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第3231号 2017年7月10日


Medical Library 書評・新刊案内


腎機能に応じた投与戦略
重篤な副作用の防ぎかた

向山 政志,平田 純生 監修
中山 裕史,竹内 裕紀,門脇 大介 編

《評 者》山縣 邦弘(筑波大教授・腎臓内科学)

薬物血中濃度の上昇による副作用を未然に防ぐための貴重な解説書

 2016年2月に日本医療開発機構 腎疾患実用化研究事業「慢性腎臓病の進行を促進する薬剤等による腎障害の早期診断法と治療法の開発(研究代表者:成田一衛)」の薬剤性腎障害の診療ガイドライン作成委員会(委員長:山縣邦弘)の下で「薬剤性腎障害診療ガイドライン2016」が発刊された。

 その中では,薬剤性腎障害(DKI : Drug-induced kidney injury)を「薬剤の投与により,新たに発症した腎障害,あるいは既存の腎障害のさらなる悪化を認める場合」と定義した。

 DKIの分類としては発症機序から,①中毒性腎障害,②アレルギー機序による急性間質性腎炎(過敏性腎障害),③薬剤による電解質異常,腎血流量減少などを介した間接毒性,④薬剤による結晶形成,結石形成による尿路閉塞性腎障害としている1)

 薬剤の多くが腎排泄性であり,腎臓はより高濃度の薬剤に暴露されやすいため,上記DKIの分類の中でも中毒性腎障害を来す危険性が高い。このような中で本書は腎機能に応じた適切な投与法を指南し,薬物血中濃度の上昇による全身性の副作用を未然に防ぐための貴重な解説書である。

 第1~3章では,診療科別のさまざまな薬剤について,DKIはもとより使用に当たっての一般的注意事項やコラムを記載している。本書を日常診療に役立てることで,多くの臨床医はもとより,薬剤師,看護師などの多くのコメディカルが薬剤投与中のモニターをより安全に行うことも可能となる。

 わが国には推計で1300万人以上の慢性腎臓病(CKD)患者がおり,その中でも長期間の高血圧,糖尿病,脂質異常症や加齢などにより,自覚症状を欠いたまま緩除に腎機能低下を来してCKDとなる患者が多く存在する(一般人口の高齢化に伴いこのようなCKD患者数は年々増加している)。特に高齢者の場合,筋肉量減少に伴い,血清クレアチニン値だけでは腎機能の正確な評価が困難であり,これらの患者の腎機能を正しく把握・評価し,適切な投与量での薬物治療を行うことが肝要である。

 本書の読者は第4章の「10の鉄則」にのっとって正しく腎機能を評価し,さらに第5章の「腎機能別薬剤投与量一覧表」を用いることで,使用する各薬剤に対し適切な投与量を設定することができるであろう。

 本書には腎機能に応じた投与戦略に関する実践的な内容がまとめられており,多くの皆さんにお勧めしたい。

1)平成27年度日本医療開発機構 腎疾患実用化研究事業「慢性腎臓病の進行を促進する薬剤等による腎障害の早期診断法と治療法の開発」薬剤性腎障害の診療ガイドライン作成委員会編.薬剤性腎障害診療ガイドライン2016.日腎会誌.2016;58(4):477-555.

B5・頁400 定価:本体5,800円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02864-6


ジェネラリストのための内科外来マニュアル
第2版

金城 光代,金城 紀与史,岸田 直樹 編

《評 者》岩田 健太郎(神戸大学大学院教授・感染症治療学)

そうそうたる執筆陣による「お気に入り」の外来マニュアル

期待にたがわぬ素晴らしい内容
 外来に置いておきたい一冊だ。

 初版もお気に入りで,アルバイト先の一般内科初診外来で「イワタ専用」として置いておいた。第2版も期待にたがわず素晴らしい。まあ,金城光代・紀与史夫妻,岸田直樹,西垂水和隆,芹沢良幹,尾原晴雄,本村和久,星哲哉というそうそうたる執筆陣なので良い教科書なのは当たり前だ。

 外来でよくみる主訴から入り,鑑別疾患リストが頻度順に並べられ,ワークアップのアプローチと治療法まで丁寧に説明されている。本書一冊があれば初診外来は問題なくできる。「内科」と書かれているが,実際には米国のgeneral internal medicineの守備範囲であり,精神科疾患や整形外科疾患,周術期管理まで幅広く網羅している。

質の高い内科外来を追体験できる
 残念ながら日本では入院患者の臨床指導は熱心でも,外来は「明日から外来やってね」とティーチングなしでいきなり本番なところが多い。よって外来診療は得てして「我流」になりがちだ。

