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第3184号 2016年7月25日


Medical Library 書評・新刊案内


トライ! 看護にTBL
チーム基盤型学習の基礎のキソ

五十嵐 ゆかり 編著
飯田 真理子,新福 洋子 著

《評 者》瀬尾 宏美(高知大病院教授・総合診療部)

いますぐ試してみたくなる! 使える実践書

 医療系大学や専門学校の教員の多くは,その道のエキスパートであっても教育学のエキスパートはほとんどいないでしょう。自分の受けた教育を思い出しながら先輩として教壇に立ったものの,何だかうまくいかなくて挫折感を味わった経験をお持ちの方も少なくないと思います。さらに最近では,卒業時のコンピテンシー,すなわち「○○ができるようになる」という能力目標を学生が獲得することを期待されるようになり,医療教育のハードルはますます高くなっています。このため能動的学習が推奨され,PBL(Problem-Based Learning)を導入されている教育機関も少なくありません。確かにPBLは素晴らしい学習法ですが,手間をかけた割にグループや学生それぞれがどのような能力を獲得したのかが見えにくいのも事実です。

 このような中で注目されているチーム基盤型学習(TBL;Team-Based Learning)ですが,2008年に日本で初めての教育ワークショップが開催され,2009年に米国TBLC(Team-Based Learning Collaborative)編集テキストの日本語版が出版されました。その後,日本オリジナルのテキストが待ち望まれていましたが,このたび,五十嵐ゆかり先生たち聖路加国際大チームが素晴らしいテキストを出版されました。「学生がやる気を出したくなる授業がしてみたい」「朝から教室に熱気が溢れる授業がしてみたい」,そして「教員にとっても『やってよかった』と思える授業がしてみたい」。そんなあなたにぴったりの指南書が『トライ! 看護にTBL』なのです。そして本書は看護だけでなく,医学,歯学,薬学をはじめ,さまざまな医療系教員にとっても「すぐに使える実践書」と言えます。

 本書のサブタイトルには「基礎のキソ」と銘打たれていますが,コンパクトながら,TBLの概念,講義からの移行方法,実践のこつまで,これからTBLを導入してみようと考えている教員にとって「痒い所に手が届く」内容となっています。さらにTBLに関する研究成果についても紙面が割かれており,導入前の不安にも答えてくれます。何より,少し読み進めていただければ,うずうずして早く試してみたくなるはずです。TBLの価値は実際にやってみて実感できるものです。まさに「トライ!」につながる一冊といえるでしょう。

B5・頁160 定価:本体2,200円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02426-6


新人看護師の成長を支援するOJT

西田 朋子 著

《評 者》渋谷 美香(日本看護協会教育研究部・部長)

「いまの新人看護師」をリアルに理解し成長を支援するための新人指導書

 新人指導は難しい。指導者に向いていないと思い込む時期もある。でも指導は楽しいと思う。

 指導者役割は敬遠されがちである。しかし新人看護職員の卒後臨床研修が2010年4月から努力義務化となり,新人指導をぜひやってみたい,翌年も続けてチャレンジしたいと志願する人が増えたという現場の声を聞くまでになっている。

 新卒看護師の離職率においては2010年度以降顕著に減少し,2011年度以降は7.5%を維持している(日本看護協会「病院における看護職員需給状況調査」より)。これは,法改正に伴う努力義務化により,教育研修体制の整備に取り組む病院が増えたと同時に,新人指導者を対象とした学習支援がさらに充実したことも背景にあるだろう。特に書籍においては,指導方法,指導内容,指導者としての心構え,時期別の新人へのかかわりなど,多くの側面からみた新人指導書があり,片っ端から読まれた読者も多いであろう。

 しかし,知識や教育技法,指導者役割の認識だけでは埋められない壁がある。「自身が新人だった頃の気持ちを考える」は,新人指導における基本的な態度の筆頭に語られる。しかし新人看護職員と自身の年齢の差が10年,20年と広がるにつれ,世代や文化の変移により,物事をとらえる価値観や認識だけでなく,用いる言葉さえも異なり,新人看護師が何を考え,何を意図しているのか理解が追いつかないことはないだろうか。

 「新しい職場に行くと,最初やっぱアウェイな感じがするじゃないですか。(中略)先輩が気軽に声を掛けてくれたときに,『あ! ここはホームだったんだ!』って思い出すんだよね~(中略)でも,先輩から『それは違うじゃない!』って言われたら,どんどんアウェイ化していくの」(p.94)。

 本書のベースとなるのは,雑誌『看護管理』に連載された「新人看護師教育がうまくいくOJTのコツ――『理解』と『支援』から始める!」である。連載時からそこに掲載された新人看護師の姿や語りを読み,他書にみられないリアルな描写から,「アウェイって」と絶句しながらも,なぜか新人看護師への親近感も芽生え,素直に「いまの新人看護師」に寄り添いたくなる感情を覚えたことを思い出す。

 本書は,著者がさまざまな場面において第三者的立場で,一歩踏み込んだ新人看護師の語りからその言動の背景にある気持ちや考えに迫り,新人看護師のリアルな姿や語りを紹介し,その現象をひもとく。さらに,それを指導や支援につなげる基盤となる考えとOJTにおける実行プランを紹介するオリジナリティ溢れる新人指導書である。

 「育てるのではなくて,成長支援だと思うんですよ」と,決して対象者目線を崩さず,相手を尊重し丁寧に接することを実践し,臨床から博士論文まで新人看護師に着目した研究を重ねた筆者だからこそ,具体的かつ現実的な実行プランが提示されたのだと実感する。

 ほがらかな笑顔の筆者に似合うピンクと白を基調とした装丁さえも,優しく抱かれているように安心できる知的な良書である。

A5・頁184 定価:本体2,400円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02525-6

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