておきますね」と答えられるようになりたい。

 本書は,第1部「救急・ER――『眼の患者』をどこまで診る? いつ紹介する?」,第2部「プライマリ・ケア――日常診療でよく出会う眼科疾患」,第3部「眼科あれこれ――知ってトクする眼の話」の3部で構成されており,広範かつ網羅的な内容である。

 巻頭の「眼症状の診断フローチャート」(複視,眼痛,充血)では,眼症状の診断ノウハウをわかりやすく理解できる。

 第2部「プライマリ・ケア」の眼科疾患は必読である。往診患者さんも増えており,第7章「寝たきり高齢者の眼科治療」では,継続か中止すべきかの薬剤選択は参考になる。第10章は「眼に症状の出る全身疾患」について記載されているが,いかに多くの内科疾患が眼症状を有するかが理解できた。花粉症やドライアイ治療を行うことも多く,自信を持って点眼薬処方ができそうである。「花粉症に抗ヒスタミン点眼液は即効性があり,1月末から点眼が望ましい」「花粉症の時期はコンタクトレンズを休んでもらったほうが症状は出にくくなり,どうしても使用したいのならワンデータイプが楽」「ドライアイとアレルギー性結膜炎の軽症例の鑑別が難しい」ということも知った。

 第3部「眼科あれこれ」で,眼科を最初に受診する他科疾患も目新しい知識である。外来で相談を受ける眼瞼下垂のほとんどは加齢性であり,とても増加している。眼科に頭痛で受診する患者は,ほとんどが眼性疲労である。13編の「COLUMN」も読者を楽しませる,とても興味深い内容だ。巻末の付章には,基本的な点眼薬が写真付きで掲載されてあり,とても役立つ。本書は電子書籍も販売されており(医書.jp,URLはhttps://store.isho.jp/),iPadなどのタブレット端末で閲覧すれば,画像は奇麗に拡大可能で,視力障害のある私にはとても助かる。

 最後に,初版刊行から3年目に第2版を執筆された石岡先生の活力と努力に感謝するばかりだ。

A5・頁216 定価:本体3,400円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03890-4


双極性障害 第3版
病態の理解から治療戦略まで

加藤 忠史 著

《評者》渡邊 衡一郎(杏林大教授・精神神経科学)

豊富な経験と知見に基づく圧倒的な説得力を持った一冊

 本書は,現時点における双極性障害のまさに全てが詰まっている,と言っても過言ではない。双極性障害の歴史に始まり,疾患の概要,診断や治療戦略の立て方,さらには最新の生物学的知見による種々の病態仮説に至るまで幅広く網羅されており,引用文献だけでも813篇にのぼる。この著者の豊富な経験とこの膨大な知見に基づいた本書は,圧倒的な説得力を持っているといえよう。

 評者がまず驚いたのは,本書の礎となる初版は1999年に発表されているのだが,これは著者が医歴11年目にして執筆したということである。当時は,まだ双極性障害に対する理解も不十分であった中,医歴11年目にしてこのような成書を完成させたことに驚きを隠せない。このことからも,著者が双極性障害研究の第一人者であることは間違いない。

 初版の発表から20年,双極性障害についてはさまざまな議論がなされ,かつてない程に注目を集めてはいるものの,現状としては未だ定説となるものが少ない。そんな状況の中出版されたこの第3版は,異なる説が存在する場合は両論を併記し,さまざまな病態の記載に続いて症例を提示するということで,発展途上とも言えるこの疾患の“今”を非常にうまく表現している。一般的な成書は,「この疾患の症状はこのようなものである」,という記載で構成されていることが多いが,字面だけでは精神科の専門医でさえも実臨床でのイメージが湧きにくいことがある。しかし本書では,疾患ごとの症状に加えて症例を見ることでその病態をより深く,またどのように経過していくかをより具体的に知ることができる。さらに,混沌としているエビデンスに関しては,著者の丁寧な解説が入り,どのようにエビデンスを読み解くべきか,理解を深めることが可能となっている。

 双極性障害における名著としては,洋書ではあるが2007年に出版されたGoodwinとJamisonによる『Manic-Depressive Illness:Bipolar Disorders and Recurrent Depression』が一般的に有名であるが,本書はもはやそれを上回る名著といってもよいのではなかろうか。