 しかし,本書を読めばわかるが,外来診療はある意味入院患者のケアよりも,ICUでの患者管理よりも難しい(ところがある)。特に,イケイケ,ガンガンなアプローチはうまくいかないことも多く,検査も治療も足し算だけではなく引き算の発想が必要だ。いかに短時間で効率よく,少ない検査,諸々の患者負担(待ち時間などの時間的,金銭的負担含む)を最小限にしつつ,最大のアウトカムをめざすかだ。外来診療こそ,高度なインテリジェンスを要する,内科医冥利に尽きる営為なのだ。

 本書を読めば質の高い内科外来診療の在り方を追体験できる。また,内科医を名乗るのであればこれくらいの守備範囲は網羅できるべきだ(日本専門医機構さん,聞いてますか?)。

 本書の執筆陣はぼくがよく知る内科医のかがみであり,ロールモデルたちだ。本書からはそのエートスがにじみ出ている。一読をお勧めしたい。

A5変型・頁736 定価:本体5,400円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02806-6


あらゆる状況に対応できる
シンプル身体介助術[DVD・Web動画付]

岡田 慎一郎 著

《評 者》齋藤 昭夫(さいとう整形クリニック院長)

この今を生きるわれわれに必要な介助術

 著者である岡田慎一郎氏の介助術における身のこなしは芸術的である。バレエダンサーや空手選手を思わせる無駄のない所作故であろう。本書の動画で,動きを見てもらえればその動きがただ者でないことはすぐにわかるはずである。彼は理学療法士という身体を科学的に扱う資格を持つ傍ら,古武術の師匠に師事し両者を見事に融合し,広く一般の方々にも応用できるよう平易な言葉に仕立て直した先駆者だと思う。

 本書は数ある介助技術の実践書の中でも大変わかりやすく,すぐに現場で活用できる基本が身につく良書である。それは,紹介されている技術の根幹を「合理的な身体の動かし方」と「相手との関係の3原則」に集約した結果だろう。実際に介助技術を学びたい方はもちろん,多くの方に効率よく介助技術を指導する立場の方々にもお勧めである。

 介助者の技術向上が介護現場における労働生産性に大いに寄与することは明白である。また,本書の基礎編がうまくマスターできない方,例えば股関節に障害のある方などは,介助者として動きの制限が必要となり,そのチェックにも本書は使用できる。そして,腰痛などの労働災害,介護現場における事故を未然に防ぐチェックにも使えるだろう。

 先進国で進む高齢化対策には,本書で紹介されている身体の動かし方を多くの人がマスターし,日常に応用してもらうことが有益と考える。その証拠に著者は,国内では2000回以上,そして台湾,ニューヨークで立て続けに講演を行い,好評を博してきた。

 加えて,災害大国の日本においてはいつ自らが介助者,あるいは被介助者になるかわからない。高齢者・障害者だけでなく災害弱者に対して,一人でも多くの人が介助者としてかかわれるよう,現在の支援者だけでなく一般の方々にも本書の技術が広まることを切に願う次第である。

 最後は自分の話になるが,日頃介護現場における腰痛診療を行う身として,まずは自ら基礎編を練習し,実践編をマスターすることで,腰痛のない職場に一歩でも近づけるよう精進したい。

B5・頁128 定価:本体2,600円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02847-9


プロメテウス解剖学アトラス
解剖学総論/運動器系

第3版

坂井 建雄,松村 讓兒 監訳

《評 者》弦本 敏行(長崎大大学院教授・肉眼解剖学)

系統解剖学を網羅する局所解剖学アトラス

 『プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系』待望の第3版が出版された。本書は『胸部/腹部・骨盤部』『頭頸部/神経解剖』から構成される全3巻のうちの第1巻である。

 肉眼解剖学に携わる者がプロメテウス解剖学アトラスという言葉を聞いたとき,まず思い浮かぶのは,上質な紙面上に並ぶイラストの圧倒的な美しさであろう。実際,見開き2ページごとに絶妙な余白を伴って配置された各イラストの統一感は,本書を手に取った者に清潔感さえ抱かせる。帯上に踊る「この美しさが最上の理解を生む」というコピーが,おそらく本書の出版に携わった全ての人の気持ちを代弁している。

 近頃新たに出版される解剖学の教科書および解剖学アトラスのほとんど全ては,局所解剖学の視点から構成・執筆されたものであろう。すなわち,多くの成書は解剖学という学問を人体の部位ごとに解説するものであるが,肉眼解剖学を臨床医学に直結した実践的な学問としてとらえるとき,これは避けては通れない手法であろう。

