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第3028号 2013年5月27日


Medical Library 書評・新刊案内


がんサバイバー
医学・心理・社会的アプローチでがん治療を結いなおす

Kenneth D. Miller 原書編集
勝俣 範之 監訳
金 容壱,大山 万容 訳

《評 者》佐藤 禮子(兵庫医療大副学長/教授・療養支援看護学)

がん罹患に伴う問題が手軽に読みこなせる専門的一般書

 「がんは個人の世界観を根本的に変えてしまうため,多くの人が人生や人間関係,そして自分自身についての核となる原点を問いなおすようになる」。

 "がんは身の内""がん細胞はわが身の一部が変化したもの"等々,人はさまざまにがんの正体を表現するが,冒頭の一文は,正に言いえて妙と言いたい。本書で記されるがんの定義として「がんとは人生の長きにわたって経験される複合的なトラウマ的出来事であり,告知や,治療,副作用,再発への恐怖,死への恐怖といった数多くの不快な経験により定義されるものである」という記述も,また胸に響く。本書は,がんの専門家が自らの体験や身近ながんサバイバーとの日常生活から得た生きた知識や知恵をヒントに,それらを科学的に証明して解説したり,あるいは引用文献に基づいて解説したりしている。

 「がんと診断されたその瞬間に人はがんサバイバー(がん生存者,cancer survivor)となる」。すなわち,がんの診断を受け入れたときから,その人はサバイバーとして生き続ける存在となる。サバイバーには,がん症状によりもたらされる負担(burden)があり,それは疾患特有の生理的作用に関連した症状であることが多いと説く。そしてがんサバイバーは,自分のQOLを取り戻すための回復力(resilience)を働かせ,慢性疾患としてのがんに取り組み,問題に対処する。本書は,事実や研究によって明らかとなった人間の心理に鋭く突っ込んだ解説を行っている。そこには,5.がん経験に利点を発見する:心的外傷後の成長,6.がん後のセクシュアリティと性的愛情表現,7.がんを経た後の男性セクシュアリティと妊孕性,8.がんサバイバーにおける妊孕性と親になること,11.サバイバーシップにおける子育ての課題,等々,通常の専門書ではあまり扱わない,それでいて普通の生活に欠くことのできないがん罹患に伴う問題が,手軽に読みこなせるように書かれている。専門的一般書といえよう。手元に置いて,思いついたときには,いつでもさっと広げて読む。すると,常に何らかのヒントが得られる。

 本書は4部構成となっているが,項目すべて通し番号となっており,各章がそれぞれのテーマとして独立しているので,必要な時に必要な部分を直ちに利活用できる仕組みである。非常に滑らかで質の高い日本語による訳出となっており,医療者のみならず,学生,そしてがんを知りたい患者や家族の方々にも,手軽に読んでいただきたいものである。

A5・頁464 定価4,200円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01522-6

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