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第3255号 2018年1月8日


賢く使う画像検査

本来は適応のない画像検査,「念のため」の画像検査,オーダーしていませんか?本連載では,放射線科医の立場から,医学生・研修医にぜひ知ってもらいたい「画像検査の適切な利用方法」をレクチャーします。検査のメリット・デメリットのバランスを見極める“目”を養い,賢い選択をしましょう。

[第9回]泌尿器領域

宗近 次朗(昭和大学医学部放射線医学講座)
隈丸 加奈子(順天堂大学医学部放射線診断学講座)


前回からつづく

症例

 50歳女性。過去に2度,腎盂腎炎と尿路結石の既往あり。前日より38.9℃の発熱が出現。救急外来を受診し尿検査で膿尿を認めた。抗菌薬と解熱鎮痛薬を処方して帰宅となった。しかしその後も自宅で発熱,悪寒,腰痛が持続したため,本日再度受診。血液検査では炎症反応高値を認めた。

 急性腎盂腎炎は一般的に尿路の逆行性感染により惹起される有熱性尿路感染症です。基礎疾患(前立腺肥大症,神経因性膀胱,尿路結石,尿路悪性腫瘍,尿路カテーテル留置,糖尿病やステロイド投与などの全身性易感染状態)の有無により単純性と複雑性とに分類されます。

急性腎盂腎炎の病態と治療

 症状は先行する膀胱炎症状(自覚しないことも多い)に加え,発熱,全身倦怠感,患側の肋骨・脊椎角圧痛(CVA tenderness)などが出現します。同時に悪心・嘔吐などの消化器症状を認めることもあります。尿検査では膿尿や細菌尿,血液検査では白血球増多などの炎症所見がみられます。原因菌は単純性では大腸菌が約8割を占めますが,複雑性は緑膿菌をはじめとする多種類のグラム陰性桿菌と,腸球菌を主とするグラム陽性球菌の割合が増加します。

 治療は尿培養検査の結果が判明するまで,広域抗菌薬の使用を考慮します(empiric therapy)。その後,治療開始後3日目を目安にempiric therapyの効果を判定し,細菌学的結果が判明した時点で菌種,薬剤感受性に基づく適正な抗菌薬に切り替えます(definitive therapy)。可能であれば狭域スペクトラムの抗菌薬への切り替えが望ましいとされています(de-escalation)1, 2)

 急性腎盂腎炎が重症化すると腎膿瘍や腎周囲膿瘍へ進展します。腎膿瘍に進展する手前の病態として急性巣状細菌性腎炎(acute focal bacterial nephritis;AFBN)が認識されています。尿路閉塞に続発する腎盂腎炎では,膿腎症や尿流の停滞により腎盂内圧が上昇し,尿中の細菌が血液内に移行することで尿路性敗血症(urosepsis)を引き起こします。その他,糖尿病患者で見られる気腫性腎盂腎炎などの特殊な状態では,迅速かつ的確な診断と必要に応じた泌尿器科的処置を行い,腎機能の保持に努める必要があります。

成人の急性腎盂腎炎が疑われる場合,画像検査の適応は?

 急性腎盂腎炎の画像検査は通常,CT検査が選択されますが,急性腎盂腎炎は臨床症状や検査データから比較的容易に診断され,適切な抗菌薬治療に良好に反応します。このため,疑って直ちにCT検査を施行する必要はありません。米国放射線学会(American College of Radiology;ACR)のガイドライン3)では,単純性の急性腎盂腎炎患者に関しては,抗菌薬治療開始から72時間以内によく反応すればCT検査は必要ないとしています。本邦の『画像診断ガイドライン2016』4)もこれにならって,成人の急性腎盂腎炎には直ちに単純または造影CT検査を施行することは推奨していません(推奨グレードC2;科学的根拠がなく,行わないよう勧められる)。

 ただし,ACRのガイドライン3)は抗菌薬治療開始から72時間以内に良好な反応が認められないとき,単純および造影CT検査を推奨しています。欧州泌尿器学会議(European Association of Urology;EAU)のガイドライン5)でも,単純性の急性腎盂腎炎患者において,治療開始後72時間たっても発熱が持続する場合には腎膿瘍や腎周囲膿瘍などを除外するために単純CT検査を考慮するとしています。

 また,ACRのガイドライン3)は糖尿病やその他の免疫不全患者で治療に対する反応が悪い場合には,24時間以内に単純または造影CTでの評価を推奨しています。さらに,尿路結石など泌尿器疾患の既往,泌尿器疾患の手術歴,繰り返す腎盂腎炎のエピソードがある患者では,早急なCT評価に値するとしています。その他,臨床的に急性腎盂腎炎以外の感染症の存在も疑う場合,複雑性尿路感染症を疑わせる場合(),さらに尿路結石や水腎など尿路全体の所見を得る必要がある場合には,CTを主とした画像検査の適応があります。

 複雑性尿路感染症を疑わせる要因(文献2 p.215より転載)

 超音波は簡便性,非侵襲,低費用,被ばくなし,造影剤なしといったメリットはありますが,腎盂腎炎の検出感度がCTよりも低く,まだ有用性が示されていません。ただし超音波で水腎症の有無を早期に確認しておくことは,尿路閉塞が治療効果に影響することから重要です。造影CT検査を行えない患者においては,MRIも代用検査として考慮されます。

急性腎盂腎炎の画像所見

 急性腎盂腎炎のCT画像所見として腎腫大,腎筋膜の肥厚,bridging septumの肥厚,腎周囲腔の脂肪組織の濃度上昇などがあります。しかしながら,これらの所見が認められず,造影CTで楔状の造影不良域のみが所見として描出されることも少なくありません。本邦の画像診断ガイドラインでは,「腎機能障害がない限り,造影CTを施行することを考慮してもよい」としています(推奨グレードC1;科学的根拠はないが,行うよう勧められる)。

症例への対応

 再発性・抗菌薬反応不良性の腎盂腎炎と考え造影CTを施行した(図1,2)。両側腎に楔状の造影不良域(a)と左尿管結石(b)を認め,腎盂腎炎の診断で入院加療となった。その後自然排石されて,抗菌薬加療にて症状は改善した。

図1 造影CT。左腎上極に楔状の造影不良域を認める

図2 造影CT。右腎に楔状の造影不良域と左尿管結石を認める

泌尿器領域画像検査適応のポイント

●抗菌薬治療に反応する単純性急性腎盂腎炎患者にはCT検査は必要ない
●CT検査を考慮すべき急性腎盂腎炎は,基礎疾患あり,抗菌薬反応不良性,再発性,手術歴,腎膿瘍などの合併症が疑われる場合など

つづく

参考文献・URL
1)日本化学療法学会.JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015――尿路感染症・男性性器感染症. http://www.chemotherapy.or.jp/guideline/jaidjsc-kansenshochiryo_nyouro.pdf
2)泌尿器外科 Vol.30 特別号.後期研修医がおさえておきたい泌尿器疾患TOP30 2017.医学図書出版;2017.
3)ACR. ACR appropriateness criteria. Acute pyelonephritis.
4)日本医学放射線学会編.画像診断ガイドライン2016年版 第2版.金原出版;2016.
5)EAU.EAU Guidelines on urological infections. https://uroweb.org/wp-content/uploads/EAU-Guidelines-Urological-Infections-2016-1.pdf

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