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第3279号 2018年7月2日


Medical Library 書評・新刊案内


《標準理学療法学・作業療法学・言語聴覚障害学 別巻》
脳画像

前田 眞治 執筆

《評 者》吉野 眞理子(筑波大大学院教授・言語病理学)

初学者にうってつけの脳画像の入門書

 評者は,筑波大東京キャンパスにある人間総合科学研究科生涯発達専攻リハビリテーションコースという社会人を対象とした大学院に勤務し,理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のほか,看護師・保健師,社会福祉士・精神保健福祉士・ソーシャルワーカー,障害者職業カウンセラー,特別支援学校教員など,リハビリテーションにかかわる幅広い分野で働く社会人大学院生の教育に携わっている。その中で「高次脳機能障害リハビリテーション」という授業を担当しているが,バックグラウンドの異なる学生たちに脳の構造と機能をわかりやすく講義することに苦労している。高次脳機能障害を理解する上で,脳画像は欠かせないが,手頃な参考書が少ないのも悩みの一つである。「リハビリテーションに必要な脳画像の見かたをやさしく解説した入門書」と銘打った本書は,まさに初学者にうってつけの一冊である。

 本書の特色は,単に画像の読み方を解説するのではなく,背景にあるメカニズムを説き起こすことにより,なぜこのように見えるのかが理解できるように工夫されている点である。第3章「1 各スライスの見極め方」では,各スライス面の目印となる特徴が提示され,重要な部位がいろいろな撮像法でどう見えるかが対比できるように配置されている。随所にわかりやすい図版があるのも親切である。さらに,血管支配領域とブロードマン領野が水平断の各レベルでどのように配置されるかも図示される。リハビリテーション分野で関心の高い運動野・感覚野の見極め方,言語野の見極め方もわかりやすい図を駆使して示される。

 脳画像は,脳の各部位の機能を理解していると,読み解くことへの興味が湧く。第4章「脳の機能局在」では,脳の各部位が担う機能と損傷された場合に出現する可能性のある症状,それらの検査法がコンパクトに示されている。画像から症状を推定して臨床に役立てる,逆に症状から画像を探るという過程を積み上げることで,高次脳機能障害への理解が深まる。疾患別の各論では,症例ごとにCT,MRIの各種画像が並べて示され,モダリティや撮像法の違いによって,また病期の違いによって,所見がどう異なって見えるのかが解説されている。脳血管障害に加えて,頭部外傷,脳腫瘍,認知症,神経難病などの疾患も網羅され,豊富な実例とともに解説されているのは類書にない特色である。

 これから脳画像を学ぶ学生のみならず,臨床に出てから座右に置いて参照するにも役立つであろう。最近脳機能に対する関心が高まっている特別支援教育領域の教員や研究者にも推薦したい。

B5・頁176 定価:本体3,500円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03250-6


がん薬物療法副作用管理マニュアル

吉村 知哲,田村 和夫 監修
川上 和宜,松尾 宏一,林 稔展,大橋 養賢,小笠原 信敬 編

《評 者》中島 貴子(聖マリアンナ医大教授・臨床腫瘍学)

「抗がん薬以外の原因を考慮すべき」疾患・病態,症例を記載

 がんに対する薬物療法は急速に進歩している。

 従来の殺細胞性抗がん薬に加え,分子標的治療薬,さらに近年では免疫チェックポイント阻害薬も数多くのがん種で使用可能となっている。それぞれの単剤での使用だけでなく,併用療法ではカテゴリーを超えた薬剤同士の組み合わせが治療成績のさらなる向上を可能としている。しかしそれは同時に多様な副作用に対応しなければならないことを意味する。

 副作用管理に関する書物は多く存在する。がん薬物療法に従事し始めたばかりのころは,その類をたくさん購入し,外来・病棟での診療中に大変お世話になった。しかし実際の医療現場には書物だけでなく先輩の医師がいて,問診,病態のアセスメント,原因の特定と対策など,豊富な経験に基づいたアドバイスに多く助けられたものである。今ではがん薬物療法の領域ではチーム医療が急速に進み,そのような役割はむしろ薬剤師や看護師などのメディカルスタッフがこなしている場合も多いのではないだろうか?

 本書の最大の特徴は,「抗がん薬以外の原因を考慮すべき疾患・病態」にまで目が向けられていることであろう。症例提示においても,「抗がん薬の副作用が疑われた症例」と,「抗がん薬以外の原因が疑われた症例」の両者が示されているのは大変珍しい。「がん」を診察するのではなく,「がんを有する患者」を診察することの重要性が,本書においては一貫して伝わってくる。副作用に関する「辞書」を超え,チーム内で症例カンファランスをしているような感覚を与えてくれる。

 もう一つの本書の特徴は,「執筆者が全て薬剤師である」ということではなかろうか? 原因薬剤の特徴だけでなく,詳細な病状聴取のコツや,前述した副作用以外の可能性についての考察など,経験を積んだ腫瘍内科医が読んでも改めて自身の診療の不足を再確認させられる内容を薬剤師が執筆している。日本のがん薬物療法におけるチーム医療がいかに進歩したか,強い感動を覚えるとともに,彼らのポテンシャルの高さにがん薬物療法の頼もしい未来を感じる。

 目の前の多彩な病態を持つ個々のがん患者に対するとき,職種を超えて役に立つ,自信を持ってお薦めする良著である。

B6変型・頁314 定価:本体3,800円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03532-3


外科系医師のための手術に役立つ臨床研究

本多 通孝 著

《評 者》吉川 貴己(国立がん研究センター中央病院・胃外科長)

