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第3186号 2016年8月8日


【企画広告 interview】

病棟や外来で,自分のデスクで,
電子書籍はこう使う

谷口 俊文氏(千葉大学医学部附属病院 感染症内科助教)に聞く


 『内科診療 ストロング・エビデンス』(医学書院)の著者であり,現在は大学病院において内科学や感染症学,EBMの普及に尽力する谷口俊文先生。その著書の中では,論文の批判的吟味を行ったトピックのまとめをデータベース化する手法を「EBM実践の方法」として紹介するなど, “デジタル通”の一面も持ちあわせています。そんな谷口先生に,電子書籍の活用方法を聞いてみました。


――『内科診療 ストロング・エビデンス』を読むと,谷口先生の知識の幅広さと深さに圧倒されます。研修医時代から,さまざまな領域の医学書を買いあさっていたそうですね。

谷口 当時は臨床研修の必修化前でしたが,私が初期研修を行った武蔵野赤十字病院は既にスーパーローテート研修を行っていました。診療科が変わるたびに,和書・洋書を問わず買いそろえていたので,私のデスクはすごいことになっていました。同僚からは「移動図書館」と呼ばれたこともあります(笑)。

 ただ,洋書に関してはちょうどMD Consultが出てきたころで,そのうち個人アクセス権を購入するようになりました。そのころからですね,電子書籍を使い始めたのは。

――周囲と比べると相当早いですよね。

谷口 当時は本の置き場所に困っていたのと,分厚い本は持ち運びができずに調べものにも苦労していたので,必要に迫られた感じです。

――現在は,電子書籍をどのように活用されていますか?

谷口 同じ電子書籍でも,成書とマニュアルで使い分けていますね。電子書籍で便利なのは,何冊もの分厚い成書の串刺し検索ができることです。聞き慣れない用語について勉強したいときはアプリの検索機能を使って,内科学ならHarrison,感染症ならMandellなどの成書の該当ページを読むことが多いです。医学生時代と違って,臨床医になると分厚い成書を通読する時間はなかなか取れないので,ポイントを絞って勉強するのにこのやり方は有効です。

 一方,病棟や外来診療において投薬や処置に関する調べ物をするときは,マニュアル系の電子書籍を使います。こうした際は,アプリから複数書籍の検索をかけるのではなく,マニュアル本の該当箇所に直接アクセスすることが多いです。本を通読して構成をあらかじめ覚えておき,よく使うページはしおり(ブックマーク)機能なども活用すると,さらにアクセスが速くなりますね。

――その場合,デバイスも使い分けされますか?

谷口 はい。最も使用頻度が高いのはスマートフォンです。病棟や外来で調べ物をするとき,あるいは医学生の実習の際に「一緒に調べてみようか」という感じで使うことがあります。

 ただ,一度に視野に入ってくる情報量に関してはスマートフォンよりもPCのほうが圧倒的に豊富で,この違いは大きいと思います。ですから,自分のデスクで落ち着いて勉強ができる場合はPCを好んで使いますね。

――その場の調べ物は「スマートフォンを使ってマニュアル本」,じっくり勉強するなら「PCを使って成書」ということですね。

谷口 そのパターンが多いです。特に英語の成書ですと,紙の書籍の引用文献は重要なものに限っていて,そのかわり電子書籍に全ての引用文献を掲載し,該当論文に直接アクセスできるものが増えています。PC環境なら,インタラクティヴな電子教科書として成書をフル活用できます。

――最近の成書は,電子版なくして成り立たないわけですね。では,紙の成書は今後不要になるでしょうか。

谷口 現段階では,紙の成書のほうが便利なときもあります。なぜなら,一度に視野に入ってくる情報量は紙のほうが圧倒的に多く,電子書籍は視認性に劣るからです。しかも,紙の書籍は「この本のこのページに,確かこういう情報が書いてある」という感覚で読むことができるのに対し,電子書籍だと以前にアクセスした情報への再現性が低くなってしまう。そのストレスも大きいです。ページをめくるときの使用感も,現状では紙の書籍に及びません。ざっと本から情報をスクリーニングしたいときは,紙の書籍に当たるほうが速いと感じます。

――電子書籍の機能として今後何を求めたいですか。

谷口 前述の問題を解決するためには,例えば,しおり部分をまとめて閲覧できる機能の視認性を高めるような工夫が必要でしょう。また,串刺し検索に関しても,場合によっては雑多なものが引っかかりすぎて,自分が欲しい情報になかなかアクセスできないという問題も起こります。さすがにUpToDate®は検索時のノイズリダクションが優れていますが,一般的な電子教科書に関して言えば,なかなか満足できるものがありません。これは今後の課題ではないかと考えています。

――今年6月に,医学専門出版社が協同で「医書.jp」というプラットフォームを立ち上げ,電子コンテンツの配信を始めました。このiPadで,谷口先生の著書『内科診療ストロング・エビデンス』の電子書籍版をご覧になってください。

谷口 しおりやマーカーの箇所を一覧できるのはいいですよね。手書きで書き込める機能もよく練られていると思います。あとはPDF形式なので,本の形状が崩れず読みやすいのも助かります。

 これまでは定番の医学書が電子化されないままだったので,出版社のこうした取り組みはうれしく思います。今後はコンテンツがさらに豊富になり,機能面でもアップグレードされることを期待しています。


たにぐち・としぶみ
2001年千葉大医学部卒。武蔵野赤十字病院初期研修医,在沖米海軍病院を経て,05年セントルークス・ルーズベルト病院内科レジデント,08年ワシントン大セントルイス校感染症科フェロー。13年千葉大大学院博士課程修了。15年より現職。米国内科専門医,米国感染症専門医。