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第3165号 2016年3月7日


長期予後を見据えた集中治療へ

第43回日本集中治療医学会開催


 第43回日本集中治療医学会学術集会(会長=徳島大・西村匡司氏)が2月11-14日,“Be an Intensivist”をテーマに神戸国際展示場,他(兵庫県神戸市)にて開催された。

 本紙では,集中治療における長期予後の重要性とともに注目されるようになった「PICS,ICU-AW」の疾患概念および早期離床のエビデンス,「日本版敗血症診療ガイドライン」の改定に向けた最新情報について報告する。


「PICS,ICU-AW」の普及と,「ICUからはじめる早期離床」

西村匡司会長
 集中治療を必要とする重症患者は,ICU退室後も長期にわたり筋力低下や認知機能障害を合併し,仕事に戻れないなどの問題を抱えることが多い。重症疾患やその治療に起因する長期的な精神・認知・身体機能の障害について,近年はPICS(Post Intensive Care Syndrome)という疾患概念が提唱されている(Crit Care Med. 2012[PMID: 21946660])。また,ICU入室中に発症する筋力低下については,ICU-AW(ICU-acquired weakness)として認識されつつある。

 集中治療における筋力低下やせん妄,認知機能障害などの合併症の予防策として期待されるのが,早期離床である。教育講演「ICUからはじめる早期離床」では田中竜馬氏(LDS Hospital)が,早期離床の安全性や経済性,効果について報告した。

 安全性に関しては,人工呼吸器装着を4日間以上要する103例を対象とした前向きコホート研究において,合計1449回の離床で重大な有害事象は認められなかった(Crit Care Med. 2007[PMID: 17133183])。経済性に関しては,「離床チームの人件費はかかるが,入院日数が短くなるので相殺する」といった研究があるという(Crit Care Med. 2008[PMID: 18596631])。

 また効果に関しては,早期離床による人工呼吸器非使用日数の増加,せん妄の日数短縮,ICU退室後の機能的自立を示した研究(Lancet. 2009[PMID: 19446324])がある一方で,その効果に疑問を投げ掛ける研究もある(JAMA Intern Med. 2015[PMID: 25867659])。これに対して,「個人的な経験からは,早期離床は有効であると思う。ただ,内容やタイミングについてはまだわかっていないことが多いのも事実」と考察した。

 最後に氏は,「重症臓器(心・肺・腎など)とそれ以外(精神・神経・筋など)の双方に注意を払うことが大切。多職種連携によって,長期的視点に立った総合的な集中治療を実現する必要がある」と,今後の展望を示した。

「日本版敗血症診療ガイドライン」の大幅改定に向けて

 国際的な敗血症診療ガイドラインであるSSCG(Surviving Sepsis Campaign Guidelines)の普及により,敗血症診療におけるEBMの実践が進展している。日本においては,集中治療医学会によって2012年に発表された「日本版敗血症診療ガイドライン」がある。この改定に際しては,さらなる普及をめざして救急医学会と合同で作成することになり,両学会による「日本版重症敗血症診療ガイドライン2016作成特別委員会」を設置。現在,2016年中の公開をめざして活動を続けている。学術集会の会期中に,委員長の西田修氏(藤田保衛大)らによる委員会報告が実施され,同ガイドラインの概要や作成の流れ,推奨設定方法が解説された。

 今回の改定で取り上げるのは19項目。新たに「小児」など多数の領域が追加され,大改定となる。委員会の組織編成においては,19領域に属さない中立的立場の「アカデミックガイドライン推進班」を組織して作業過程の統一化・補助を行い,ガイドライン全体の質を担保しているのが特徴だ。また,質の担保と作業過程の透明化を図るため,相互査読,討議のオープン化などの制度を採用し,最終的に作業過程と討議過程の公開を行う予定であるという。西田氏は,「大規模ガイドライン作成のモデルをめざすとともに,人材育成とネットワーク構築を図り,新たなエビデンス構築の機運を高めたい」と意気込みを語った。

 委員会報告に続くシンポジウム「日本集中治療医学会・日本救急医学会合同日本版重症敗血症診療ガイドライン」(座長=西田氏,阪大・小倉裕司氏)では,ガイドラインで扱う19領域のうち,5領域のワーキンググループが経過を報告。PICS・ICU-AW班からは井上茂亮氏(東海大)が登壇した。「PICS,ICU-AW」に関しては世界に先駆けて敗血症のガイドラインに盛り込まれることになり,「ICU-AWの予防に電気筋刺激を行うか?」「PICS/ICU-AWの予防に早期リハビリテーションを行うか?」という2つのクリニカル・クエスチョンに関して,システマティックレビューを踏まえた草案を作成中であると述べた。