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第3154号 2015年12月14日


私のキャリアチャート

横軸に年齢,縦軸に充実度・幸福度を取った「キャリアチャート」とともに,さまざまな領域で活躍する看護師が仕事やライフイベントを振り返ります(不定期リレー連載)

【Chart1】

角田 直枝(茨城県立中央病院・茨城県地域がんセンター看護局長)


 キャリアと言うと仕事における資格や経験を指すことが一般的だが,私の場合は看護師としての経験以外にも,今の自分に活かされていることは多い。確かに私は,自治体立病院の看護局長としてはかなり変わった経歴を持つ。どんな経歴であれ,人生を振り返れば,過去の経験が今の自分に役立っていると考える人が多いだろう。こうした振り返りが,後輩たちの自己洞察や進路選択の一助となればと思い,連載の初回という大役を引き受けることとした。

 私は同世代に珍しく,中学校はキリスト教系の私立中学に入学した。そこでは毎日礼拝し,週に1時間の聖書の授業があった。現在,私は,がん看護専門看護師として緩和ケアや終末期ケアの実践や教育に携わるが,中学生のときに毎日のように聖書に触れ,生と死を考える機会があったことは,今の私にとても影響を与えていると思う。

 高校を卒業するときに,私は獣医師をめざした。理由があって1年半でその大学は退学したが,なんと1年目の牧場実習は,その後に進学した看護の基礎実習のときに共通点を見いだす経験だった。ただ,当時は,黙々と豚の寝床の掃除をし,牛をブラッシングしていた。併せて,大学生時代の飲食店や訪問販売でのバイトによって,初めて出会う人との関係構築のスキルを身に付けられたように思う。

 さて,牧場実習が後に看護と結び付くとはいえ,大学中退後にすぐに看護に進学したのではなく,OL生活を1年半経験した。営業事務の社員であったこのときに,電話対応の技術や事務作業を訓練されたのだと思う。そして,このOL時代に3週間入院し,それが私と看護を結ぶこととなった。

 めでたく短大に合格し,看護師としての私が始まった。牧場実習が基礎実習の何に通じたか。牛舎の掃除や皮膚のケアは,看護の環境整備や基本的ニーズの充足に通じていると面白く感じた。看護の講義は興味深いことばかりだった。しかし,ここで私の生活が落ち着いたのではない。この後2年生の2月に1人目の子供を出産し,3か月遅れの卒業式の翌週には2人目の子供を出産した。ということで,看護師の資格を取得したときには2人の子持ちであった。現在,変わった経歴の新卒看護師が増えたが,当時,私は相当の異端者だった。こんな私に「非常勤なら」と働くチャンスをくださった看護部長には感謝してもしきれない。

 新卒から3年間,非常勤で日勤だけの病棟勤務をした。この経験は私が非常勤の看護師と共に働くときに活かされている。「パートだって一生懸命」。この心意気は,今も非常勤看護師の育成の根底にある。その後,常勤となり,臨床実習指導者研修会に参加した。病院を越え,年齢を越えて共に学ぶことは楽しかった。このとき隣席で受講した方とは,今では連携病院の看護トップ同士として,部下の多施設協働育成に当たっている。

 その後,私は放送大学に編入し,大学院に進学した。この間子育てとの両立は結構厳しかった。大学院修了後は希望していた訪問看護に従事することができ,さらには病院に戻って退院支援の推進に取り組んだ。その次には認定看護師の育成にも携わり,全国各地を訪ねる仕事を経験した。これらは地域包括ケアの時代にあって,優れた看護は地域全体で共有するという発想につながっている。

 時間を止めて振り返ると,そのとき時点ではわからなかった「その経験の意味」が見えてくる。これは,困難な場面にいる人に対して,「後できっと役に立つはず」という励ましとなる。後輩たちが,困難さに向き合いつつ,その人のペースで成長してほしいから,私もこんな振り返りをこれからもまだまだ続けていこうと思う。

つづく

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