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第3093号 2014年9月22日


【視点】

在宅療養支援のこれから

宇都宮 宏子(在宅ケア移行支援研究所宇都宮宏子オフィス)


 2002年,介護保険制度が始まって2年が過ぎたとき,「病院から生活の場に患者さんが帰るためには,看護マネジメントが必要だ」という強い思い(中身はざっくりしてたけど)で,大好きな在宅の現場から大学病院に戻る決心をした。そして大学病院のナースたちと奮闘しながら構築してきた「退院支援・退院調整の3段階」((1)スクリーニングとアセスメント,(2)受容支援と自立支援,(3)サービス調整)をもとに取り組み,診療報酬にも反映させることができた。

 ただ,ここにきて気になることがある。退院支援の目的も連携の意味も教育されないまま,診療報酬の評価を追うかのような在宅療養支援になってしまっている病院が散見されるのだ。

 「国が在宅医療を推進するから」「診療報酬の評価が付いたから」退院支援をすべきなのだろうか? もともと暮らしていた場所に戻るのは,本来当たり前のことである。それにもかかわらず,入院によって生活が遮断され,生活の場に戻れなくなってしまう。こうした事実に気付いているのは,ほかでもない,病院で働く看護師自身のはずだ。

 最近の在宅ケア移行支援研修において,私が特に意識して伝えていることが2つある。

1)後追いの退院調整から,外来患者への在宅療養支援へ。
2)長期入院患者の収容先探しをやめて,『地域居住の継続』のために何が必要かを考えよう。

 患者がどのような状態で「暮らしの場」に戻っていくのかを,医療提供の前から医師・看護師を中心にした医療チームで共有できていないことが,「生活の場に帰せない状況」をつくってきた。後追いの退院調整から,治療開始と同時に進める退院支援に移行する必要がある。

 そして,次に見えてきたことが,「外来通院時からの在宅療養支援」の重要性だ。私は外来での「在宅療養支援」には2つの形があると考えている。1つは,計画入院(予定入院)患者への退院支援を,外来から始める活動だ。「入退院センターナース」といった形で,入院申し込み時点で,治療計画の説明,退院時の状態像の共有,在宅療養に関する情報収集,退院支援の必要性の判断を看護師が行う。入院までにできる準備を始め,入院早期から退院調整が動く。看護師による説明・面談の成果として,患者が治療に主体的に向き合うことにもつながる。これらは既に多くの医療機関が実践し始めている。

 もう1つは,私自身が前職で取り組んでいた「地域居住継続のための支援」「在宅療養継続(入院回避)のための相談・調整」だ。がん患者や難病患者の病態予測に基づいて,「今の暮らし」を継続するための在宅医療・ケアの体制を整える。これは地域包括ケアシステムの根幹でもある。

 私の講演や研修に来た看護師が,老いも若きも(失礼),「心が大きく揺さぶられた」「目からうろこが落ちた」「病院で亡くなったたくさんの患者の顔が思い出されて涙が止まらなかった」と声を掛けてくれる。

 病院から在宅(生活の場)への移行支援をどのように進めていくことが,患者さん,地域に暮らす方にとっての幸せにつながるのか。多くの看護師が考え,動き始めている。めざすのは退院ではなく,患者さんの望む暮らしにつなぐこと,患者さん自身が生活の再構築に前向きになり,それを支えること。それは,看護そのものである。


宇都宮宏子
京大医療技術短大(現・京大医学部保健学科)卒。急性期病院や訪問看護ステーションを経て,2002年より京大病院にて退院調整看護師として活動。12年に起業。全国各地で在宅ケア移行支援に携わる。著書に『退院支援実践ナビ』(医学書院,編著)など。