医学界新聞

2016.11.28



がん患者が気軽に相談できる場所に

日本初の「マギーズセンター」が誕生


 「マギーズ東京」(センター長=秋山正子氏)が10月10日,日本初のマギーズがんケアリングセンター(以下,マギーズセンター)として東京都江東区にオープンした。同センターは英国を発祥とする,がん患者やその家族など,がんの影響を受けた誰もが無料,予約なしで利用できる相談支援の場。今回,日本で初めて英国の正式な承認を得て開設され,世界で20か所目,アジアでは香港に続き2か所目のマギーズセンターとなった。

 同センターの運営母体であるNPO法人マギーズ東京は翌11日,豊洲シビックセンター(東京都江東区)でオープンを記念した講演会を開催。開設プロジェクトを中心的に進めてきた同法人共同代表理事の秋山氏と鈴木美穂氏(日本テレビ記者)をはじめ関係者が,今後の活動への思いを語った。


 がん医療の進歩に伴い,患者の生存率が向上した一方で,急性期の後も続く治療と再発に不安を抱く患者は少なくない。さらに,がん治療の場が外来中心へ移行しつつあることで,患者が医療者と落ち着いて話をできる時間は限られてきている。そういった人々の生活上の不安をゆっくり話せる場が,病院の外にもあったら――。長年,訪問看護を通して地域の切実な健康問題にかかわってきた秋山氏はそんな思いを抱いていたという。そうした中で2008年に英国のマギーズセンターを知った氏は,その理念に大いに共感。2009年に現地を訪ね,2011年にはマギーズセンターをモデルとした「暮らしの保健室」を東京都新宿区に開設して,地域住民の健康上の不安や悩みの相談に乗る活動を進めてきた。

家庭的で落ち着いた雰囲気の「マギーズ東京」。平日10~16時に看護師・心理士などが常駐し,相談を受け付ける。

「希望」を取り戻す場所として

 そこから「マギーズ東京」開設に大きな一歩を踏み出すきっかけとなったのが,鈴木氏との出会いだ。鈴木氏は2008年に乳がんが発覚し,がんによるとまどいや治療中の不安に苦しんだ一人。2014年にマギーズセンターの存在を知り,「こうした施設こそ,患者にとって必要だ」と痛感したという。かねて「日本にもマギーズセンターを」と活動を続けてきた秋山氏を訪問し,実現の動きを加速させた。その後,2人は仲間と共にマギーズセンターを日本に開設するためのプロジェクト「NPO法人マギーズ東京」を2015年4月に立ち上げ,クラウドファンディングなどを用いて資金を集め,「マギーズ東京」の開設にこぎ着けた。

 オープンセレモニーで登壇した秋山氏は,マギーズ東京の建物・内装などの設備,運営資金の全てが寄付であることに感謝を述べ,「希望を取り戻す環境・空間として,多くの人に利用してほしい」と述べた。また,今後も資金調達の面で活動していく鈴木氏は,「チャリティで運営されるマギーズは,多くの人の愛情と優しさで来訪者の人生を包み込むような空間。永続的な運営のため,社会を巻き込んでいきたい」と,マギーズセンターの理念の浸透と,寄付の輪の広がりを期待した。

英国からマギーズエジンバラセンター長と事業開発部長(中央の2氏)が来日し,マギーズ東京への期待が話し合われた。右端から鈴木氏,秋山氏。

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