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第3194号 2016年10月10日


臨床医ならCASE REPORTを書きなさい

臨床医として勤務しながらfirst authorとして年10本以上の論文を執筆する筆者が,Case reportに焦点を当て,論文作成のコツを紹介します。

水野 篤(聖路加国際病院 循環器内科)

■第7回 Abstraction=抽象化――断捨離しよう! まとめよう!


前回よりつづく

カリスマ先生「ついにImagingが掲載されましたね。おめでとう! 次はいよいよCase reportのスタイルも勉強してみよう!」

レジデント「本当にうれしいです! 次も頑張ってみます。大体同じ感じで書けますか?」

カリスマ先生「そうですね。大きくは違いません。ただ,抽象化能力が必要です」

レジデント「抽象化? アバウトにしろってことですか?」

カリスマ先生「いやいや,抽象化っていうのは必要なものを残すことで……」


 連載も折り返し地点なので,ここで一度Case reportの意義を確認します。臨床家としてCase reportに向ける私の思いは第1回(第3170号)を参照していただくとして,今回は読者の皆さんがどのような思いでCase reportを書くかです。

 読み手として考えると,Case reportで重要なのは,

●珍しい
●新しい(これまでにない)

 という部分です。

 だからこそ執筆の際には,そこを強調して書きます。そして,この論文が読者の参考になり,医療の発展に役立ってほしいという強い思いを乗せましょう! これはテクニックではありません。実臨床で患者を診て感じた素晴らしさや苦労を書くのです!

 この点を理解いただいた上で,今回の話に入っていきたいと思います。

ImagingとCase reportの違い

 さぁ,ついにCase reportの書き方です。基本はImagingと同じです。

 ただし,

●文章が長くなる
●適切な情報のAbstraction
●もう少し深いDiscussion(考察)

 の3つが新たな課題になります。

 特に文章の長さは日本人にとっては非常に厳しい部分です。Imagingのように150~250 words程度ならよいですが,Case reportは2000~3000 wordsです。この長さの英語はキツイ……。日本人には正直キツいです!

 では,どのようにするか? はっきり言って慣れるしかないのですが,私なりにまとめたところを解説しましょう。

まず定石を知るべし!

 まずは敵を知る,つまり第4回(第3182号)と同様に“定石”を学びます。

 多少の差はありますが,フォーマットは,

❶Abstract:抄録
❷Introduction:はじめに
❸Case presentation:症例提示
❹Management & Outcome:経過
❺Discussion:考察
❻Conclusion:結論

 という流れでよいでしょう。

 一般的な論文はIMRAD形式[序論(Introduction),方法(Method),結果(Result),結論(Discussion)]で記載されることが多いですよね。Case reportでは(このような言い方はしないのですが,あえて言うなら)❷~❺の頭文字を取って,ICMDです。CARE(CAse REport)ガイドラインのチェックリスト1)も参考にしてください。

 それぞれの分量は大体,

❶100~150 words
❷100~300 words
❸500~1000 words
❹500~1000 words
❺500~1000 words
❻30~50 words

 ぐらいです。❶は必要ないJournalもありますね。全体で考えると長いですが,それぞれのSectionごとの長さで考えれば,そこまで不安に感じる必要はないかもしれません。

いかにIntroductionするか?

 続いて,❶Abstract(抄録)と❷Introduction(はじめに)に必須な能力

Abstraction

に注目します2)

 まず,Abstractについては,はっきり言ってしまいましょう。先に❷~❻書き,最後にまとめるだけでOKです。

 Case ReportのAbstract(抄録)は大体100~150 words(普通の論文は250 words程度)でまとめます。Imagingと同じで,少ない分量の中で症例を提示し,特徴をまとめなければなりません。細かく文章を選ぶ余地はないと思います。

