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第3020号 2013年3月25日


なかなか教えてもらえない
看護研究発表の「キホン」と「コツ」!

【第6回】
口演発表も「段取り八分,仕上げ二分」
予演会のススメ

新美 三由紀(佐久総合病院看護部)


3016号よりつづく

 この連載では,みなさんに「研究発表してみたいな」とか「もっと研究発表してもいいかな」と少しでも思ってもらえるように,研究発表のキホンとコツをギュッと凝縮してすぐに使えるノウハウを解説します。


 研究発表の成否は,発表直前までの準備で8割方決まります。発表前にやっておいたほうがよいことに,「発表原稿(メモ)の作成」「想定質問への回答案作成」「発表練習」「予演会」等があります。今回は,時間的な流れに沿った具体的な準備についてお話ししましょう。

発表1か月前まで

 演題の採否は,通常は学会の約3か月前には決まります。採用が決定してから発表1か月前までは,スライドと発表原稿の作成期間です。作りながら一人で発表練習を行い,スライドの量を調整したり原稿を修正します。

 面接や調査票を用いた調査研究,あるいはカルテデータを用いた観察研究では,研究計画に従ってデータ収集と解析が行われていれば,抄録作成の時点で結果も結論も手中にあるので,それほど焦る必要はないでしょう。じっくり時間をかけてスライドと発表原稿を作りましょう。

 一方,演題提出後にカルテからデータ収集を始めることが多い症例報告の場合,スライドや発表原稿の作成時点で情報が足りないことに気付き,焦って「カルテ起こし」(カルテを繰ってデータを収集すること)をすることもあるかもしれません。そのような場合でも,症例を選択した理由をしっかり思い出して,足りないデータを速やかに収集してください。

発表1週間前まで

 学会まで1か月を切ったらスライドを一度完成させ,共同研究者,指導者(アドバイザー),上司のコメントをもらい,早めに予演会を行いましょう。特に,指導者からは大きな誤りや指摘を受けるなどして,修正に1-2週間かかることもあります。できる限り早く見てもらうことをお勧めします。臨床現場の看護師は,患者さんの状態で忙しさが変わるため,「スケジュールどおり」より「予定より早め」の行動が良いと思います。

 あなたが共同研究者または上司の立場の場合は,発表者が修正の時間を十分とれるよう,なるべく早くレビュー結果を伝えてください。共同研究者も上司もその研究に対して同じ責任があることを忘れてはいけません。

 私は後輩や学生のスライドをレビューする場合,発表の1か月前から催促するようにしています。特に発表経験の少ない人では,スライド構成からの大幅な修正を行うことも少なくないからです。

 スライドと発表原稿が出来上がったら,予演会を行いましょう。院内で定期的に「看護研究発表会」を開催している施設も多いと思いますが,予演会はこれとは異なります。本番に近い環境で発表し,本番さながらの質疑応答を経験することが予演会の目的ですから,必ず同じ発表時間で,できる限り学会参加者と同じ集団に見てもらうことが重要です。医師も参加する学会で発表するのであれば,医師の参加も求めましょう。遠慮なく批判をしてくれる指導者・先輩・同僚を前にして行う予演会は,100回の自己練習より効果的です。

 予演会では,「よかった」と褒められても喜んではいけません。改善点は必ずあるはずです。それを率直に言ってくれる人こそ大切にしましょう。そして他の方のプレゼンにも自分から積極的に質問やコメントをしましょう。看護師長や看護研究委員会の委員は,質問が義務だと心得ましょう。

発表直前まで

 予演会を終え,指摘された部分の修正と想定質問への回答準備をしたら,後は発表練習の繰り返しだけです。

 ただし,発表当日の直前練習はかえって緊張を高めてしまうこともあるためお勧めしません。当日は早めに行ってスライド受付を済ませ,会場の下見をしてから,他の口演を見て雰囲気を知っておきましょう。

 私自身,研究の口演発表では必ず発表原稿(発表メモ)を作って練習をし,コメントをたくさんくれる人に見てもらいます。たった数分の発表では場当たり的には対応できませんし,伝えたいことが伝えられずにがっかりするのは自分だからです。研究発表も「段取り八分,仕上げ二分」ですね。

