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第3325号 2019年6月10日


【FAQ】

患者や医療者のFAQ(Frequently Asked Questions;頻繁に尋ねられる質問)に,その領域のエキスパートが答えます。

今回のテーマ
画像診断オーダーで押さえておきたい3つのコツ

【今回の回答者】山下 康行(熊本大学大学院生命科学研究部放射線診断学分野 教授)


 日常臨床において画像診断のウエイトは非常に大きく,救急疾患から慢性期の疾患まで多くの患者さんに対し検査が行われます。また,カバーする領域も全身にわたるため,読影のみならず,検査のオーダーでも何を選択すべきか迷ってしまうのではないでしょうか。

 そこで今回は,研修医が押さえておきたい画像診断オーダーのコツについて説明します。


■FAQ1

画像診断の検査機器にはそれぞれどのような得手不得手がありますか。使い分けを考える上でのポイントは何でしょうか?

 臨床でよく使われる画像診断法には単純X線,超音波,CT,MRI,PETがあります。単純X線は比較的簡便で検査価格が安いメリットがあるものの,読影はかなり難しいです。現在でも胸部や骨,乳腺では必須の検査ですが,その他の臓器では診断的価値は高くありません。

 超音波はベッドサイドの他,最近では整形外科領域でもよく使われます。しかし,腹部,乳腺,頸部など施行できる部位が限られています。

 CTやMRIは全身どの部位でも施行可能です。CTは検査時間が短い,MRIはコントラストが高いという利点がある一方,CTは放射線被曝があり,MRIには検査に長い時間を要すなどの欠点があります。またコストも他の画像診断法より高く,その適応については厳密に検討した上で判断する必要があります。

 PETなどの核医学検査は生体機能を見るのに優れた検査です。各部位で一般的に選ぶべき検査法についてはで大まかに示したとおりです。

 画像診断検査の大まかな選択

Answer…画像検査機器の得手不得手を理解し,部位・疾患・コストに応じた適切な検査を選択できるようにしましょう。部位や疑われる疾患によって用いる検査機器や方法に多少の違いがありますので,実際の検査のオーダーに関しては画像診断のテキストなどを参考にしてください。

■FAQ2

賢く適切に画像診断をオーダーするために心掛けるポイントはどのような点ですか?

 診断が付かないからと言って,確定診断を得ることを目的に,むやみに画像診断を行うのはよくありません。なぜなら,画像診断には被曝やコストなど負の側面も伴うからです。患者さんにとってのベネフィットとリスクのバランスをまずは考える必要があります。

 一般に画像診断が有用なのは診断に迷うケースです。具体的には検査前の確率が20~50%程度の場合と言われています(図1)。

図1 検査前確率の考え方(文献1より作成)
検査前確率が低い場合は検査リスク>ベネフィットとなり,検査の意義は低い。検査をしなくても診断がほぼ確実な場合は,直ちに治療を行うべき。20~50%の検査前確率の場合,画像診断の有効性が高い。

 冠動脈CTを例に取ると,若年成人でリスクファクターがなく,虚血性心疾患を疑う症状もない「検査前確率が非常に低い」患者に対し,狭心症を心配してCT検査を施行する場合には,被曝,造影剤副作用の可能性,検査コストなど検査のリスクがベネフィットを明らかに上回ります。一方,狭心痛があり,心電図上も狭心症を疑うハイリスクな場合はCTの結果にかかわらず,最初からカテーテル検査を選択すべきです。検査前確率が高い場合は,検査結果がその後のマネジメントに影響を与えることはありません。このように中程度のリスクがある患者において画像診断はマネジメントに大きな影響を及ぼします。つまり,本ケースの場合,検査の結果によって冠動脈CTの適応もあり得ることになります。

 検査をオーダーする際には,患者に何らかのvalueをもたらすかどうかを十分に考えて行う必要があります。万が一の場合を考え,防衛的に「念のためにやっておこう」という姿勢は正しくありません。

 また,CTなどの撮像範囲を広げて無関係の範囲を含めて撮影すると,その部位では重篤な疾患の検査前確率が低いために偽陽性率が大きく上昇する危険性があります。偽陽性所見があると,それに起因する不必要な治療やフォローアップ,あるいは患者の不快感や不安などが惹起される可能性も増加してしまいます。

Answer…画像検査は検査のコストが比較的高く,被曝や造影剤の副作用によるリスクを伴います。一方で,検査前確率が中程度の場合,valueが高くなります。このことを押さえた上で,患者にベネフィットをもたらすかを考え選択しましょう。

■FAQ3

妊婦や小児にどうしても画像検査が必要な場合,注意すべき点は何か教えてください。

 やはり被曝が心配ですので,例えば急性腹症などでは通常,超音波を第一選択とすべきです。しかしながら,妊婦であれば妊娠週数が進むにつれて子宮のサイズが大きくなるため,超音波で虫垂を同定することは難しくなり,超音波検査の診断能は低下します。

 頭部の検査ではできるだけMRIが望ましいのですが,救急の頭部外傷などではCTを必要とする場合があります。欧米では小児の頭部外傷時のCTの適応についてルールが決められていますが,わが国では不必要な検査も少なくないようです。

 一般的に微量なX線であってもその分だけ害があり(閾値無し直線仮説という),少量のX線であってもできるだけ被曝量は少なくすべきと考えられています。特に若年者では成人より平均余命が長く,かつX線に対する感受性が高いことが知られており(図2),可能な限りX線照射量を減らす必要があります。

図2 年齢とX線被曝による癌のリスク(文献2より作成)
LAR(lifetime attributable risk)=100 mGy被曝した場合の生涯の発癌リスク。男性も女性も若年者ほど,被曝に伴う癌のリスクが高い。

 最近では,CT被曝によって小児の発癌リスクが上昇するとの論文が相次いで発表されています。欧州からの報告でも小児CTの30%は超音波やMRIなどの放射線を使わない検査に代用可能と報告されています。

 妊婦においては,妊娠4~10週の器官形成期には胎児の奇形のリスク,10~17週では中枢神経の障害を起こすリスクが上昇し,その閾値は100 mGyとされます。通常は1回のCT検査で100 mGyを超える被曝はありませんが,この期間のCT検査は極力避けるべきです。

Answer…小児や妊婦であっても臨床的にどうしてもCT検査が必要なケースはあるでしょう。X線への感受性が高いからといって,検査を行わないのは誤りであり,常にケースバイケースで考える必要があります。妊婦や小児にX線を用いた検査を行う際は,As low as reasonably achievable(ALARA)原則を遵守し,適応の正当化と線量の最適化が重要です。

■もう一言

 米国をはじめ世界各国にて,エビデンスに基づく賢明な医療選択を行おうというChoosing Wiselyキャンペーンも始まっています。検査のリスクとベネフィットを理解し,患者さんに必要な検査は何か,検査前確率はどうかを考えながら画像検査を賢く選び,使うことが重要です。

参考文献
1)山下康行.レジデントのための画像診断の鉄則.医学書院;2019.
2)Radiographics. 2015[PMID:26466180]


やました・やすゆき氏
1981年鹿児島大医学部卒業後,熊本大医学部放射線科入局。89年同大病院放射線科,米テキサス大MDアンダーソンがんセンター,90年熊本大病院放射線科講師を経て,2001年同大医学部放射線医学講座教授。03年より現職。著書に『医学生・研修医のための画像診断リファレンス』『レジデントのための画像診断の鉄則』(いずれも医学書院)。