 この分野の研究や治療は日進月歩である。数年後さらなる進化を遂げるであろう第4版を期待せずにはいられない。いずれにせよ,本書は双極性障害治療に携わる医療者の必携の一書である。読み応えのある一冊であるが,これまでの経験や知識の再確認ができるとともに,新たな視点を得られるかもしれない。ぜひ臨床や研究の傍らに置き活用していただきたい。

A5・頁440 定価:本体5,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03917-8


脊髄損傷リハビリテーションマニュアル 第3版

神奈川リハビリテーション病院 脊髄損傷リハビリテーションマニュアル編集委員会 編

《評者》柴田 八衣子(兵庫県立リハビリテーション中央病院リハビリ療法部/作業療法士)

学生の導入書にも,経験者の知識のアップデートにもお薦め

 日々の臨床で,脊髄損傷の患者さんを初めて担当し,悪戦苦闘している若手スタッフを見ながら,彼らに役立つ良い教科書はないかと探していたところ,本書に出合いました。

 前版に当たる第2版は,院内書庫にも蔵書しており,薦めることが多かったのですが,改訂された本書は,医療者の思考や悩みやすい部分を解決するためにさらに配慮された内容で,まさに「実践書」となっていました。医師・看護師・理学療法士・作業療法士などの医療職種だけでなく,脊髄損傷者の生活にかかわる多くの職種の方々が執筆されており,多角的な視点に触れることができます。

 私は,総合リハビリテーションセンターに勤務しており,ここでは障害者病棟や障害者施設で脊髄損傷者の回復期から在宅復帰までの支援を担っています。脊髄損傷者に対するリハビリテーションを行うためには,疾患の特徴やさまざまな合併症とその対処方法など基礎的な知識が必要不可欠であり,評価や訓練方法も疾患特有のものが多くあります。

 現在,脊髄損傷者の専門的治療やリハビリテーションを行っている施設は限られているため,回復期リハビリテーション病棟や在宅などで初めて脊髄損傷者とかかわり,悩んでいるという話をよく聞きます。これは,養成校で疾患について学習しても,病院での実習などで実際の患者さんと出会うことが大変少なく,脊髄損傷者の病態や生活のイメージが持ちにくいからではないでしょうか。

 本書では,急性期から家庭復帰・就労支援までのリハビリテーションの流れが体系的に,かつ幅広く解説されています。また,医学的知識から福祉用具・住宅改修,スポーツ,社会資源制度など生活支援に必須の内容が網羅されており,患者さんへの紹介にも役立てることができます。実際のリハビリテーションの場面がカラー写真やイラストで紹介されており,臨床の参考にとどまらず,担当患者さんの受傷時からの治療や今後の流れを把握するには最適だと感じました。また,近年増加している高齢不全頚髄損傷者への対応や再生医療・ロボットを使ったリハビリテーションなど最新の知見も載せられており,学生さんへの導入書としてはもちろん,経験を積み重ねた方の知識のアップデートにも活用できる本当にお薦めできる一冊です。

B5・頁336 定価:本体5,200円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03696-2


漢方処方ハンドブック

花輪 壽彦 編

《評者》田原 英一(飯塚病院東洋医学センター漢方診療科部長)

初心者向けに丁寧でありながら上級者でも飽きない深さ

 漢方界で北里大東洋医学総合研究所(北里東医研)の花輪壽彦先生を知らない人はいない。いわゆる「レッスン」書()で漢方に引き込まれた者は枚挙にいとまがない。その花輪先生が日本東洋医学会学術総会の初学者向け「漢方入門セミナー」の「補助テキスト」にと企画されたのが本書であるという。否,これは「補助」などという手ぬるいものではない。北里東医研の,花輪流の奥義書である,と私は感じた。以下になぜどうしてそのように感じたかを記す。

 漢方の基本概念が極めて簡潔に記載されているその直後に,いきなり「Advanced Course」として,切診の極意が記されている。続いて畳み掛けるように「全身症状のとらえかた」が記されているが,私は個々の症状・症候をどのように解釈するかを,ここまで丁寧に記した臨床主体の本をほとんど知らない。しかも八味丸で食欲改善なんて……知らなかった。初学者には難しい面もあるが,中級者から上級者は大いにうなずくであろう。

