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第3342号 2019年10月14日


Medical Library 書評・新刊案内


甲状腺細胞診アトラス
報告様式運用の実際

坂本 穆彦 編

《評者》菅間 博(杏林大教授・病理学/日本甲状腺病理学会理事長)

甲状腺細胞診に携わる検査技師,病理医,臨床医に

 このたび,坂本穆彦氏の編集による『甲状腺細胞診アトラス――報告様式運用の実際』が発行された。

 編集の坂本氏は細胞診断学の重鎮であり,これまでさまざまな細胞診に関する書籍を発行している。特に甲状腺の細胞診に関しては,坂本氏は本邦のパイオニアと言っても過言ではない。本書の目玉である「診断カテゴリーに特徴的な細胞所見」は,坂本氏の教授を受け,甲状腺細胞診の第一線で活躍する細胞検査士が執筆を担当している。選び抜かれた多数の細胞写真とともに,日々の業務の中で役に立つ診断のポイントが解説されている。甲状腺に特化した細胞診アトラスとして価値が高く,甲状腺の細胞診に携わる全ての検査技師,病理医,臨床医にとって有用と考えられる。

 本書の「診断カテゴリー」は,「甲状腺癌取扱い規約」第7版(2015年)の細胞診の報告様式の判定区分である。甲状腺細胞診の報告様式は,国内の施設間で差が見られる。取扱い規約第7版の報告様式は濾胞性腫瘍を「鑑別困難」から切り分け,その良悪性判定を保留するべセスダシステム報告様式に準じている。「総論」で編者が主張するように,第7版の報告様式が,現時点では本邦の甲状腺診療に最も適していると考えられる。この報告様式の運用の実際を詳述する本書が,その普及に貢献し,国内の報告様式が統一されることが望まれる。

 本書の「総論」の後半は,廣川満良氏が担当している。廣川氏は甲状腺の超音波ガイド下に穿刺吸引細胞診検査を自ら行い,診断する病理専門医である。甲状腺細胞診の検体採取と検体処理の具体的な方法を解説している。甲状腺の細胞診の初心者が陥りやすい基本的過ちについても記載している。甲状腺の細胞診症例の少ない施設において大いに参考になる。さらに,液状処理法(liquid-based cytology;LBC)の導入についても解説している。LBCはさまざまな利点があるが,蛋白の免疫染色による発現解析や遺伝子DNAの変異解析にも有用である。今後,LBCは普及すると考えられるが,その際の鏡検上の注意点についても触れている。

 本書の第3章では,「NIFTPをめぐる諸問題」について解説されている。2017年に刊行された甲状腺腫瘍のWHO分類(第4版)では,新たに「境界悪性腫瘍」の概念が導入された。この概念の流布が,本邦の甲状腺診療に混迷をもたらす可能性が指摘されている。このため「境界悪性腫瘍」のうち特にNIFTPについては,米国における導入の経緯と,本邦における診断と治療上の問題点が,甲状腺を専門とする病理医と臨床医の立場から整理,解説されている。今後,NIFTPを含む「境界悪性腫瘍」の扱いについては,本解説事項を参考に,遺伝子異常などのデータを加味して検討されるものと考えられる。

 現在,「甲状腺癌取扱い規約」の改訂作業が進められている。第8版でも第7版の細胞診の報告様式の判定区分は維持される予定である。本書の甲状腺細胞診の手引きとしての有用性は変わらない。

B5・頁256 定価:本体10,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03909-3


蛍光眼底造影ケーススタディ
エキスパートはFA・IA・OCTAをこう読み解く

飯田 知弘 編

《評者》髙橋 寛二(関西医大主任教授・眼科学)

見事な写真と解説で実践的な蛍光眼底造影を学べる

 近年,眼底疾患に対してさまざまな原理に基づいた画像検査法が発達してきており,一つの眼底疾患に対して多面的に種々の画像検査を行うことによって,より確かに,そして精密に臨床診断を行うmultimodal imagingが主流となってきている。眼底疾患に対して造影剤を用いて異常を検出する蛍光眼底造影は,フルオレセイン蛍光眼底造影ではおおよそ60年,インドシアニングリーン蛍光眼底造影では約40年の歴史を持つ画像検査であるが,これらの造影は,現在まで実に多くの眼底疾患の疾患概念の確立や病態解明,治療評価に深く寄与し,眼底画像診断のgold standardとしての歴史を誇ってきた。しかし近年,精度の高い光干渉断層計(OCT)や光干渉断層血管撮影(OCT angiography)をはじめとする新しい画像診断に目を奪われ,蛍光眼底造影の読影の系統的な学習はなおざりにされる傾向がある。