 Introduction(はじめに)では,100~300 wordsくらいで歴史的背景から本症例への導入を行います。

 基本の流れは,

A. ○○っていう疾患は……
 大きな疾患概念は△△で,大変な病気(で頻度がこのくらい)だ!!
B. ××のような(診断・結果・治療)です。
 この疾患ではこんなことが問題で,こんな診断法(治療法)が一般的だよね。
C.ただし,違う場合もあるので大変なんです。
 最近はこんな感じの症例もあるよね(もしくは,こんな概念もあるよね)。
D.今回はこんな感じなんで,だから非常に珍しい!
 で,今回の症例はこんな感じで臨床的に非常に意義がある! みんなも感動すると思う。

 といった感じですね。A,B,Cはどのような順番でもよいですが,A→B→Cのことが多いです。

 もちろん肉付けして,いろんな治療法や診断方法,難しさなどを追加してもいいと思います。いろんな論文を読んで経験値を上げて,やり方を(いい意味で)真似してください。

 A,B,Cは過去の報告・データを引用し,Abstractionします。ここで重要なことは,いくつもの論文を読んで大量の情報の中からこれぞ! という情報をAbstractionするということです。

論文を書くのに必要な読書量は?

 論文を1本書くために,皆さんどれくらい先行論文を読むでしょうか。

読む量→理解度
1本→大まかな理解
10本→基本的な流れの理解
100本→歴史的な流れを含めた理解

 ぐらいが個人的な感覚です。論文を書くためには,歴史的な流れまで理解する必要があるでしょうから,100本くらいは必要でしょう。極めて新規性が高い場合は半分ぐらいかもしれません。とは言っても,そんなに読まないといけないのか……と思うとやる気をなくす人もいるかと思います。安心してください。詳細は関根郁夫先生3)やアドラー4)の書籍にお任せしますが,「点検読書」(inspectional reading)という方法があります。時間の制限の中で文章の構成と大意をつかんで,さらに入念に読む必要があるか判断するという読み方です。

 Introductionでは,その100本×約4000 words,合計40万wordsを約100~300 wordsにまとめるわけですから,かなりのAbstraction能力が必要です(Systematic reviewから入るのが理解にはよいでしょうが,Systematic reviewも4本目ぐらいから知識が飽和してきます3))。

 いい加減,Abstractionって何なんだ! と言われそうですね。

 Abstractionとは,重要な情報のみをまとめるということです。プレゼンテーションにおけるPertinent positive/negativeと同様に考えるとしっくりくるかもしれません。Summary=要約とどう違うの? というと,Abstract=a summary or epitome of a statement or documentですのでほぼ一緒のことです5)。ただ,昔は論文の最後に「Summary」としてあったものが,冒頭に移動する過程で「Abstract」と名称が変わってきました。今回はこのSummaryと異なるという特徴的な意味を持たせて,「Abstraction」としました。日本語では伝わりにくいですね(笑)。不要な情報は削りつつ,言いたいことにつながる情報は欠かさずに要約する,という感じです。

 情報の取捨選択の際には,冒頭に触れた,「珍しい」「新しい」という部分が読者によくわかるようにすることが重要なポイントです。これが明確でなければ,誰が読んでも何が言いたいのかわかりません(何といっても珍しかったり新しかったりするわけなので)。

 余談ですが,非常にキャッチーなプレゼンテーションや教え方ができる先生がいますよね。あれがまさに非常に良いAbstractionを行っている例です。誰もが共感できる範囲に情報を抑えつつ,新しさをうまく伝えるということです。キャッチコピーのライターさんなどはまさにAbstractionの神ですね。

まとめ

●Case reportではSectionごとに考えると気が楽
●Case report全体にも,Introductionにも基本的な流れがある
●Introductionでは「珍しい」「新しい」部分が伝わるようにAbstractionする!

つづく

[参考文献・URL]
1)CARE CHECKLIST of information to include when writing a case report. CARE Steering Committee.
2)Feblowitz JC, et al. Summarization of clinical information:a conceptual model. J Biomed Inform. 2011;44(4):688-99.[PMID:21440086]
3)関根郁夫.英語論文を読むことと書くこと.千葉医学雑誌.2014;90(6):251-8.
4)MJ Adler, et al. How to read a book:The classic guide to intelligent reading. Touchstone;1972.
5)Roland CG. The summay or abstract. JAMA. 1968;205(8):569-70.[PMID:5694998]

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