 例えば,医学書の金字塔として現在なお版を重ねている『Gray's Anatomy』(Elsevier,41th,2015)でさえ,発刊以来,骨学,筋学,神経学,脈管学,内臓学など系統的に解説がなされていたが,2005年に刊行された第39版以降は局所解剖学の解説書として内容の構成が変更されている。しかしながら,例えばこれから肉眼解剖学という高い山を極めようとする初学者にとっては,この学問をまず系統的に理解するほうが,より平坦な道程であることは明らかである。

 このような中,本書の構成を細部にわたって検証するとき,本書の本質が,構成するイラストの上質感だけではないことが初めて理解される。本アトラス全3巻の構成内容からは,この第1巻が運動器系に関する局所解剖学の理解をめざす意図で作成されたことが明らかである。しかし,その目次を見ると,この書籍が意図するところが容易に認識される。本書は,体幹,上肢および下肢のそれぞれを解説する各論において,①骨,関節,靱帯,②筋:機能による区分,③筋:局所解剖,④神経と脈管:形態と位置,⑤神経と脈管:局所解剖,の順序で系統的な解説がなされるという統一感ある構成になっている。運動器系の解剖学をまず系統的に学びたいという場合は,例えば,骨,関節,靱帯のページを横断的に学習することが容易である。このような点は目立った特徴ではないが,肉眼解剖学の知識習得のための最良の方法として考え尽くされた構成内容であると言えるであろう。

 最近はPCなどで利用可能な,高い精度を持った高機能な3D人体アトラスも数多く入手可能である。しかし,それらと比較しても本書に並ぶ上質かつ簡潔な図譜がもたらす教材としてのクオリティは全く引けを取らない。むしろ,ある局面に関して,考え尽くされた方向から的確に切り取った説得力あるイラストで示すことによって,それを利用する者にとって必要十分な情報が提供される。

 見開き2ページの中に,各図に関連した解剖学的知識および臨床的必要事項を幅広く網羅した記載から得られる圧倒的な情報を提供する本アトラスは,初学者にとっても,あるいは実際の臨床家にとっても得難い一冊であろう。

A4変型・頁628 定価:本体12,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02534-8


総合内科病棟マニュアル

筒泉 貴彦,山田 悠史,小坂 鎮太郎 編

《評 者》岡 秀昭(埼玉医大総合医療センター総合診療内科・感染症科診療科長/准教授)

信頼できる日本の内科病棟マニュアル

 『総合内科病棟マニュアル』が出る,「ワシマニュ,ポケレフを超える!?」マニュアルが出る,という情報を得るや否や,悪い癖で早速,ポチッとネット通販で購入してしまった。ところが本書は後悔をしない,期待を裏切らない内容である。

 私は『感染症プラチナマニュアル 2017』(MEDSi)という感染症マニュアルを執筆した。幸いにも好評を頂いている。これは,外国のマニュアルが主流であった感染症領域において,日本の実情に即してはいるが,その実情の中で可能な限り世界標準的な感染症診療を世に提案したいという思いから出したものである。当初はこんなに好評を得られて,毎年改訂出版されるようになるとは思ってもいなかった。

 『総合内科病棟マニュアル』もそうだ。ワシマニュ(『ワシントンマニュアル』),ポケレフ(『内科ポケットレファランス』)など外国の優れたマニュアルがあるが,どれほど優れた翻訳であってもどこかずれた感覚がある。しかし本書は日本の現状に即してはいるが,その実情の中で可能な限り世界標準的な病棟内科診療を提供したい,という編者らの思いが伝わってくる。日本で承認され使用できる薬で,検査で,医療資源で,活用ができるマニュアル。だけれども,日本やその施設だけにみられる根拠の乏しい我流診療には陥りたくない。それを指南してくれるマニュアル。そう,「純国産」の信頼できるマニュアルを皆が求めていたのだ。

 本書は海外ではホスピタリストにとっての病棟マニュアルに該当するものと思われるが,残念ながら日本ではまだホスピタリストは普及していない。私のような感染症内科医も,その他の内科医,外科医も,自分の専門以外にかかわる病棟でのさまざまな問題を,自らがホスピタリストとして解決していかなければならない。つまり本書は日本で病棟診療を行う全ての医師に推薦できるマニュアルである。また,初期研修医,後期研修医の多くは病棟業務が診療の中心であると思われ,本書は必携の心強い手引書になるはずである。『感染症プラチナマニュアル』と同じコンセプトで作成された本書が,『感染症プラチナマニュアル』以上の輝きでベストセラーとなり,多くの臨床医に活用されるであろうことを確信している。

B6変型・頁784 定価:本体5,000円+税 MEDSi
http://www.medsi.co.jp/

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