臨床研究を志す全ての医師に

 ヒトの体や病気のメカニズムは全て解明されているわけではなく,完璧な治療法もありません。医師は,限定された情報の中で,先人が積み上げてきた,知識や経験,臨床研究の結果を生かしつつ,現時点で最善と判断される方法で,患者さんの診療に当たっています。診療をしていく中では,数多くの疑問が生まれます。生まれた疑問は,成書や文献で解決できるものもあれば,できないものもあります。解決できない疑問をどうするか,どうすれば解決できるか,ここに臨床研究の意義が生まれます。

 医師として,外科医として生きていく以上,診療と研究は切り離せないものです。もちろん,全ては診療から始まります。主治医として,期待通りの結果が得られれば,患者さんも笑顔を見せてくれますし,医師としてもこの上ない喜びでしょう。ですが,1人の外科医が一生で患者さんによい結果をもたらせる数など知れています。せいぜい数百人,数千人でしょう。一方,患者さんの予後やQOLを改善できるような臨床研究を世界に発信できたとしたら,その報告で世界中の数多くの外科医が診療を変えたとしたら,患者さんへのインパクトは数万人,数十万人となることでしょう。

 診療の方法は,成書や文献,上席医師から学ぶことができます。若手医師にも手に取れる,平易な本も数多く出版されています。では,臨床研究はどうでしょう? どのように進めていくのか,勉強するチャンスはなく,「見よう見まね」で行ってきた先生が多いのではないでしょうか?

 本書は,臨床研究のやり方を丁寧に教えてくれます。著者の実経験に基づくと思われる上席外科医と若手外科医のやりとりやその様子,過去に行われた臨床研究の実例を用いた解説や分析,英語論文執筆の道のり,査読者とのやりとり,研究時間と費用の確保など,すぐに実践できるように書かれています。そこには,「若手外科医に臨床研究の方法を教えてあげたい」という著者の“愛”が感じられます。若手外科医が陥りやすい視点に対して,わかりやすくコミカルに解説されています。手に取った先生は,楽しく本書を読み進めることができるでしょう。

 若手外科医であれば,一度,本書を通読してください。そのあとに,本書を傍らに置き,進捗に合った章を見返しながら,実際の臨床研究を進めていってください。臨床研究に精通した上席外科医であれば,本書を読むことで知識の整理ができ,若手外科医にどう指導すればよいかを学ぶことができるでしょう。耳の痛い話かもしれませんが,臨床研究をするための環境づくりも進めていただきたいと思います。タイトルは「外科系医師のための~」となっていますが,外科医だけに役立つ本ではありません。臨床研究を志す全ての医師に,手に取ってもらいたいと思います。

A5・頁244 定価:本体3,500円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03259-9


発達障害支援の実際
診療の基本から多様な困難事例への対応まで

内山 登紀夫 編

《評 者》村木 厚子(津田塾大客員教授・元厚生労働事務次官)

多分野の専門家による協働のベースとなる一冊

 発達障害者支援法が2004年に制定された。当時,発達障害の子どもを持つ親が相談に行ける場所は少なく,また,保育園・幼稚園,小学校,中学校と環境が変わるたびに障害を説明し,理解と協力を求めるといった状況であった。早期の,そして切れ目ない支援を確立すべくこの法律が制定され,その効果もあって,児童の発達障害に関する認識は急速に広がり,早期発見,早期支援の取り組みも格段に進んだ。

 一方で,こうした早期支援の網の目にかからずに大人になった人への対応は,いまだ研究や支援が大きく遅れている。支援が遅れたために社会適応がうまくいかない,いわゆる「対応困難例」などについて取り扱う専門書は少ない。その一方で,マスメディアなどが発達障害者のかかわった犯罪をセンセーショナルに報じるなど,間違った印象が一般の人々に伝えられている状況も看過できない。

 そうした中で出版されたのが,本書だ。本書は主に,思春期以降から青年期にある発達障害の人を支援する専門家を想定して書かれている。執筆の中心は,2つの厚生労働科学研究障害者対策総合研究事業「発達障害者に対する長期的な追跡調査を踏まえ,幼児期から成人期に至る診断等の指針を開発する研究(2010~12年度)」「青年期・成人期発達障がいの対応困難ケースへの危機介入と治療・支援に関する研究(13~15年度)」に参加した研究者たちだ。

 本書はとりわけ2つの点で優れている。第1の点は,触法問題などの困難事例について正面から論じ,正しい情報を伝えることを意図している点だ。この問題を避けることなく,また,冷静にデータに基づき解説していることは大きな価値がある。発達障害の人たちが犯罪を犯す確率はどのようなものか,どういう特性がどういう行動と結び付くのか,それは真に障害の特性なのか,それとも2次障害なのか,こうした疑問に,可能な限り客観データを示し,率直に答えている。こうした対応こそ,発達障害についてわれわれが正しい認識を持つことの第一歩となる。また,困難事例について,具体例と対応が示されている点も,関係者にとって大いに手助けとなるであろう。

 本書が優れている第2の点は,本書が,発達障害を専門に扱う機関,専門家だけを対象とするのではなく,思春期や成人期の発達障害の方たちと接する機会を多く持つこととなる一般の精神科クリニック,児童福祉施設,少年院などの矯正施設,医療観察法病棟などの職員をも対象にし,こうした場所での発達障害に対する気づき,支援の実施にも役立つように記述されている点だ。

 発達障害の出現率は高く,その支援には,医療,福祉,心理,司法,矯正・保護など幅広い分野の専門家が協働して取り組むことが重要だ。とりわけ困難事例への対応は多くの専門分野の協力が不可欠だろう。本書は,こうしたさまざまな分野の専門家が共通認識を持って支援に取り組むためのベースとなる教材,参考書として最適のものだ。本書を手に,各地で関係者のネットワークづくりが始まることを心から期待している。

B5・頁264 定価:本体5,400円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03239-1

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