図 発表原稿(発表メモ)の例

「発表原稿作成」で陥りやすい点とワンポイントアドバイス

(1) ☑ “文章で書かれた”そのまま読める原稿を作った。
(2) ☑ 発表原稿を,Wordの標準テンプレートで作成した。
(3) ☑ 規定時間ちょうどで終わるよう作成した。
(4) ☑ スライドに書いてあるが,口頭では説明しない内容がある。「○○はスライドをご参照ください」と発言する予定である。
(5) ☑ 発表原稿から一度目を離したら,どこを読んでいたかわからなくなった。
(6) ☑ 発表原稿は1スライド1枚で作った。
(7) ☑ 「ご静聴ありがとうございました」と言う。またはスライドに入れた。

「予演会」で陥りやすい点とワンポイントアドバイス

(8) ☑ 規定時間ぎりぎりかオーバーした。時間は多少余裕があったが,早口だった。
(9) ☑ 原稿を棒読みしていた。または,発表中に一度も聴衆を見なかった。
(10) ☑ 十分に読めないスライドがあると指摘された。
(11) ☑ 予演会で質問があまり出なかった。
(12) ☑ すべての質問に,一律に「質問ありがとうございます」と応えていた。
(13) ☑ 終了後,発表を聞いた参加者が,その研究がどんな研究だったかを一言で表現できない状態だった。


チェックが付いたときの対処
〈発表原稿作成〉
(1)文章の発表原稿は,原稿の棒読みを招きます。棒読みは早口で単調になるので,聴衆には聞き取りにくいです。練習中はその原稿で構いませんが,予演会前までには箇条書きの発表原稿(発表メモ)()に書き換え,本番に臨みましょう。「聴衆を見る」等の注意書きも効果的です。
(2)薄暗い会場でも読めるように,文字サイズを11-14ポイントに拡大し,行間を1.5行以上あけて作りましょう。
(3)量が多いです。規定の9割以内の時間で終わるように減らします。発表原稿だけでなく,スライドも減らしましょう。
(4)少しだけでもよいので,必ず口頭で説明するよう発表原稿を変えるか,不要ならスライドからその部分を削除しましょう。「スライドをご参照ください」と言われても,初見の聴衆は短時間では読めません。
(5)発表原稿の体裁を修正しましょう。発表途中には必ずスライドや聴衆を見ますが,目を離しただけで次が分からなくなるような原稿はNGです。
 (1)よりシンプルな箇条書きに
 (2)文字を大きく
 (3)原稿から目を離すタイミングでは,「行間を開ける」「色・フォントを変える」「手書きでの追記」等で,その場所が瞬時に判別できる工夫をする
(6)発表中に焦って紙をめくれなくなることがあるので,紙の裏表を使うなどで,できる限り発表原稿は1枚にまとめましょう。
(7)研究発表では不要です。削除しましょう。
〈予演会〉
(8)構成は変更せず,1つか2つ削除できる項目を探して発表時間を短くしましょう。早口の場合も,ゆっくり話せるよう原稿の分量を減らしましょう。
(9)一文を短くしたり,語尾を変えたりして,発表原稿を箇条書きの発表メモに変えましょう。緊張してどうしても原稿を読まざるを得ないのであれば,発表中に3回以上,聴衆を見るタイミングを入れましょう。顔を見るようにすると,聴衆の受け止め方が変わります。
(10)内容は変更せず,「箇条書き」「体言止め」「助詞・助動詞」や文字サイズ等でスライドをスッキリさせる工夫をします。スライドの映写時間が短い場合は,そのスライドでの発言を増やすようにしましょう。
(11)参加者を促し,5つ以上は質問してもらいましょう。当日の想定質問になります。
(12)落ち着いて質問を聞き取れたのなら,必ずしも「質問ありがとうございます」という必要はありません。質問に対して端的に回答するほうがスマートです。
(13)目的と結論が明確でない可能性があります。もう一度,スライドと発表内容を見直しましょう。

つづく

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