 本書では,蛍光眼底造影の基礎が学べる総論に続き,25項目の疾患・病態について,「Point」,「疾患の概要」,「ケースで学ぶ所見の読み方」,「押さえておきたい読影ポイント」,「バリエーションとピットフォール」の5つの面から蛍光眼底造影の読影ポイントと知識がエキスパートの筆者の先生方によって要領よくまとめられている。提示症例とその造影写真,その他の画像検査写真は全て文句の付けようがない典型的で綺麗な画像である。このテキストを通読することによって,見事な写真と解説を基に,極めて実践的な形で蛍光眼底造影の知識を自然に学ぶことができる。さらにかなりの項目では,眼底自発蛍光や最新のOCT angiographyの画像も解説の中に組み入れられており,multimodal imagingの観点から病態の新しい解釈を学ぶこともできる。

 蛍光眼底造影を初めて学ぶ方,そしてmultimodal imagingの観点からいま一度系統的に蛍光眼底造影を学び直し,診断力をアップしたい先生方に広くお薦めしたいニューテキストである。

B5・頁312 定価:本体9,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03841-6


レジデントのための画像診断の鉄則

山下 康行 著

《評者》柴田 綾子(淀川キリスト教病院産婦人科)

画像診断を超えた200個のクリニカルパール

 「画像検査を学ぶ本だ」という予想をはるかに超えていた。救急室や外来で出合う疾患の特徴的な画像が次々と登場し,経験知が詰まったクリニカルパールがテンポよく紹介された本であった。画像診断は「知っていれば診断できる」ことが多い。逆に言うと,知らなければ見過ごしてしまう所見がたくさんある。この本は,あなたの「診断できる」を確実に増やしてくれる一冊である。

 この本がすごいのは,画像診断の「周辺」までクリニカルパールでカバーしているところだ。第1章「画像診断総論」で取り上げられている以下などは,普段なら難しくて読み飛ばしてしまいそうな内容だが,簡潔なメッセージ(鉄則)とまとめで読みやすくなっている。

・画像診断を行う前に(そもそも画像検査が必要なのか? 事前確率は?)
・画像検査法の基礎(CT/MRIの仕組みや設定,オーダーのしかたは?)
・画像検査の選びかた(PETやシンチグラフィーが必要なときは?)

 各章は臓器別になっており「これは知っておくと役立つ!」情報が,写真とともに解説されている。知っていれば一発で診断できるsnap shot diagnosisも盛りだくさんだ。通読しなくても,夜寝る前にランダムにページを開いてパラパラ目を通すだけで勉強になる。

 ほ~!と思った鉄則を3つ紹介すると

・胸部 鉄則6:呼吸苦のあるすりガラス影を見たら,急性好酸球性肺炎,過敏性肺臓炎,薬剤性肺障害,びまん性肺炎を考える
・頭頸部 鉄則9:甲状腺腫瘤の良悪性の鑑別は画像に頼らない
・心血管 鉄則9:若年者で,大動脈とその分枝の壁肥厚,狭窄を見た場合は高安動脈炎を考える

など,読影だけにとどまらず,画像検査の限界や鑑別診断の挙げ方を学ぶことができる。

 この本を読めば,画像検査の読影力だけでなく「臨床現場で画像検査を上手く使いこなす力」がアップする。産婦人科医としては,妊娠中のCT検査(放射線被曝)についての解説や,子宮や卵巣腫瘍のMRI画像の解説がとてもわかりやすく,感動した。

 200個のクリニカルパールとsnap shot diagnosisの写真で,明日からのあなたの「知っている」を増やしませんか?

