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第3182号 2016年7月11日


【interview】

内科と総合診療,どちらを選ぶ?


 内科専門医および総合診療専門医の魅力や研修プログラムの特徴は?研修医の不安の声に学会としてどう応えるか? 日本内科学会の横山氏,日本プライマリ・ケア連合学会の草場氏に聞いた。

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内科医の活躍の場はさらに拡大していく

横山 彰仁(高知大学医学部附属病院 病院長/日本内科学会 認定医制度審議会会長)


――内科専門医制度改革の経緯から教えてください。

横山 複数の疾患を有する患者が増える超高齢社会において,ジェネラルな素養を持つ内科医がますます求められること,また6~8年の研修を要する現行の総合内科専門医を1階とするのは厳しすぎること,以上2点から内科専門医制度を再構築する必要が生じました。卒後5年の研修としたのは,専門医機構から各基本領域3年以上の研修が課せられており,制度上,標準化されているためです。

――認定内科医に関しては,かねてから問題点も指摘されてきました。

横山 新医師臨床研修制度導入の際,初期研修の2年間を認定内科医の研修期間に組み入れたことで,資格取得に必要な研修期間は従来(36か月)の半分(初期研修6か月+内科12か月)になりました。研修の場も専門科に偏ったり,併存症を主とした提出サマリーが散見されるなど,ジェネラルな研修には不十分でした。

――ただ,内科専門医取得後にサブスペシャルティ研修2~3年は「長すぎる」という声も,研修医から聞かれます。

横山 しかし実際にデータを取ってみると,卒後7年目までにサブスペシャルティ専門医を取得しているのは男性で1~2割,女性で2~3割です。おそらく,専門医の取得時期が個々人の判断に委ねられていたからでしょう。新制度はプログラム制ですから,修了年限のうちに専門医を取得できるよう,指導医が専攻医をサポートする義務が生じます。むしろ,専門医の取得時期が早まるかもしれません。

 もちろん,キャリアパスの個別性に配慮は必要です。現在は,所定の修了要件を満たすことを条件に,内科とサブスペシャルティの並行研修を認めるなどの弾力的な運用を関連学会と共に検討しているところです。

――臓器別専門病棟のローテーションを繰り返すだけにならないでしょうか。

横山 従来の反省から「主病名で主担当医として経験を積む」カリキュラムの整備にこだわりました。内科学会で開発した専攻医登録評価システム(Web版研修手帳)を用いて症例登録・評価を行うことで,研修状況が可視化されます。初期研修の延長のような“お客さま扱い”の研修にならない仕組みをめざしています。

 また,従来の大病院単独研修を見直し,参加施設数が1194から2875(基幹施設523+連携施設1266+特別連携施設1086)へと2.4倍になりました。新たに参加する施設の大半は200床以下の中小病院となる見込みです。これらの病院はジェネラルな内科研修には最適な場となります。

――専門医取得のハードルが上がり,内科を敬遠する研修医も出てくるかもしれません。

横山 従来の総合内科専門医ほどの高いハードルを設定しているわけではありません。認定内科医と総合内科専門医の中間ぐらいと考えてください。認定医資格と比べれば確かに研修期間は延びますが,国民の視点でみれば,質の高い医療の提供のために一定の研修期間が必要なのは当然のことです。

 それにもともと認定内科医は,広告可能な専門医資格ではなく,内科学会内部の資格にすぎません。標榜できる内科専門医という意味では,総合内科専門医と比べると研修期間が短縮されたとも考えられるわけです。また,最短でのサブスペシャルティ専門医取得を視野に入れた専攻医への配慮も,進めていきたいと思います。

――新・内科専門医にどのような役割が求められるでしょうか。

横山 内科学会では①地域医療における内科領域の診療医(かかりつけ医),②内科系初期救急医療の専門医,③病院での総合内科の専門医,④総合内科的視点を持ったサブスペシャリスト,の4つを想定しています。内科は臨床医学の基盤であり,内科専門医の活躍の場は今後ますます広がっていくはずです。研修医の皆さんには,ぜひ内科医の道をめざしてもらいたいです。

