医学界新聞

2017.09.25



第21回日本看護管理学会開催


 第21回日本看護管理学会学術集会(集会長=慶大・小池智子氏)が8月19~20日,「看護管理の『シンカ』」をテーマにパシフィコ横浜(横浜市)で開催され,4755人が参加した。看護界も今,「働き方改革」が注目されている。本紙では,これからの労働環境改善のマネジメントや新たなテクノロジー活用の視点が提示されたシンポジウム,「未来の医療労働環境のリデザイン」(座長=大原記念労働科学研究所・酒井一博氏)の模様を紹介する。


テクノロジーの適切な活用が医療労働環境の改善に寄与

シンポジウムの模様
 初めに座長の酒井氏が企画趣旨を説明した。近年の医療労働環境は,日看協や日医の自主ガイドライン制定に見られる「自主対応型アプローチ」による改善が進み,マネジメント力強化によって労働環境を変化させる方向性があると考察。次の20年は,少子高齢化の課題がある一方,テクノロジーの進歩に対する期待もある。その過渡期における,医療労働環境のリデザインの在り方を議論したいと語った。

 聖隷三方原病院総看護部長の吉村浩美氏は冒頭,2000年代以降に次々と打ち出された,看護職の労働環境改善に関する政策の変遷を振り返った。日看協の調査によると,病院勤務の正職員の超勤時間は,2009年度と2013年度の比較で1か月「6時間00分以下」の割合が33.9%から46.9%に改善,年次有給休暇取得率は「40%以上」の割合が増加している。離職率も常勤看護職員では2010年度以降11%以下で推移,新人看護職員は2011年度以降8%未満で推移していると取り組みの成果を紹介した。氏は,超高齢社会に即した医療構造改革が急速に進む中,看護職の量と質の充足が求められている背景が労働環境改善を後押ししていると分析。これからの働き方改革の視点として,①看護職員数の急性期偏重から,地域・在宅への配置,②多様な人材を確保・活用するための賃金処遇の改善,③効率性・生産性を上げるマネジメント力の強化,④健康的な労働環境のために「夜勤・交代制勤務ガイドライン」を取り入れた勤務表作成基準の明示,⑤女性が93%を占める看護職の,継続可能なキャリアの実現を提示し,「次世代の看護現場をより豊かにしていきたい」と抱負を述べた。

 テクノロジーの活用から医療労働環境を支える取り組みを紹介したのは,医療・介護用ベッドの開発に携わる坂本郁夫氏(パラマウントベッド株式会社)。同社のスマートベッドTMシステムは,ベッド上の患者の起居動作を自動で把握することで転倒・転落リスクを軽減させる他,脈拍数や呼吸数,睡眠・覚醒などの生体情報をIoT(Internet of Things)化された通信機器によって自動入力と一元管理ができる。それによって看護業務の安全性や効率性の向上が図られるという。効率化により削減された時間を「スタッフ同士のコミュニケーションや,質の高いケアに充ててもらいたい」と希望を語った。

 IoTやビッグデータ,AIなどの最新技術は何をもたらすか。健康情報学・災害情報学を専門とする宮川祥子氏(慶大)は,看護管理・労務管理へのAIの活用を解説した。AIは大量のデータから規則性を学習する「ディープラーニング」と,会話の音声や書かれたものを解析する「自然言語処理」の2つの組み合わせからなる。「どのような課題を解決したいかを考える力を養うことで,AIで得られた情報も意思決定における不確実性を減らすために活用できる」と指摘。「私たちがAIの歯車になるのではなく,上手に使っていくことが求められる」と強調した。

 酒井氏は,「医療労働環境改善については学会としての戦略を作っていくことも重要になる」と締めくくった。

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