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第2988号 2012年7月30日


第54回日本老年医学会開催


 第54回日本老年医学会が6月28-30日に,大庭建三会長(日医大)のもと,「超高齢社会における老年医学」をテーマに,東京国際フォーラム(東京都千代田区)にて開催された。

 終末期状態に至った患者を前に,何が最善の医療およびケアになるのかを悩む場面は多く,医師の間でも意見の一致は得られていない。シンポジウム「高齢者の終末期医療をめぐる諸問題――これからの終末期医療はどうあるべきか?」(司会=国立長寿医療研究センター・遠藤英俊氏,東北大・大類孝氏)では,終末期の高齢患者に対する最善の医療およびケアの在り方が議論された。


シンポジウムのもよう
 まず西村美智代氏(埼玉県認知症グループホーム・小規模多機能協議会および社会福祉法人サン)と小坂陽一氏(東北大)が,終末期における過少・過剰な医療とケアに関して考察した。

 西村氏は,介護施設・グループホームの経営者,管理者,スタッフを対象に行ったアンケート結果を紹介した。「過少/過剰な医療行為になる背景」として,高齢を理由に医療者や患者家族が治療を控えることで「過少」となるケースや,介護者の医学的知識不足により医療者の多剤処方を受け入れてしまい「過剰」となるケースが挙げられたという。氏は,個々の患者に合った終末期医療を実現するために,医療者,患者家族,介護スタッフ間の情報の共有化を促進する必要性を訴えた。

 また,病院勤務医の立場から発言した小坂氏は,自身の経験から「寝たきりかつ認知症の高齢患者に対する経管栄養は過剰な医療行為」との見解を示した。その理由として,本人の意思ではなく家族の要求によって施行されるケースが多い点や,実施による1年生存率が高くないことに加え,その間も感染症に対する抗菌薬治療が繰り返し行われ,最終的には肺炎などの重篤な感染症による死亡が多い点を挙げた。

医療者-患者間で合意形成を図ることが重要

 門岡康弘氏(熊本大大学院)は,医療者と一般市民の「無益な治療」の捉え方の相違に関する調査結果を紹介した。無益性が問題となる治療の実施には医師よりも一般市民のほうが肯定的であり,また医師が病態や副作用といった医学的事項やQOLを重視する一方で,一般市民は家族の意向や納得・満足といった心理的利益を重視する傾向が認められたと指摘。患者・家族の終末期の意思決定においては,情報や経験を持つ医療者の意見も重要な判断材料になることから,「一般市民への啓発を行い,社会で適切な終末期医療に対する理解を深め,医療者と一般市民の合意形成を図る努力が求められる」と語った。

 「終末期患者の意思決定に必要なことは,患者本人にとっての最善を探ること」と強調したのは会田薫子氏(東大)。エビデンスに基づく標準的な「最善」と患者の価値観や死生観が,医療者-患者間で共有化されることで,それぞれの患者にとって最善となる判断が可能になると主張した。また,日本老年医学会『高齢者ケアの意思決定プロセスに関するガイドライン』作成に携わった立場から,「ガイドラインに沿って医療者-患者間で合意形成が図られた処置であれば,後に法的問題になることはない」と語った。

 国立長寿医療研究センターの西田満則氏は,同センターで実施する「End-of Life Care team」の活動を報告した。同チームは,がん患者に加え,終末期の慢性心不全や慢性呼吸器疾患などの患者を対象に,苦痛緩和,人工呼吸器・胃ろう・輸液の差し控えや撤退の意思決定支援を行う。患者の「過去」の意思表示,「現在」の意向,延命治療実施後に予想される「未来」の患者・患者家族の生活という,3つの視点から個々の患者に対する最適な終末期医療を考慮する方法を示し,同チームの意思決定支援の実践例を紹介した。