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第3208号 2017年1月23日


看護のアジェンダ
 看護・医療界の"いま"を見つめ直し,読み解き,
 未来に向けたアジェンダ(検討課題)を提示します。
〈第145回〉
オーサーシップ(著者資格)

井部俊子
聖路加国際大学特任教授


前回よりつづく

 12月になると東京はイルミネーションが街のそこここで競うように輝き,クリスマスソングが流れる。そんな世界と無縁な時間を過ごしているのが修士論文や博士論文の完成を目ざしている大学院生たちである。彼らの部屋は遅くまで灯りがともり消えることはない。彼らは,論文提出,論文審査・最終試験を終え,めでたく学位が授与され修了となる。その次に,論文を公表するという任務が待っている。しかるべき媒体を選んで論文を投稿し査読を受けた後,論文が世に出る。

 今回,「看護のアジェンダ」としたいテーマはオーサーシップ(著者資格)についてである。公表された大学院生(と思われる)の論文の著者の欄に,当該者と共に指導教員と思われる名前が半ば当然のように並ぶことへの私の違和感を解消するためである。

日本医学会 医学雑誌編集ガイドライン

 「日本医学会 医学雑誌編集ガイドライン」(日本医学会 日本医学雑誌編集者会議,2015年3月)の第3章「著者と医学雑誌・編集者の倫理規範の策定」の中に「オーサーシップ(著者資格)」の項がある。

 まず,本ガイドライン作成の経緯を紹介したい。医学雑誌編集者を対象とした国際的な推奨・声明類には,医学雑誌編集者国際委員会(ICMJE)や世界医学雑誌編集者協会(WAME)などから発表されているものがある。ICMJEの統一投稿規程であるUniform Requirements for Manuscripts Submitted to Biomedical Journalsは,1978年発表当時はスタイル・マニュアルの性格が強かったが,改訂を重ねるごとに発表倫理や医学雑誌の質の向上に関する記述の割合が大きくなった。2013年8月には名称が変更され,Recommendation for the Conduct, Reporting, Editing, and Publication of Scholarly Work in Medical Journalsとなった。

 一方,日本医学雑誌編集者会議(JAMJE)は2008年8月に設立された。日本医学会の下部組織として発足し,日本医学会の全ての分科会の機関誌編集者から構成される。JAMJEの活動目標は①医学雑誌と編集者の自由と権利の擁護,②医学雑誌の質の向上への寄与,③著者と医学雑誌・編集者の倫理規範の策定,④海外の編集者会議との連携である。

 JAMJEは活動目標に即した編集方針を作成するための手引きが必要と考え,ICMJEの勧告(2013年8月)とWAMEの「方針書集」や「シラバス」の内容と,国内のアンケート調査結果をもとに本ガイドラインを作成した。

教員が自らに問うべき「著者資格の基準となる4項目」

 では,「オーサーシップ(著者資格)」の項をみてみよう。

 「著者とは,論文の根幹をなす研究において多大な知的貢献を果たした人物である」と定義している。そして「研究組織の同僚(peer)や長というだけで,実質的な貢献のない人を著者に入れるのは誤りである」が,「投稿原稿では著者資格を満たす人物はすべて著者として列挙されていなければならない」とし,「全員に言及しないとゴーストオーサーが生じる」と説明している。

 ICMJE勧告では著者資格の基準として次の4項目全てを満たすこととしている。それらは,①研究の構想もしくはデザインについて,または研究データの入手,分析,もしくは解釈について実質的な貢献をする,②原稿の起草または重要な知的内容に関わる批判的な推敲に関与する,③出版原稿の最終承認をする,④研究のいかなる部分についても,正確性あるいは公正性に関する疑問が適切に調査され,解決されるようにし,研究の全ての側面について説明責任があることに同意する,ことである。これらの基準を満たさない貢献者(contributor)は,「著者として挙げるのではなく,謝辞にて個人個人で列挙するか,あるいは『参加研究者』のような見出しのもとにグループとして示し,それぞれの貢献者の寄与内容を具体的に示す」ことと述べている。

 以下の3種類の著者は許容されないのである。

・ゴーストオーサー:論文発表に相当の貢献をしているが,研究自体に対する貢献としては評価されない。
・ゲストオーサー:明確な貢献はないが,論文出版の可能性を高めるために列記される。
・ギフトオーサーシップ:研究との希薄な関係にのみ基づく。

 大学院生の論文指導を担っている教員は当該研究論文のオーサーシップ(著者資格)を有しているのかを判断する際に,ICMJE勧告の4項目を自らに問う作業が必要であることがわかった。私はやはり,論文オーサーと論文指導は厳密に区別されるべきであると思う。

つづく

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