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第3322号 2019年5月20日


JRC 2019開催
来るAI時代に向け画像診断の価値を再考


 第78回日本医学放射線学会総会(大会長=熊本大大学院・山下康行氏),第75回日本放射線技術学会総会学術大会(大会長=阪大大学院・石田隆行氏),第117回日本医学物理学会学術大会(大会長=神奈川県立がんセンター・蓑原伸一氏)の三学会合同によるJRC 2019が4月11~14日,「革新的な放射線医学を――患者に寄り添って」をテーマにパシフィコ横浜(神奈川県横浜市)にて開催された。本紙ではシンポジウム「Value-based Imaging――AI時代を見据えて,画像診断の価値を考える」(司会=順大・隈丸加奈子氏,国立国際医療研究センター国府台病院・待鳥詔洋氏)の模様を報告する。


 初めに司会の隈丸氏が,患者のQOLや有限資源の適正配置等にまで視野を広げ,患者に実施するだけの価値がある医療行為なのかを検討するVBH(Value-based Healthcare)の考え方とともに,本シンポジウムの企画趣旨を説明した。AI技術が進歩する中で,放射線科医には読影業務一辺倒ではなく,画像診断の新たな価値を創造できるような広い視野を持つための議論が必要であると呼び掛けた。

AI技術を活用し,放射線医学の新たな価値を創る

 続いて登壇した北澤京子氏(京都薬科大)は,賢明な医療の選択をめざすChoosing Wiselyの考えによる,画像診断の価値の再考を促した。画像診断によって疾患の早期発見・早期治療といった患者が受ける利益に対し,合併症の誘因や過剰診断の可能性などの不利益も十分に患者が理解できるようなコミュニケーションが必要だと述べ,実現には患者の価値観や好み,環境要因を踏まえた上で医療提供を行う「共有意思決定(Shared Decision Making)」が重要だと強調した。

 医療放射線の適正管理に際し放射線科医の果たすべき医療法上の役割を解説したのは,本年3月まで厚労省に在籍していた稲木杏吏氏(金沢大)。2020年4月に施行される「診療用放射線に係る安全管理体制に関する規定」の改正点を説明した。また,国別の人口1000人当たりのCT検査実施数データを引用。2017年に米国を抜いて日本が1位になったことを示し,過剰検査の存在を示唆した。内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2018(骨太方針)」においても医療機器の共同利用の推進や稼働率向上をめざしており,放射線科医には医療提供体制の効率化を図ることも求められると述べた。

 山本雄士氏(株式会社ミナケア)は,カメラ業界の栄枯盛衰を引き合いに「業務の効率化と価値の創造は似て非なるもの」と経営的な視点から分析した。その上で,放射線医学分野で新たな価値を創造するには,①何をめざすのか,②どんなサービスを提供すべきか,③どんな価値提供をめざして切磋琢磨すべきか,④他の科との違いは何か,の観点から改めて見直すことが放射線科医に重要であると訴え,「病院内の効率化だけではなく,患者側の視点で医療をとらえることが必須」と主張した。

人間と同じ思考回路を持つ人工知能は登場するのか?

 「放射線科医の仕事は奪われるのだろうか」。人間と同様に振る舞える知能を持ったAI(Artificial General Intelligence;AGI)の実現性について見解を述べたのは京都府医大の山田惠氏。昨今,画像診断領域では病変発見などの単一の技術に特化したAI(unitasker)に関する報告が増えつつある。それと比較し,AGI(multitasker)実現のための3つの壁として,①正確な教師データの用意が難しいこと,②記載方法が統一されたビックデータが存在しないこと,③人間のひらめきや直感をAIに学習させる方法がないこと,の存在を指摘。AIの活用で業務を改善しながら,次の時代を切り開く研究を行うことが放射線科医の存在価値になると語った。

シンポジウムの模様