内科学会Webサイトでは,専門医制度に関する直近の見解を随時掲載中。


総合診療のパイオニアとして未来をリードしてほしい

草場 鉄周(北海道家庭医療学センター理事長/日本プライマリ・ケア連合学会副理事長)


――総合診療の到達目標にはコンピテンシーが示され,他領域とは全く異なるコンセプトです。

草場 総合診療の専門性は,経験した疾患の数だけでは測れないのです。例えば肝硬変の患者さんに対してエビデンスに即した標準的な治療を行うことはもちろんですが,その人の生活背景を掘り下げ,他職種とも連携しながら解決策を図る。あるいは,アルコール依存症予防のためのアプローチを検討し,行政・医師会と連携して地域で活動する。こうした専門性を発揮する上で重視されるのが,「6つのコアコンピテンシー」の獲得です。総合診療の研修においては,常にこれらの能力の獲得を意識して研修を行い,さまざまな方法で評価していくことになります。

――評価についても他領域と比べてユニークです。

草場 評価の3本柱は,研修手帳,振り返りセッション,ポートフォリオとなります。研修手帳は他領域でも同じように使われているとは思うのですが,経験すべき疾患・病態や手技・処置等を含む研修目標を網羅したもので,3年間を通じて研修実績を記録します。

 振り返りセッションは,研修の進捗に合わせて指導医と定期的に行うもので,研修の自己評価に加えて,気付きや感情を言語化し,新たな目標を設定して研修手帳に記録します。それに加えてポートフォリオです。専攻医がコンピテンシーを獲得できたと感じられる症例を抽出して,それに対する省察を言語化する。単に「症例を経験した」というレベルではなく,コアコンピテンシーの達成の評価を行う。きちんと言葉で表現できる。そこまでチェックして修了となります。

――今後の中・長期的展望として,専門医養成数の目標はありますか。

草場 正直なところ,数に関しては明確な目標を定めていません。今回の専門医制度改革の本来の趣旨は専門医の質を担保することなのに,量の拡大を前提にすると質を保つことが難しくなってしまいます。もちろん,現状の家庭医療専門医制度では1学年170人程度ですから,それよりは増えてほしいという願望はあります。しかし,専攻医の数がやたら多くなれば,指導体制が追いつかない事態もあり得るわけです。まずは,総合診療専門医をめざす専攻医に「この領域に入って本当によかった」と満足してもらえる研修を提供することが,私たちの責務だと考えています。そうやって専門医を徐々に増やしていけば指導体制も成熟しますから,いまの段階で焦らないことが大事だろうと思っています。

――どのような人が総合診療医に向いていると言えるでしょうか。

草場 総合診療医は,診察室で診療するだけでなく,訪問診療を行うこともあれば,地域住民とかかわる機会も多くなります。そうやって多方面で活動してみたい人は,総合診療医に親和性が高いと思います。患者さんとのコミュニケーションを大事にしたい,患者さんの生活や家族に関心を持ってかかわりたいという人も向いているでしょう。逆に,特定の手技でナンバーワンになりたい,サイエンスとしての医学を追究したいという人は向かないかもしれません。

――入院医療を内包した総合診療のコンセプトは,国際的にもユニークです。

草場 諸外国の総合診療は,診療所ベースになっていますよね。ただ,日本の場合は中小病院の数が非常に多く,病棟・外来・在宅など多様なフィールドで医師が活躍している現実があります。これも日本独自の総合診療の在り方として肯定した上で,入院医療も違和感なく取り入れました。そこが面白いかもしれませんね。地域の中小病院では総合診療医のニーズが高いですし,病院勤務医として生涯働き続ける総合診療医もたくさん出てきてほしいと願っています。

――新設の専門医ということで,研修医としては不安もあるかもしれません。

草場 不安でしょうね。でもだからこそ,新制度の第1期の総合診療専門医はパイオニアとして注目されるし,医療界,さらには一般国民からの期待も高い。日本の未来をリードしていく立場になるわけで,実にやりがいがあるでしょう。

 リスクは確かにあるけれども,そのぶん得られるリターンも大きいはずです。勇気を出して,総合診療医をめざしてほしい。私たちのような,制度がない時代から総合診療の道を選んだ人間が,総力を挙げてサポートしていきます。