B5・頁240 定価:本体3,800円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03821-8


血液病レジデントマニュアル 第3版

神田 善伸 著

《評者》前田 嘉信(岡山大大学院教授・血液・腫瘍・呼吸器・アレルギー内科学)

便利な図表が充実。重要なポイントだけを集約したマニュアル

 この『血液病レジデントマニュアル』はすごい。

 まず本書の特徴であり,また最も評価したい点として,図表が素晴らしい。診断基準はどうか,どういう鑑別診断を考えるべきか,どういう治療をすべきか,日常診療において必要かつ十分に,そしてわかりやすく記載されている。巻末には各抗がん剤の注意事項,薬剤投与量の調節,有害事象グレードが添付されている。これほど便利な図表が,これほどに充実しているマニュアルは他に知らない。素晴らしい,の一言である。

 本書の次の特徴は,現場に徹している点であろう。患者さんを目の前にして,どのように治療をしたらよいか,その具体的な方法が丁寧に記載されている。何mgを何日間,そして重要かつ見落としがちなピットフォールが注意書きされており,これがまた大変に役に立つ。標準的な治療法のみならず,トラブルシューティングも捕捉されており,現場の医師にとって非常に頼もしい。

 本書はレジデントマニュアルであるが,レジデントの範疇を超え,血液内科医,血液専門医をめざす先生にも幅広く役立つ内容となっている。図表の合間を埋める文章には,最新の疾患概念と治療法のエビデンスがちりばめられ,血液専門医でも勉強になり,またレジデントには血液学の奥深さと魅力の一端が垣間見えるだろう。最重要なポイントだけを集約しているからこそ,つい隣のページにも目が向き,未知なるものへの興味を広げるきっかけになる。読むものを広大な血液の世界へ自然に導くであろう。

 医師は患者さんを治すのが仕事であるが,同時に社会の構成員であり,その在り方に責任を負うことになる。患者さんにどのような経済的負担を掛ける治療であるか,また,高額な薬剤を使用することがわが国の診療報酬制度を持続不可能にしないか,医師は考える必要がある。本書には薬価が記載されていたり,治療方針について経済的な観点での推奨,警鐘が盛り込まれていたりして著者の思いが垣間見られる。

 最後に,インターネットで簡単に知りたい情報が手に入る時代となったが,情報にアクセスできることと,知識として実践することは別である。インターネット時代にあっても本書をポケットに入れて,診療の合間にペラペラと紙をめくり自分のものにする。本書は,効率的な情報源としてだけでなく,血液診療上のベースとなる知識を身につける意味でも最適であると,強く推薦する。

B6変型・頁504 定価:本体4,200円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03804-1


診断力が高まる
解剖×画像所見×身体診察マスターブック

Sagar Dugani,Jeffrey E. Alfonsi,Anne M. R. Agur,Arthur F. Dalley 編
前田 恵理子 監訳

《評者》志水 太郎(獨協医大主任教授・総合診療医学)

基礎と臨床をつなぐ素晴らしい着眼点の本

 この本は「ありそうでなかった」画期的な視点の本であり,基礎と臨床をつないでくれる有意義な書籍と思います。4人の編者のうちクリニカルフェローが2人という(カナダおよび米国)チーム編成が,北米大陸の教育層の厚さを物語ります。また,NEJMのClinical Problem-SolvingでおなじみのJoseph Loscalzo先生(Harvard/Brighamチーム)も参画して書かれた臨床解剖の本です。原著のサブタイトルはフィジカルと画像のintegrationということで,邦題もその本質を見事に翻訳された「解剖×画像所見×身体診察」となっています。

 本書は,核となるChapter 1,臨床での統合的アプローチ,そしてそれに続くChapter 2からの各論からなります。それぞれの各論の章は基礎医学というよりはむしろ,より臨床的な事項がメインになった構成であり,そこに画像所見と解剖図譜がバランスよく配置されていて,臨床画像にはなれない低学年の学生でも,スムーズな形で画像の読み方について解剖を基礎として学ぶことができる構成と思います。各論の章は,症例を基にしながら,初期評価,器官系の概要,症例集という三段構成になっていて,スムーズに基礎→臨床の学習に入っていくことができます。