 「処方の実際」が本書の中心であり,40の項目に関して,全身,全年齢の症状・症候に対応している。入門書であればエキス剤にあるものが中心になりそうだが,レアな処方まで当たり前のように鑑別に挙げられている。こんなに鑑別があったら混乱するのではという心配を持ったが,虚実の証で分類し丁寧に解説している。その一方,「小児の『証』を考慮しなくてもよく効く処方」には度肝を抜かれた。この柔軟さは何なんだ? また,そこまで書くのだ,と驚いたのが「婦人科三大処方が無効なとき,副作用が出たときの対応」である。基本と応用が変幻自在にちりばめられている,この懐の深さも本書の特徴ではないだろうか。

 本書の各所にちりばめられた「column」にも注目したい。私が特に感心したのは,「漢方治療における上級者」「消化器と不眠」「慢性副鼻腔炎の寒熱」などである。時には症例報告,時には臨床のこつ,時にはEBM,時には主張。「column」は少なくとも40以上。漢方上級者をめざすには全項目読破をめざすのが捷径であろう。上級者向けの「Advanced Course」も20以上。エキス剤にない処方をエキス剤を組み合わせて作る方法は参考になる。上級者でも飽きない。

 後半に生薬に関連するドーピングや副作用のまとめ,ミニマムな鍼灸があり,コンパクトな医史学は専門医をめざす人たちの勉強の材料として,多すぎず,少なすぎず,ちょうど良い量と質である。裏表紙を開くと漢方関連年表があり,専門医受験には大いに重宝するであろう。

 実は本書の「キモ」は最後に鎮座する「あとがきにかえて」である。ここには「あの処方」が全方向から詳述されている。「ボランティア活動ができない」には笑った。しかし,あとがきなのに一度くらい立ち読みしても頭に入らないくらいの分量だ。

 一つ二つ,本書へ不満を述べたい。まず,文字が小さい! その上500ページ近いボリュームは50を超えたおじさんの目では読破に10日を要した。次に,われわれが実践している飯塚病院風のところがない! 当たり前だ。王道が記載されている。よほどの寒冷地でなければ附子の使用は少なめにと,学んだ。少なめにと記載しておきながら,この『漢方処方ハンドブック』は「漢方の臨床を極めようとする者には,量,質ともに十分すぎる!!」と私は声を大にして申し上げたい。

:『漢方診療のレッスン』のこと。増補版が2003年に金原出版から刊行されている。

B6変型・頁488 定価:本体3,800円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03914-7


緑内障道場
診断・治療の一手ご指南

木内 良明 編

《評者》杉山 和久(金沢大教授・眼科学)

「緑内障道場」のここが面白い

 本書を読んでまず感じたことは,「緑内障道場」はまさに「症例から学ぶ緑内障」の書であることです。本書は,日常の緑内障診療で遭遇するさまざまな症例を体系的に提示して,その解決方法を指南役のエキスパートの先生の経験やエビデンスに基づいて解説する方式で,各症例の最後に師範(木内良明教授)からの一言(コメント)でまとめられています。これは,私の緑内障の研究方法である「症例から学び研究する緑内障学」に通ずるものを感じます。

 緑内障外来は緑内障を勉強する教室(道場)であり,緑内障症例である患者さんこそが,緑内障を教えてくれる先生という思想を,私は本書から感じ取りました。患者さんの病態をどう解釈し,治療方針を立てるかについて,指南役のエキスパートの先生方(主に関西緑内障道場,中四国緑内障アカデミーのインストラクターの先生)が解説しますが,これがなかなかユニークで読んでいて面白いです。師範の一言も「緑内障の俳句」があり,ほっと一息つきます。さらに,この書に提示された症例の中には多くの研究のseeds(種)があります。症例から発生した疑問点を解決するための研究のヒントが満載です。

 本書を読んで感じることは,緑内障の対応に苦慮した典型症例を「サイエンスの目」で観察していること,ここにさまざまな疑問点が生じます。そしてそれを眼科学という学問の「眼」で考察し,現在のエビデンスに基づいた対処法を提示してます。これがまさに学問としての緑内障学でしょう。そして,私はここに記載されているさまざまな症例から,研究の「芽」,すなわちseeds(種)が生じて,新たな研究へと発展していくことを念じてやみません。これこそが私の診療の哲学である「サイエンスの目,眼,芽」であるからです。

 本書は緑内障外来で経験するさまざまな事象が体系的にまとめられているので,通読して面白い本だと思います。私もこの書を手にして,一気に読んでしまいました。それぐらい面白く勉強になる本です。これを,これから緑内障を勉強する人だけでなく,緑内障外来で悩んでいる人,緑内障を研究している人にも推薦したいと思います。

B5・頁288 定価:本体9,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03840-9

関連書
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