 しかし何といってもこの本で秀逸なのはChapter 1でしょう。「統合的な医学アプローチへの導入」という見出しから始まり,ある症例を提示され,医師がどのように考え,何を観察し,どのようなことに気を配るのか,ということが丁寧に書かれています。おそらく医学部低学年者を対象としたようなスタートですが,2ページ目からは身体診察,数ページにわたるバイタルサインの記載へとつながり,所見と解剖学的な表現の記載,さらに症例が進み画像検査の説明とその所見,そして検査の結果の病態生理と結果の科学的解釈(感度・特異度)まで触れています。一つのケースからこのように有機的に学ぶ,という学び方のお手本のような構成になっています。本書評の冒頭で,このような書籍はなかなかないと述べたのは,特にこのChapter 1のような,「ありそうでなかなかない」内容の展開からです。

 評者は臨床系の大学教員である一方,基礎医学(解剖学)の教壇に立つこともあり,臨床の観点から基礎に触れるということを教員の側から実感する立場の医師です。例えば先日の授業や実習ではまさに,学生の古くからのニーズである,基礎と臨床が直結したような勉強がしたいという声を肌で感じました。かくいう自分も,十数年前英国の医学部に留学させていただいた折,臨床医学の実習やミニレクチャーが,常に基礎医学の知識に戻って教えられていた教育現場を現地で見て同様の想いを強くした経験があり,その記憶からも,本書を手にしてその悩みに一条の光が差したような気がして,とてもうれしい気がしました。

 訳も自然でとても読みやすいです。特に低学年の学生,そして,医学教育をどのように教えようかと悩む教員の先生方にも大推薦の一冊です。

B5・頁408 定価:本体5,800円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03627-6


内視鏡下鼻副鼻腔・頭蓋底手術[手術動画・3DCT画像データDVD-ROM付] 第2版
CT読影と基本手技

中川 隆之 編

《評者》戸田 正博(慶大准教授・脳神経外科学)

経鼻内視鏡手術に興味を持つ全ての医師へ

 最近の時代背景として,医療の役割・機能分化が進み,より高度な専門的知識,技術が求められています。専門医,技術認定などの制度化も進み,若手医師は技術習得に目を向けがちですが,困難な手術の成功には,正確な診断(画像解析)と手術解剖の深い理解に基づく論理的思考が重要です。

 また,頭蓋底疾患は耳鼻咽喉科,形成外科,脳神経外科など複数の診療科が協力することにより,治療成績を大きく向上させてきた歴史があります。最近では,耳鼻咽喉科と脳神経外科の合同で行われる経鼻内視鏡頭蓋底手術は,画期的な低侵襲手術として,これまで到達不可能であった部位にもアプローチ可能となり,治療概念を大きく変えました。一昔前までは極めて治療困難であった疾患も,最近では合併症なく根治性の高い治療が行われるようになってきました。医療の役割・機能分化が進む中で,困難な疾患に対して,診療科の枠を越えて治療に取り組むチーム医療こそ,今後求められる医療の形ではないかと思っています。

 さて本書ですが,内視鏡下鼻内手術に関して「初心者でも行えるわかりやすいプランニングと安全かつシンプルな手術テクニック」を基本概念として作成されています。さらに応用編として,経鼻内視鏡頭蓋底手術に関しても同じ概念で解説されています。耳鼻咽喉科医が基本習得する鼻・副鼻腔解剖および手術もわれわれ脳神経外科では特殊な分野で,これまで系統立って学ぶことができる手術書はなかったため,本書がとても良い指南書になっています。

 本書を読んで興味深いと思ったことは,それぞれ意図することは同じでも違った表現で記載されていることであり,何気ない気付きがあることです。手術を理解,習得していく過程は個々で異なり,それぞれの段階でこの教科書を開いて確認することにより新たな気付きがあり,深い理解へつながるのではないかと思います。

 具体的な点として,まず各項目の冒頭にポイントが列挙され,自分の理解を確認できることが特徴です。鼻・副鼻腔は個人差が大きいため,手術解剖が複雑であり,術前画像の理解が重要です。基本編は全てしっかり読んで理解を深める構成に,応用編は,熟練の医師においても術前の確認に役立つ構成になっています。さらに解剖と手術手技をわかりやすく伝えるため,明解な図譜が豊富に盛り込まれており,直感的な理解を助けてくれます。テクニックを中心とした解説では,写真や図ではなかなかわかりづらい点も動画があることで理解しやすくなっています。経鼻内視鏡手術に興味を持つ全ての医師にぜひ読んでいただきたい教科書です。

A4・頁368 定価:本体15,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03839-3

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